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【一章】『運命の番』編
14 Ω男子専門児童養護施設①(回想)
『Ω男子専門児童養護施設』ー。
文字通り、Ω性と診断された男子のみを保護し、養育する施設である。ちなみに、Ω女子専門の養護施設もあるらしい。男子専門があれば女子専門があるのは当たり前だけど。
仕事内容は言葉にしてしまえば至ってシンプル。
『子供達の生活のサポート』である。衣食住を調え、家庭と同じように安定した環境を与え、子供達が健やかな生活を送れる様に見守り、サポートする仕事。
頑張ったら褒めてあげたり、いけない事をしたら叱ったりは必要だが、特別何か指導しなければならない事はない。一般的な養護施設にはない特別な事といえば、発情期の世話くらいだろう。
だから、特別な資格は何も要らない。求められるのは『Ωである事』だけー。
ただ、Ωなら誰でも良いわけではないらしく…。
シェルターに避難してきたΩは、まず体や心の傷を癒やす事に専念する。それから、心身が癒えて就職を希望する人は職種の希望を訊かれ、出来るだけ希望に添う職を斡旋してもらえる。殆どはあまり人に関わらなくて済む裏方的な職種を希望するのだが、中には接客業を希望する人もいるらしい。
俺は入所と同時に職の斡旋を頼んだ時に、職種は問わない事と住居込みで…とお願いしていた。まさか、住み込みの仕事を紹介されるとは思わなかったけど。確かに俺は、早く仕事を見つけて新たな生活を一日も早く始めたかったし、俺の出した条件には当て嵌まるかもしれないけれど…!
職場と住居が同じ…って………。
戸惑う俺に、仕事を紹介してくれた職員さん…番のいるΩの男性…は、
「本当に誰でも良いわけじゃないんだよ。君の人と為、シェルター内での様子を観察させてもらった上で、君なら…と思いました。このシェルターの管理人からの太鼓判もあります」
と、笑顔で言った。
彼が言うには、俺のシェルター内での過ごし方が決め手になったらしい。が、俺は大した事はしていない…つもりだ。シェルターでは特にする事がなくて暇を持て余してたから、シェルターの職員さんの手伝いをしたり、母親と一緒に避難してきた子供達と遊んだり、小学生の子には勉強を教えてあげたり。あとは、発情期の人の世話とか…。シェルター内では助け合うものだし、特別な事は何もしていないと思うのだが、避難してきて、そこまでの事を率先してやる人はシェルターが出来て以来、初めてらしい。Ω達は可能な限り助け合いはするが、実際には自分の事でいっぱいいっぱいなのが現実なのだという。
確かに…と俺は思った。俺はただ住む所と職を求めてシェルターに一時的に身を寄せたけれど、実際には行き場を失ったΩが救いを求めて避難して来る所なのだから、他人の事など思い遣る余裕なんか無い。
そんな中で、『俺』を見つけたそうだ。
職員さんは週に一度はシェルターに顔を出してたから、俺ともすっかり顔見知り。まさか、ずっと動向を観察されていたなんて思わなかったけれど。
自分で言うのもなんだが、甲斐甲斐しく他人の世話をし、シェルターの職員さんの仕事を奪うかの様に忙しなく動き回る俺を、ずっと見ていた訳だ。そして、ずっと見られていた俺…。
ちょっと恥ずかしい…。
でも俺、基本、じっとしてらんない性格だからなぁ。
俺、暇を持て余すよりも忙しいくらいが好きなんだよ。Ωなんだから家庭に入って子供を産み育てろ、家庭に入って家を守れ…なんて絶対無理。いつの時代だよ。そういうのが良いΩは多いし、そういう生き方を否定するつもりはないけれど、俺には絶対無理。だから、独りで生きてくって決めてたんだよなぁ。
大和に会うまでは……。
俺、少しは考えてた。大和と生きてく事。大和なら俺の気持ちを尊重してくれる。働く事を望めば家庭に閉じ込めるなんて絶対にしないだろうな…って……。
……………。
…思いだしたら、泣きそうだ…。
ああ、本当に涙が出そうだ…と俯きかけた俺の顔の前に、すっ…とハンカチが差し出された。
「使って下さい」とー。
どうやら俺は『泣きそう…』ではなく、既に目許を潤ませていたようだ。自覚なしに。
俺は素直に差し出されたハンカチを借りて、目許を拭った。
「すみません。色々思い出してしまって…」
「いえ、大丈夫ですよ」
優しく微笑む職員さんの顔を見てたら、何だか心がほっこりした。
俺なら…って言ってくれた彼を信じてみようかな…って気持ちになったんだ。
「施設の見学、出来ますか?
