15 / 36
疑⑦
しおりを挟む
「進藤さん、他に気づいた点等はありませんか?」
「他ですか? 後は……特に変わりはないかと」
「ありがとうございます。しかし、ふむ。ラグですか……何故なくなったのでしょうねぇ?」
「そこまでは流石に……この段階ではわからないですね」
「そうですねぇ。とりあえずはこの謎の女性について調べたい所ですねぇ」
「俺もそう思います」
「では……森野さん、髪の毛について調べ終わったら連絡をお願いします」
話を振られた森野は、軽く息を吐くと静かに口を開く。その表情からは呆れと……それでいてどこか期待のような物が込められているように感じられた。
「はいはい、わかっているわ。任せておいて頂戴」
「助かります。では、進藤さん行きましょう」
「わかりました。あの、失礼します」
先を行く朝倉の後を追うように、識も森野に一礼して洋壱の部屋を出る。一瞬振り返ると森野は既に自分の業務へ戻っていた。このまま見ていると辛くなると判断した識は、目の前の朝倉が靴に被せていたビニールを取っているのをマネし、彼に続いて今度こそ洋壱の部屋を後にした。
マンションの玄関を閉め、そのまま階段で一階まで降りて行く。今時珍しくエレベーターがないのだ。降りている最中、朝倉から声をかけられた。
「進藤さん、お尋ねしても?」
「なんですか?」
「久川さんはよくトラブルに合われていたと仰っていましたが、最近はどうでしたか?」
「わかりません……。先程も言った通り、アイツは本当に大事になってから話すので」
「抱え込む性格だったようですね、久川さんは」
「そうです……」
階段を降りつつ、識は外へ視線をやる。憎いくらいの青空が広がっている。
(こんなにも青い空が……眩しくてしんどいなんてな……。知りたくなかったぜ……)
「それで……朝倉刑事? もう午後も良い時間ですが?」
強引に話を振れば朝倉が自身の腕時計に視線をやる。そして、静かに口を開いた。
「そうですね、お腹も空きましたし……。食事にしましょうか」
「ちなみになんですが……食事の後はどうするんです?」
「それは食べてから考えましょう。空腹では頭も回りませんからねぇ」
「それもそうですね……」
一階まで到着した二人はそのまま出入口へ向かい外に出た。相変わらず他の捜査員達は各自仕事に集中しているようだった。
(不気味なくらい、俺の事を気にしねぇな? 一人くらい文句でも言いそうなもんだが……)
識が改めてそう思っていた時だった。中年の恰幅の良い男性が近づいてきた。白髪交じりの黒髪をオールバックにしているその男性の服装はカーキ色の上着に、紺色のスーツにノーネクタイの白いワイシャツ姿だ。眼光鋭いその男性は二人と対峙すると朝倉の方へ視線を向けて声をかけてきた。
「よぉ~朝倉? 相変わらず突飛な事をしているみたいだな?」
「そちらこそ、情報が早いですねぇ? 流石は竹田さん、抜け目がないですねぇ」
「そいつはこっちの台詞だわな。お前さんほど手段を選ばず成果を出す奇特な奴ぁいねぇさ」
「竹田さんにそう言って頂けるとは光栄ですねぇ」
「言うねぇ~。食えない奴め」
只ならぬ空気を漂わせている二人の会話に入れない識は、静かに息を飲む。竹田の気配に威圧されている事に気づいたからだ。
(刑事ってのは、皆こうなのか? やっぱり俺には……向いてねぇ)
「他ですか? 後は……特に変わりはないかと」
「ありがとうございます。しかし、ふむ。ラグですか……何故なくなったのでしょうねぇ?」
「そこまでは流石に……この段階ではわからないですね」
「そうですねぇ。とりあえずはこの謎の女性について調べたい所ですねぇ」
「俺もそう思います」
「では……森野さん、髪の毛について調べ終わったら連絡をお願いします」
話を振られた森野は、軽く息を吐くと静かに口を開く。その表情からは呆れと……それでいてどこか期待のような物が込められているように感じられた。
「はいはい、わかっているわ。任せておいて頂戴」
「助かります。では、進藤さん行きましょう」
「わかりました。あの、失礼します」
先を行く朝倉の後を追うように、識も森野に一礼して洋壱の部屋を出る。一瞬振り返ると森野は既に自分の業務へ戻っていた。このまま見ていると辛くなると判断した識は、目の前の朝倉が靴に被せていたビニールを取っているのをマネし、彼に続いて今度こそ洋壱の部屋を後にした。
マンションの玄関を閉め、そのまま階段で一階まで降りて行く。今時珍しくエレベーターがないのだ。降りている最中、朝倉から声をかけられた。
「進藤さん、お尋ねしても?」
「なんですか?」
「久川さんはよくトラブルに合われていたと仰っていましたが、最近はどうでしたか?」
「わかりません……。先程も言った通り、アイツは本当に大事になってから話すので」
「抱え込む性格だったようですね、久川さんは」
「そうです……」
階段を降りつつ、識は外へ視線をやる。憎いくらいの青空が広がっている。
(こんなにも青い空が……眩しくてしんどいなんてな……。知りたくなかったぜ……)
「それで……朝倉刑事? もう午後も良い時間ですが?」
強引に話を振れば朝倉が自身の腕時計に視線をやる。そして、静かに口を開いた。
「そうですね、お腹も空きましたし……。食事にしましょうか」
「ちなみになんですが……食事の後はどうするんです?」
「それは食べてから考えましょう。空腹では頭も回りませんからねぇ」
「それもそうですね……」
一階まで到着した二人はそのまま出入口へ向かい外に出た。相変わらず他の捜査員達は各自仕事に集中しているようだった。
(不気味なくらい、俺の事を気にしねぇな? 一人くらい文句でも言いそうなもんだが……)
識が改めてそう思っていた時だった。中年の恰幅の良い男性が近づいてきた。白髪交じりの黒髪をオールバックにしているその男性の服装はカーキ色の上着に、紺色のスーツにノーネクタイの白いワイシャツ姿だ。眼光鋭いその男性は二人と対峙すると朝倉の方へ視線を向けて声をかけてきた。
「よぉ~朝倉? 相変わらず突飛な事をしているみたいだな?」
「そちらこそ、情報が早いですねぇ? 流石は竹田さん、抜け目がないですねぇ」
「そいつはこっちの台詞だわな。お前さんほど手段を選ばず成果を出す奇特な奴ぁいねぇさ」
「竹田さんにそう言って頂けるとは光栄ですねぇ」
「言うねぇ~。食えない奴め」
只ならぬ空気を漂わせている二人の会話に入れない識は、静かに息を飲む。竹田の気配に威圧されている事に気づいたからだ。
(刑事ってのは、皆こうなのか? やっぱり俺には……向いてねぇ)
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる