ダンジョンがある日常

那田野狐

文字の大きさ
7 / 15

第7話 友、魔法少女になる

しおりを挟む
「ただいま・・・」

 玄関に置いてある両親の写真が入る写真立てに向かって帰宅を告げる。あ、両親とも元気だよ?父親は開拓者ギルド専属の鍛治師で母親も開拓者ギルド専属の錬金術師。今はオーガの角を原材料とした新しい武器の開発のため隣県にある岡山ダンジョンの開拓者ギルドに出向していて週末には帰ってくる。

「さて」

 着替え台所で夕食と明日のお弁当の準備。お弁当は出来たそのままをスキルのスペースに放り込んで夕食。スペースは時間停止の力があるので、学校のお昼に出来たてのご飯が食べられる。お風呂に入って宿題と明日の予習をしてスライムと戯れて、お休みなさい・・・

「よう。九竜」

「およ?赤虎くん。どしたの?」

 学校の昼休み、スポーツ刈りで細目でへの字眉の同級生の男の子赤虎隆司せきこりゅうじくんが声をかけてきた。彼は自分と同じ時期に戦士に覚醒した所謂同期生。早々に学校の探索部に入ってレベルを上げて剣攻撃に補正が入る剣士にランクアップしている。

「ポーションの作成をお願いしたい」

 そう言って机の上にアイテムバックを置く。

「回復ポーション40。毒消しポーション20。麻痺解除ポーション10。材料は余分に入っているから余ったら手間賃にして」

 隆司くんはニカっと笑う。まぁ、原材料と引き換えにポーションを造るというのは自分が開拓者になったときの約束なので引き受ける。
 ジョブレベルが低いうちはポーション造りも失敗が多かったから、彼の支援はありがたかった。

「で、どうよ?」

「あぁ。昨日、中級に上がったよ」

「おぉ。美里がついに!どういう心変わり?」

 隣りに座っていた茶髪ポニーテールのギャル風少女の冬山心ふゆやまこころちゃんが話に乗って来る。

「気配察知を覚えたら、隠密と急所攻撃のセットで野犬を奇襲で簡単に仕留めることが出来るようになったの」

「ああ、野犬なら背後からの急所攻撃でー確か!」

 隆司くんがポンと手を叩く。

「いいなぁ」

「鍛錬してる?ジョブが生えるかもよ?」

「え?あれワンチャンじゃないの?」

 自分の指摘に心が目を丸くする。実はダンジョンの職業部屋は、ジョブが得られない人がいるのではなく、なれるジョブにステータスが足りていないだけでダンジョンの第一階層である程度鍛えてチャレンジすれば誰でも開拓者になれるのだ。

「え?なにそれ」

 心ちゃんの顔が苦いものになる。

「最近は第一階層突破するのに開拓者に引率を依頼するから全く成長しないのが原因らしいよ?経験値を得ずにジョブ獲得出来るステータスに到達している人って珍しいんだって」

「なにそれ!」

 だんだんと足踏みをして悔しがる心ちゃん。まぁ、スライム一匹倒してのレベルアップでジョブに必要なステータスに達する人もいれば数百匹倒しても必要なステータスに達しない人もいる。しかもジョブを得る前にダンジョンを出ると経験値や職なしスキル。そしてステータスが上昇した効果はリセットされるらしい。

「美里!お願い、お願いします。放課後ジョブ取得まで付き合って!」

 土下座でもするかのような勢いで頭を下げる彼女だった。


「せい!」

 床を這いずるスライムを見つけては塩を撒く。縮むスライムの核を心ちゃんがオーク皮のブーツで蹴り飛ばし踏み潰す。
 ボフンとドロップする魔石。順調順調。

「職なしスキルは全部取得した?そろそろボス部屋に行く?」

「うん。ジョブは全部取得したし、そうね」

 心ちゃんの表情が明るい。ちなみに、今回の配信は配信限定のクローズド。ダンジョン庁のAIしかこの配信を見ていない。第一階層をひたすら低レベルモンスターを狩る映像とか需要ないからね。
 早速ボス部屋に入り、ボスのラージスライムは塩を撒いて無事討伐。

「さて・・・」

 心ちゃんは大きく息を吐いて職業部屋に入る。

「おおぉ美里!職を授かったよ!」

 乙女らしからぬ雄叫びが職業部屋から聞こえてくる。

「何になった?」

「魔法少女!」

 ・・・魔法使いじゃなくて魔法少女ね。ちなみに魔法少女は、職なし状態のときのみに就けるレアな職のひとつだけど、徒手空拳のバリバリの前衛職だったりする。スキルでそれらしい装備に変身出来るので魔法少女って呼ばれている。
 また魔法少女は変身スキルのお陰で装備を揃えなくても活躍出来るけど、マジックバックが装備出来ないという不遇職でもある。サブに生産職を取ってスペースのスキルを取らないと荷物は碌に持ち運べないのだ。そして、魔法少女はメインに他の職業を付けれないというよりオマケ付きだったりする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...