ソウキ王朝偽典・菜緒虎伝

那田野狐

文字の大きさ
71 / 81

68話 復興に一歩進み。戦争は半歩近付く

しおりを挟む

大陸歴3186年刈月かりつき(9月)。

街に流入した土砂の撤去は、コンダラゴーレムの活躍により迅速かつスムーズに完了した。
副次的にすべての道路が石板によって舗装され、排水溝も完備される。
底から数日かけて倒壊した家は取り壊され、新たに石積みの2階建ての建物が建てられる。

更に街を囲むように浅い空堀と簡単な土塁が巡らされ、次の川の決壊に備える。
すぐに畑などに冠水した水が流れ込み、普通に堀になったのだが、偶然ではない。
ここは当面の敵である孫蚊そんぶんが籠る建業に近い。防衛壁は保険だ。

また、清皇しんこうでの作業は、ソウキ国に白金貨で50枚(青銅貨で5億)を10年かけて払うこと。
街が1割、沛郡はいぐん州が4割、魏府国が5割を負担することで話がついている。

洪水による被害の復興に関しては、菜緒虎が最初にこの街に作った建物の土地に支払ったお金の返却。
それと、ミカワヤ商会の魏府国商業ギルドへの入会の後ろ盾と支部の設立認可で話がついた。
簡単に言うと、ソウキ国の魏府国での情報収集の拠点確保。その黙認を取り付けたということだ。

清皇の街は、川の氾濫の被害を被ったが、早い時期に水が引いたお蔭でか冠水した規模に対して作物の受けた被害は、野菜や陸稲を中心に約三割程度で済んだ。
また、主食である大麦が雨の前に収穫が終わっていたのも不幸中の幸いだった。

「攻撃せよ」
菜緒虎が命令を出すのと同時に、生きた鉄像リビングスタチューやスケルトンたちが鍬を振り下ろす。
見る間に畑の土が掘り返されている。

この動作、基本動作として組み込まれている戦闘行動の応用である。
つまり生きた鉄像リビングスタチューやスケルトンたちは、地面を耕しているのではなく、鍬を武器に地面を攻撃しているのだ。

「凄い」
視察として同行していた漫寵まんちょうが感嘆の声をあげる。
不平不満も言わず、重労働を均一の速度でこなしているのだから無理もない話ではあるが。

「菜緒虎殿。この生きた鉄像リビングスタチューを譲っては貰えないだろうか」
漫寵のキラキラした目で語られる言葉を聞いて、張僚ちょうりょうは苦笑いをする。
為政者にとって魅力的な労働力なのだろう。
と思うと同時に、張僚は背中に寒いものが走るのを感じる。

張僚が事前に入手していたソウキ国の情報は、スケルトンを中心としたアンデットの国である。
マッサチン国はそれを知らずに攻めて手痛い敗北を喫した。

しかし、アンデットは火や信仰系の魔法を使う僧侶。聖なる武器に弱いため戦力さえ整えれば取るに足りないと魏府王国上層部は考えている。
なので戦力が整うまでは誼を結ぶべしという結論になっていた。

だが張僚は気が付いた。ソウキ国の戦力がアンデットだけに頼ってはないということに。
土木に優れたゴーレム。種族を問わずソウキ国に救われ、庇護されている人間。
魏府王国が対ソウキ国の対策に時間を費やせば、ソウキ国も対魏府国の対策に時間が費やせるのだ。

「漫寵さま。た、大変です。僧操そうそう様の軍の先触れがたった今到着されました」
衛兵らしき男が転がるようにして菜緒虎たちの前に走ってくる。

「僧操軍、この度の大雨による洪水で後方に控えていた輜重隊に損害が発生。僧操さまはここ清皇まで司令部を下げるべく移動中とのことです」
衛兵の言葉に菜緒虎、漫寵、張僚の三人の顔が見事に異なるものになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

はらぺこ令嬢は侯爵様を満たしたい

有栖
ファンタジー
エルヴィラはいつもお腹を空かせている子供だった。あまりに大食いするので心配した両親が医者に連れていくと、それは彼女が持つ魔力量のせいだとわかる。彼女は多すぎる魔力を維持するため、いつも疲れるほど食べ続けていなければならなかった。しかしひとつだけ、有り余る魔力を放出する方法があった。料理だ。彼女が作る料理には、魔力がたっぷりこめられているのである。そんな彼女の元へある日、知らせが訪れる。 ※食事の描写は普通の日本のお料理になっています

処理中です...