上 下
24 / 83
第二章 ルクバトにて

第二十四話 オクタヴィアンとの対人戦

しおりを挟む
 修練場で鍛錬すること三時間後。
 だいぶ双剣が馴染んできた私を見て、リュドヴィックさんもとい、スパルタリュドヴィック先生から次なる課題を出された。

「よし、動きはいいな。なら、次は対人戦だ!」

「え? は、はいぃ!?」

 対人戦って……リュドヴィックさんと?

 戦々恐々としていると、隣で鍛錬をしていたオクト君が声をかけてきた。

「おっ、対人戦ですか? なら、リュドヴィック卿、俺とイグナートで手合わせさせてくれません?」

「オクタヴィアン卿……いいのか?」

 眉を少し下げて言うリュドヴィックさんに対して、オクト君は眩しい笑顔で答える。

「勿論ですよ! なんせ、仲間ですからね!」

 うぅ……なんてさわやかなんだ!!

「そうか。なら、頼む。お互い、いい刺激になるだろう」

 私がオクト君のさわやかさにやられている間に、話はまとまったらしい。怖いけど……ここでビビってたら、『男が廃る』ってヤツだよね?

 覚悟を決めた私は、オクト君と共に対人戦用のスペースに行き、そこで木剣を借りる。
 私は当然二本、オクト君は一本を手に取ると、安全柵を開き、中に入った。

「おいおい、そんなに緊張すんなって!」

 笑顔で言われても、怖いもんは怖いんです!

「はは、お手柔らかにお願いします……」

「おう!」

 あ、これ、お手柔らかじゃないフラグだ。
 それぞれ武器を構え、対峙する。
 スペースの外側から、リュドヴィックさんの声が聞こえてきた。

「それじゃ、両名準備はいいな? 開始!」

 私とオクト君が睨み合う。じりじりと距離を取りながら、出方を伺っていると、先に動いたのはオクト君だった。

「行っくぜぇー!!」

 右腕を大きく振りかぶって、私の頭部を狙ってくる。それを、私は左手で構えていた木剣で防ぎ、右手に持ったもう一本でオクト君を突こうとする。
 だが。

「おっと!」

 オクト君が華麗にかわすと、私の右脇腹を狙って木剣を振るう。
 私はかわしきれず、もろに受けてしまった。

「いっだぁ!?」

 あまりの痛さに、思わずその場に座り込んでしまう。
 すると、スパルタリュドヴィック先生から激が飛ぶ。

「なにをしている! 早く立たないか! 戦場だったら死んでいるぞ!」

 うぅ……そう言われましても……。

「イグナート! 『男らしく』なるんだろ? なら、まだ行けるよな!?」

 オクト君にそう言われ、私は頷く。そうだ、なるんだ……! 『男』に!

 気力を振り絞り、立ち上がると私は木剣を構え直す。
 それを、満足げにオクト君が見てくる。

「オクト君、行くよ!」

「おう!」

 私はオクト君目掛けて走り出した――。
しおりを挟む

処理中です...