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とある溺愛彼氏の一日(鷹城視点)
出来るだけ嫉妬しないように
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出来るだけ嫉妬しないようにする、と。
そもそも恋人同士ではないのだから、ヤキモチを焼く権利はない。すべては自分の嫉妬深さゆえだった。
それに同じ過ちを繰り返し、今度こそ真琴に嫌われるのが怖かったのである。
だから彼があごヒゲの男と一緒にいても咎めなかったし、バーで酒を飲み過ぎていてもたしなめるだけにした。
しかしそれが思わぬ自体を引き起こす。酔っ払った真琴が襲ってきたのだ。
最初鷹城は抵抗した。いくら恋している相手に迫られたからと言って、平常時ではないのに、据え膳を食うのはまずいと思った。
それに真琴は〈好きな人としかしない〉と言っている。本人の気持ちを確かめぬまま、セックスに持ち込むのは絶対によくない、と思った。
しかし、結局は欲望に負けてしまう。真琴は覚えていないかもしれない、弄ばれているだけだ、と分かっていながら抱いた。しかも、かなり激しく情熱的に。
もしかしたら自分も彼の痴態にあてられておかしくなっていたのかもしれない。
でも狂おしい想いを抱えながら、真琴と初めての口づけを交わして抱き合ったあの夜は最高だった。泣き出すまで感じさせ、好きだと強引に何度も言わせ、一夜限りの所有の跡をつけまくった。夜が白むまで、真琴をむさぼった。
その報いが来たのだろう。翌朝目が覚めたら真琴はいなかった。
最初は恥ずかしがって散歩でもしているのかもしれないと考えていた。今思えば、そんなのんきな自分を呪いたい。
しかしいくら待っても帰ってこず、ようやく彼の荷物が消えているのに気がついて、愕然(がくぜん)とした。すぐに連絡を取ったが電話には出てもらえなかった。
逸る鼓動を押さえ、落ち着かないまま新幹線に乗り、どうかマンションに戻っていてくれ、と思ったが、しかし願いは叶わなかった。
真琴はいなかったのである。
鷹城は年甲斐も無く取り乱し、彼の名を呼びながら、狂ったように部屋中を探し回った。
そして不在をようやく認めた頃、激しい後悔にかられる。
約束を破り、恋人でもないのにまたセックスをした。しかも我を忘れてあんなに激しく交わったのである。
今度こそ嫌われた、軽蔑された、と思った。
真琴はきっと、自分のことを自制心のかけらもない、口先ばかりの男だと思っただろう。いくら好きだと言っていても、以前と何も変わっていない、最低の男だと。
だから帰らなかったのだ。鷹城を見限ったのだろう。
そう考えながら、鷹城は胸を掻きむしりたい程の悲しみと喪失感に襲われた。
真琴のいない部屋はこんなに広かっただろうか。静かだったろうか。寒かっただろうか。
あのちんまりとした可愛らしい後ろ姿が、今どこにもない。
「おはようございます」と微笑んだ顔も、鷹城の冗談にむくれる照れた顔も、ソファでうたたねする時の幸せそうな顔も、どこにもない。
その時思った。自分はこんなに真琴のことが好きだったのか、と。どれほど彼に惚れ込んでいるのかをまざまざと思い知らされたのである。
それから一週間、ひたすら真琴から連絡が来るのを待った。
強くもないのに酒浸りになり、仕事には身が入らず、片時もスマホを手放せない。
頭が真琴でいっぱいで、リアルな夢まで見る。その夢の中の彼に「先生なんて大嫌い」と顔をしかめて言われて、汗びっしょりの状態でハッと目が覚める。
そもそも恋人同士ではないのだから、ヤキモチを焼く権利はない。すべては自分の嫉妬深さゆえだった。
それに同じ過ちを繰り返し、今度こそ真琴に嫌われるのが怖かったのである。
だから彼があごヒゲの男と一緒にいても咎めなかったし、バーで酒を飲み過ぎていてもたしなめるだけにした。
しかしそれが思わぬ自体を引き起こす。酔っ払った真琴が襲ってきたのだ。
最初鷹城は抵抗した。いくら恋している相手に迫られたからと言って、平常時ではないのに、据え膳を食うのはまずいと思った。
それに真琴は〈好きな人としかしない〉と言っている。本人の気持ちを確かめぬまま、セックスに持ち込むのは絶対によくない、と思った。
しかし、結局は欲望に負けてしまう。真琴は覚えていないかもしれない、弄ばれているだけだ、と分かっていながら抱いた。しかも、かなり激しく情熱的に。
もしかしたら自分も彼の痴態にあてられておかしくなっていたのかもしれない。
でも狂おしい想いを抱えながら、真琴と初めての口づけを交わして抱き合ったあの夜は最高だった。泣き出すまで感じさせ、好きだと強引に何度も言わせ、一夜限りの所有の跡をつけまくった。夜が白むまで、真琴をむさぼった。
その報いが来たのだろう。翌朝目が覚めたら真琴はいなかった。
最初は恥ずかしがって散歩でもしているのかもしれないと考えていた。今思えば、そんなのんきな自分を呪いたい。
しかしいくら待っても帰ってこず、ようやく彼の荷物が消えているのに気がついて、愕然(がくぜん)とした。すぐに連絡を取ったが電話には出てもらえなかった。
逸る鼓動を押さえ、落ち着かないまま新幹線に乗り、どうかマンションに戻っていてくれ、と思ったが、しかし願いは叶わなかった。
真琴はいなかったのである。
鷹城は年甲斐も無く取り乱し、彼の名を呼びながら、狂ったように部屋中を探し回った。
そして不在をようやく認めた頃、激しい後悔にかられる。
約束を破り、恋人でもないのにまたセックスをした。しかも我を忘れてあんなに激しく交わったのである。
今度こそ嫌われた、軽蔑された、と思った。
真琴はきっと、自分のことを自制心のかけらもない、口先ばかりの男だと思っただろう。いくら好きだと言っていても、以前と何も変わっていない、最低の男だと。
だから帰らなかったのだ。鷹城を見限ったのだろう。
そう考えながら、鷹城は胸を掻きむしりたい程の悲しみと喪失感に襲われた。
真琴のいない部屋はこんなに広かっただろうか。静かだったろうか。寒かっただろうか。
あのちんまりとした可愛らしい後ろ姿が、今どこにもない。
「おはようございます」と微笑んだ顔も、鷹城の冗談にむくれる照れた顔も、ソファでうたたねする時の幸せそうな顔も、どこにもない。
その時思った。自分はこんなに真琴のことが好きだったのか、と。どれほど彼に惚れ込んでいるのかをまざまざと思い知らされたのである。
それから一週間、ひたすら真琴から連絡が来るのを待った。
強くもないのに酒浸りになり、仕事には身が入らず、片時もスマホを手放せない。
頭が真琴でいっぱいで、リアルな夢まで見る。その夢の中の彼に「先生なんて大嫌い」と顔をしかめて言われて、汗びっしょりの状態でハッと目が覚める。
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