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♡story♡

8章 誤解を解くんだ!

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目の前に広がる光景に、思わず瞬きするのも忘れていた。
どうしてこんなことになったのか、不思議でならなかった龍二と武元。
龍二「お前ら…やっぱり……」
領真「いや、違う……」
武元「この2人の間には何かあるでござる!みんなに報告しに行くでござる!」
領真「何もない……!あと、報告するなーー!」
体育館に向かう武元を追いかけに行ってしまった領真。その場に取り残された広樹と龍二。
龍二「お前、亜伊がいるのに……最低だな」
広樹「……俺はもう亜伊ちゃんと別れる。あんな子と関わってたくないし」
龍二「何で?」
広樹「俺の好きな子を傷つけたから。龍二もそろそろ気付けよ。亜伊ちゃんは他の人と違う、ヤバイんだって」
龍二も気付いているだろう。亜伊が他の人とは違うことを。そしてこの前の転校生に何をしたのかも。
でも受け入れたくないのだ。
広樹「それに…俺が亜伊ちゃんと別れれば、龍二が亜伊ちゃんと付き合えるし。俺が別れればいいこと増えるよ」
龍二「駄目だ。お前が亜伊と別れれば、亜伊は悲しむ」
広樹「それならお前が亜伊ちゃんと付き合って悲しませないようにしたらいいじゃん。俺はもう亜伊ちゃんと話すことも無理」

そう言って広樹は脱衣場から出た。


一方、領真と武元……(廊下)

領真「待てって!おい、武元!」
武元「なーにーでござる!」
突然振り向いた武元の行動に驚き、領真は武元とぶつかった。
領真「急に止まるなって……」
武元「そんなこと言って!僕とぶつかりたかったんでござろう!」
武元の言葉を聞いて領真は目を細めた。
武元「そ、れ、よ、り!みんなに言ってほしくないでござるか?」
領真「うん。絶対うるさいことになるもん」
それを聞くと、武元は領真を壁に押し付けた。
武元「じゃあ、今ここで僕にキスして?」
領真「……?」
武元「分からなかったみたいだから、もう1回言うでござる。ここで今、キスするでござる」
その言葉を聞くとやっと理解したらしく、武元から視線をそらした。
領真「……さすがにそれは…」
武元「できないでござるか?ならこの場で電話しちゃうでござる!」
領真「できないだろ」
武元「それが~」
ポケットに手を突っ込む武元。
そして出てきた手に握られていたのは携帯だった。
武元「できるのでござーる!」
領真「えっ、学校に持ってきちゃダメだろ!」
武元「そんなキマリどうでもいいでござる!」
領真「……分かった。じゃあするけど…絶対にキスしたことはアイツに内緒」
武元「アイツって広樹?」
なにも言わずに頷く領真。
武元「まあ、君とキスできるなら…何でもいいでござる!」
武元は領真の顔に自分の顔を近付ける。
その時、運悪く広樹が廊下に現れた。
広樹「あっ!領真……」
領真「え、広樹!?」
突然のことに、領真は驚いた。
まさかこのタイミングで広樹が来てしまうとは……。
武元「全く!変なタイミングで来るなでござる!」
広樹「え?俺のこと?」
武元「広樹以外に誰がいるでござる!」
領真「っていうか、早くみんなの所に戻ろう?」
武元とキスはしたくないので、自然に話を逸らす。
広樹「そうだな」
武元「そうござるね」
武元はもうさっきのことを忘れたのか、領真の思い通り、これ以上キスを追求してこなくなった。



***

龍二「………」
いつもはうるさく、こういう場では盛り上げ役に向いている龍二が体育館に戻って来てから大人しかった。
領真(きっと僕のかっこよさに気づいて、口が開かなくなったんだろう。当然さ)
広樹(俺ははっきり言ったはず……。だから今度あの話題を持ちかけて来たら……)
2人が龍二を見て、思ったことは全然違うことだった。
龍二はどことなくしょんぼりしており、さっきのこと(脱衣所でのこと)を言ったりする様子ではないので、警戒するなら武元だろう。

だが、幸運なことに……これ以上領真達に災難が降りかかることはなかった。
そして、無事(?)にクリスマス会は幕を閉じた。
……無事ではないかな。
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