ソウキ王朝偽典・菜緒虎伝

那田野狐

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34話 港湾に築かれたソウキ軍の砦

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土塁の端にある櫓に連れてこられた菜緒虎は、そこに固定されている巨大な十字弓クロスボウを見てその横に設置されている短槍のような矢を見て乾いた笑い声を漏らす。

「これはバリスタ。据え置き式の大型弩砲だ。利点はスケルトンでも強力な弓射攻撃が可能なことだな」
悪韋は鼻の穴をふんすと広げて巨大な十字弓クロスボウを叩く。

「おい。的をだせ」
悪韋が命令すると、三体のスケルトンが吊るされた大猪ビック・ボアを持って現れ、櫓から百メートル離れたところに設置する。

スケルトンがバリスタの弦に手鈎を引っ掛けると、ハンドルをギリギリと回して弦を引く。
短槍のような矢をセットして照準を合わせると引き金を引く。
ビョンという風切り音が響く。
スケルトンは、素早くバリスタの弦に手鈎を引っ掛けると再びハンドルをギリギリと回して弦を引く。
短槍のような矢をセットし照準を合わせると再び引き金を引く。

「凄いな」
短時間で大猪ビック・ボアを貫いた二本のバリスタの矢を見ながら、菜緒虎は感嘆の息を吐く。
これに、スケルトンアーチャーや死の狙撃手デススナイパーの弓射攻撃が加われば、遠距離からでもかなりの数が減らせるだろう。

「あれは投石機カタパルト。基本は攻城兵器だが、投射される石は海上の船にも効果はある」
櫓の少し後ろにある歪なシーソーを指さす。

「放て」
悪韋が合図をすると、スケルトンが引き金を引く。
投石機カタパルトの奥に設置された石が轟音を上げて射出され、程なく湾の中ほどで激しい水柱を上げる。

『菜緒虎さま。敵ですか?』
ステータス画面からオクトパスの連絡が入る。

『すまない。いまのは味方の試射だ』
『了』
菜緒虎の説明に、オクトパスは意外にあっさりと引き下がる。

「悪韋殿。湾で部下のオクトパスが探索の真っ最中だ」
「そうか了解。では次に宿泊施設に案内しよう」
そういって、悪韋が菜緒虎を案内した宿泊施設は、岬にある山の麓にあった洞窟を拡張した、いや正確にいえば山を外壁にした城だった。

全室全廊下が、身長3メートルの悪韋が余裕で歩ける高さ…悪韋が造ったのだから当然なのだが。

まず、武器庫や予備のスケルトンが詰めている広間に会議のための広間がある第一層。
水洗トイレと簡易浴槽のある宿泊部屋が十室ある第二層と第三層。
貯水タンクと悪韋でもゆったり入れる大浴場のある最上層。
内装がされてないためかなり殺風景だが、かなりやちゃった感は強い。

「いくらなんでも早過ぎませんか?」
「この砦は俺のスキル、岩石生成を使いまくった結果でな。そしてこれが成果だ」
悪韋は空間から金色に輝く子供の頭蓋骨を取り出す。

「悪趣味ですね?」
「持てば解る」
そう言って差し出された頭蓋骨を触った菜緒虎は片眉を上げる。

「まさか金ですか」
その言葉に悪韋は口の端を上げる。
悪韋曰く砦造りのために岩石生成を使いまくっていたところ、上位能力である鉱物抽出というスキルを覚えたのだという。

この鉱物抽出というスキルは、色々なものに含まれる微量の金属を抽出し金属塊インゴットを造る能力だという。
黄金の頭蓋骨は、港を掘り下げ防波堤を造る際にさらった海底の砂から抽出したものらしい。
おそらく近くの河の上流に、有望な金鉱脈があるだろうと悪韋は予想している。

ちなみにバリスタや投石機カタパルトにふんだんに使われている金属部品や、バリスタに装填する巨大な鏃も鉱物生成で造られたものだ。

「魏府王国の襲来を撃退すれば、ここは菜緒虎殿の居城になるはずだからな。気合入れろよ」
さらりと悪韋は爆弾を落とした。
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