ダンジョンがある日常

那田野狐

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第7話 友、魔法少女になる

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「ただいま・・・」

 玄関に置いてある両親の写真が入る写真立てに向かって帰宅を告げる。あ、両親とも元気だよ?父親は開拓者ギルド専属の鍛治師で母親も開拓者ギルド専属の錬金術師。今はオーガの角を原材料とした新しい武器の開発のため隣県にある岡山ダンジョンの開拓者ギルドに出向していて週末には帰ってくる。

「さて」

 着替え台所で夕食と明日のお弁当の準備。お弁当は出来たそのままをスキルのスペースに放り込んで夕食。スペースは時間停止の力があるので、学校のお昼に出来たてのご飯が食べられる。お風呂に入って宿題と明日の予習をしてスライムと戯れて、お休みなさい・・・

「よう。九竜」

「およ?赤虎くん。どしたの?」

 学校の昼休み、スポーツ刈りで細目でへの字眉の同級生の男の子赤虎隆司せきこりゅうじくんが声をかけてきた。彼は自分と同じ時期に戦士に覚醒した所謂同期生。早々に学校の探索部に入ってレベルを上げて剣攻撃に補正が入る剣士にランクアップしている。

「ポーションの作成をお願いしたい」

 そう言って机の上にアイテムバックを置く。

「回復ポーション40。毒消しポーション20。麻痺解除ポーション10。材料は余分に入っているから余ったら手間賃にして」

 隆司くんはニカっと笑う。まぁ、原材料と引き換えにポーションを造るというのは自分が開拓者になったときの約束なので引き受ける。
 ジョブレベルが低いうちはポーション造りも失敗が多かったから、彼の支援はありがたかった。

「で、どうよ?」

「あぁ。昨日、中級に上がったよ」

「おぉ。美里がついに!どういう心変わり?」

 隣りに座っていた茶髪ポニーテールのギャル風少女の冬山心ふゆやまこころちゃんが話に乗って来る。

「気配察知を覚えたら、隠密と急所攻撃のセットで野犬を奇襲で簡単に仕留めることが出来るようになったの」

「ああ、野犬なら背後からの急所攻撃でー確か!」

 隆司くんがポンと手を叩く。

「いいなぁ」

「鍛錬してる?ジョブが生えるかもよ?」

「え?あれワンチャンじゃないの?」

 自分の指摘に心が目を丸くする。実はダンジョンの職業部屋は、ジョブが得られない人がいるのではなく、なれるジョブにステータスが足りていないだけでダンジョンの第一階層である程度鍛えてチャレンジすれば誰でも開拓者になれるのだ。

「え?なにそれ」

 心ちゃんの顔が苦いものになる。

「最近は第一階層突破するのに開拓者に引率を依頼するから全く成長しないのが原因らしいよ?経験値を得ずにジョブ獲得出来るステータスに到達している人って珍しいんだって」

「なにそれ!」

 だんだんと足踏みをして悔しがる心ちゃん。まぁ、スライム一匹倒してのレベルアップでジョブに必要なステータスに達する人もいれば数百匹倒しても必要なステータスに達しない人もいる。しかもジョブを得る前にダンジョンを出ると経験値や職なしスキル。そしてステータスが上昇した効果はリセットされるらしい。

「美里!お願い、お願いします。放課後ジョブ取得まで付き合って!」

 土下座でもするかのような勢いで頭を下げる彼女だった。


「せい!」

 床を這いずるスライムを見つけては塩を撒く。縮むスライムの核を心ちゃんがオーク皮のブーツで蹴り飛ばし踏み潰す。
 ボフンとドロップする魔石。順調順調。

「職なしスキルは全部取得した?そろそろボス部屋に行く?」

「うん。ジョブは全部取得したし、そうね」

 心ちゃんの表情が明るい。ちなみに、今回の配信は配信限定のクローズド。ダンジョン庁のAIしかこの配信を見ていない。第一階層をひたすら低レベルモンスターを狩る映像とか需要ないからね。
 早速ボス部屋に入り、ボスのラージスライムは塩を撒いて無事討伐。

「さて・・・」

 心ちゃんは大きく息を吐いて職業部屋に入る。

「おおぉ美里!職を授かったよ!」

 乙女らしからぬ雄叫びが職業部屋から聞こえてくる。

「何になった?」

「魔法少女!」

 ・・・魔法使いじゃなくて魔法少女ね。ちなみに魔法少女は、職なし状態のときのみに就けるレアな職のひとつだけど、徒手空拳のバリバリの前衛職だったりする。スキルでそれらしい装備に変身出来るので魔法少女って呼ばれている。
 また魔法少女は変身スキルのお陰で装備を揃えなくても活躍出来るけど、マジックバックが装備出来ないという不遇職でもある。サブに生産職を取ってスペースのスキルを取らないと荷物は碌に持ち運べないのだ。そして、魔法少女はメインに他の職業を付けれないというよりオマケ付きだったりする。
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