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推しの誘惑【完全版】

コスチュームプレイ

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 くすくすと真琴は笑った。あまりにあり得ない話でつい笑ってしまう。

「もちろん、本物のアイドルになれなんて言わないわ。ようは、ゴローが創作のインスピレーションを得ればいいんでしょう? だから、演じればいいのよ! 真琴ちゃんがアイドル、ゴローがそのファンになりきればいいッ」

 ミヤビが自信満々に言った。

「そうか! その手があったな。つまりコスチュームプレイってことだっ」

 鷹城が急に椅子から立ち上がった。

「そうよ、そういうことなのよッ。真琴ちゃんが相手なら、あんたは興奮するはずよ」
「そうか……そうなのか……。じゃあ、こういうストーリーはどうだ……? 『大人気アイドル・マコがストーカーに乱暴されそうなところを、ドルオタの俺が助ける。そのお礼といって、マコは俺をホテルに誘って、エッチなご奉仕をする。ステージでは清楚なマコだけど、ベッドでは淫乱で……!?』 うん、いけるいける。やべえ、ちょっと勃ってきた」

 鷹城は好奇心で目をきらきらさせながら、部屋の中をぐるぐる周り、何やらぶつぶつ言っている。

(えっ……嘘でしょ? 本気!?)

「た、鷹城先生っ」

 真琴は大慌てで恋人に声をかけるが、まるで聞いていない。もう創作の世界に入っているのだ。彼はそういう目をしている。

「大筋はこれでよし。シチュエーションは決まったが、でも衣装はどうする? ネットで注文してもいいけど……ちょっと安っぽいよな。大人気アイドル・マコが台無しだぞ」

 と鷹城が独りごとを言うと、楽しそうなミヤビがすぐ反応した。すっと手を上げる。

「はーい! アタシに任せてえ。ツテを頼って、素敵な衣装を用意してあげるわァ。あとヘアメイクとお化粧もアタシがしてあげる。ふふん、また真琴ちゃんを大変身させてあげられるなんて、魔法使いやってて良かった~」
「ミヤビ! 素晴らしいアイディアだ。頼んだぞ。あとその衣装、買い取り出来るか交渉しておいてくれ」

 鷹城がミヤビの手を両手で握る。ますます瞳が輝いている。

「任せておいてぇん。あんたらの色々なお汁がつきまくったお洋服なんて、返せるわけないじゃない。ちゃんと最初からお買い上げ予定よっ」
「おまえは本当に気が利くなっ。ありがとう! で、いつ決行する」
「うふふん。明日はどうかしら」
「明日! 締め切り直前だが、いける。俺はやるぞ」
「その意気よ、ゴロー。で、肝心のグループ名はどうするの? 大事よォ~」
「ああ。〈恋煩{こいわずら}い〉なんてどうだろう。ピンとひらめいたんだ」
「全部漢字? 硬い、硬すぎるわよッ。アイドルに限らず、令和のアーティストは、数字とか、ローマ字を取り入れてるわよ。ネット社会だからね、海外に通用するように配慮しているのよん」
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