見学させてもらってから決めても良いですか?」
子育て経験のない俺が子供達の世話なんて出来るのか、不安はあったけど、せっかく職員さんが『俺なら出来る』と思って紹介してくれたんだから…ってさ。
「もちろんです」
笑顔で頷いてくれた職員さんの行動は早かった。
その日の内に養護施設に連絡をして、二日後の土曜日に訪問出来るようにしてもらったと、これまたその日の夜に連絡をもらった俺。「早っ!」と思わず声に出てしまったのは仕方ないと思う。
職員さんは電話越しに笑いながら、その日は学校が休みで子供達がみんな居るからだと教えてくれた。
見学するなら子供達の日々の様子を見てもらったほうが良いという事らしい。
そんな訳で、俺のΩ男子専門児童養護施設見学が決まったのだが…。
服装→動きやすい比較的ラフな格好
持ち物→普段着上下一式と、ゆったりとした部屋着と下着一式
服装はともかく、持ち物の意味が解らなかった。
しかし、見学に行った日の夕方、その意味を初めて知った。
職員さんは知っていたみたいだったから、事前に教えておいてもらいたかったと思った俺だった。
心の準備が…ねぇ……。
文字通り、Ω性と診断された男子のみを保護し、養育する施設である。ちなみに、Ω女子専門の養護施設もあるらしい。男子専門があれば女子専門があるのは当たり前だけど。
仕事内容は言葉にしてしまえば至ってシンプル。
『子供達の生活のサポート』である。衣食住を調え、家庭と同じように安定した環境を与え、子供達が健やかな生活を送れる様に見守り、サポートする仕事。
頑張ったら褒めてあげたり、いけない事をしたら叱ったりは必要だが、特別何か指導しなければならない事はない。一般的な養護施設にはない特別な事といえば、発情期の世話くらいだろう。
だから、特別な資格は何も要らない。求められるのは『Ωである事』だけー。
ただ、Ωなら誰でも良いわけではないらしく…。
シェルターに避難してきたΩは、まず体や心の傷を癒やす事に専念する。それから、心身が癒えて就職を希望する人は職種の希望を訊かれ、出来るだけ希望に添う職を斡旋してもらえる。殆どはあまり人に関わらなくて済む裏方的な職種を希望するのだが、中には接客業を希望する人もいるらしい。
俺は入所と同時に職の斡旋を頼んだ時に、職種は問わない事と住居込みで…とお願いしていた。まさか、住み込みの仕事を紹介されるとは思わなかったけど。確かに俺は、早く仕事を見つけて新たな生活を一日も早く始めたかったし、俺の出した条件には当て嵌まるかもしれないけれど…!
職場と住居が同じ…って………。
戸惑う俺に、仕事を紹介してくれた職員さん…番のいるΩの男性…は、
「本当に誰でも良いわけじゃないんだよ。君の人と為、シェルター内での様子を観察させてもらった上で、君なら…と思いました。このシェルターの管理人からの太鼓判もあります」
と、笑顔で言った。
彼が言うには、俺のシェルター内での過ごし方が決め手になったらしい。が、俺は大した事はしていない…つもりだ。シェルターでは特にする事がなくて暇を持て余してたから、シェルターの職員さんの手伝いをしたり、母親と一緒に避難してきた子供達と遊んだり、小学生の子には勉強を教えてあげたり。あとは、発情期の人の世話とか…。シェルター内では助け合うものだし、特別な事は何もしていないと思うのだが、避難してきて、そこまでの事を率先してやる人はシェルターが出来て以来、初めてらしい。Ω達は可能な限り助け合いはするが、実際には自分の事でいっぱいいっぱいなのが現実なのだという。
確かに…と俺は思った。俺はただ住む所と職を求めてシェルターに一時的に身を寄せたけれど、実際には行き場を失ったΩが救いを求めて避難して来る所なのだから、他人の事など思い遣る余裕なんか無い。
そんな中で、『俺』を見つけたそうだ。
職員さんは週に一度はシェルターに顔を出してたから、俺ともすっかり顔見知り。まさか、ずっと動向を観察されていたなんて思わなかったけれど。
自分で言うのもなんだが、甲斐甲斐しく他人の世話をし、シェルターの職員さんの仕事を奪うかの様に忙しなく動き回る俺を、ずっと見ていた訳だ。そして、ずっと見られていた俺…。
ちょっと恥ずかしい…。
でも俺、基本、じっとしてらんない性格だからなぁ。
俺、暇を持て余すよりも忙しいくらいが好きなんだよ。Ωなんだから家庭に入って子供を産み育てろ、家庭に入って家を守れ…なんて絶対無理。いつの時代だよ。そういうのが良いΩは多いし、そういう生き方を否定するつもりはないけれど、俺には絶対無理。だから、独りで生きてくって決めてたんだよなぁ。
大和に会うまでは……。
俺、少しは考えてた。大和と生きてく事。大和なら俺の気持ちを尊重してくれる。働く事を望めば家庭に閉じ込めるなんて絶対にしないだろうな…って……。
……………。
…思いだしたら、泣きそうだ…。
ああ、本当に涙が出そうだ…と俯きかけた俺の顔の前に、すっ…とハンカチが差し出された。
「使って下さい」とー。
どうやら俺は『泣きそう…』ではなく、既に目許を潤ませていたようだ。自覚なしに。
俺は素直に差し出されたハンカチを借りて、目許を拭った。
「すみません。色々思い出してしまって…」
「いえ、大丈夫ですよ」
優しく微笑む職員さんの顔を見てたら、何だか心がほっこりした。
俺なら…って言ってくれた彼を信じてみようかな…って気持ちになったんだ。
「施設の見学、出来ますか?
見学させてもらってから決めても良いですか?」
子育て経験のない俺が子供達の世話なんて出来るのか、不安はあったけど、せっかく職員さんが『俺なら出来る』と思って紹介してくれたんだから…ってさ。
「もちろんです」
笑顔で頷いてくれた職員さんの行動は早かった。
その日の内に養護施設に連絡をして、二日後の土曜日に訪問出来るようにしてもらったと、これまたその日の夜に連絡をもらった俺。「早っ!」と思わず声に出てしまったのは仕方ないと思う。
職員さんは電話越しに笑いながら、その日は学校が休みで子供達がみんな居るからだと教えてくれた。
見学するなら子供達の日々の様子を見てもらったほうが良いという事らしい。
そんな訳で、俺のΩ男子専門児童養護施設見学が決まったのだが…。
服装→動きやすい比較的ラフな格好
持ち物→普段着上下一式と、ゆったりとした部屋着と下着一式
服装はともかく、持ち物の意味が解らなかった。
しかし、見学に行った日の夕方、その意味を初めて知った。
職員さんは知っていたみたいだったから、事前に教えておいてもらいたかったと思った俺だった。
心の準備が…ねぇ……。
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