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お留守番
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翌朝。
今日も奏輔は会社だ。
「今日は午後半休もらえてるから、お昼過ぎに帰るよ」
そう聞いて、瑞姫はなんとなく安堵する。昨日の博己との件があって、あまり一人でいたくはなかった。
「でね、今日は瑞姫を縛って出かけようかと思うんだ」
「え……?」
「僕が帰るまで、六時間くらいかな。その間、瑞姫は縛られてるの」
想像してみる。六時間もの間、ここで縛られている自分。誰も居ないので、途中では絶対にやめられない。
「縛る、だけ?」
「瑞姫が嫌でなければ、洗濯ばさみも、バイブも、ローターも付けて」
頬がかぁっと熱くなる。六時間も、ずっと?
「飲み物は、ストローを差して置いておくから大丈夫。エアコンも入れていく。お手洗いは、今行っておいで。途中で漏らしちゃってもいいけどね」
言われて、トイレへと行く。朝起きて一度行ったので、そんなには出ない。
トイレから出ると、奏輔が真っ赤なビニールテープを持っていた。
「どうかな? 六時間も嫌かな?」
そう問われれば、嫌とは言えない。
「……縛られて、待ってる……」
時刻はまだ朝七時。
全裸になった瑞姫を、奏輔が縛っていく。
今回は、時間も長く、瑞姫を一人で放置するので、ロープではなく負担の少ないビニールテープだ。
後ろ手に拘束してから、胸の上下を腕ごと縛る。
息を吸うと、胸のビニールテープがぎゅっと締め付けてきて、それだけで気持ちよかった。
お尻には、ローターを二つ。いつの間にか、二つ入れるのがスタンダードになってしまっている。バイブは少し細めのものだが、振動しながらかなりうねうねと動くやつだ。バイブ固定パンツを履いてしまうと、もう抜きようがない。ワイヤレスではないので、電源を入れてから固定パンツを履かされると、「あっ、あっ、」と声が出た。
脚をそろえて、太腿にもビニールテープを二箇所巻いた。膝から下は固定していないので頑張れば動けないこともないが、かなり難しそうだ。
仕上げに、乳首に洗濯ばさみを付けられる。甘い痛みに、身体がぞくぞくする。
「ローターもしっかり動かしておくからね」
そう言って、まだ止まっていたローターの出力も最大に。
「ふっ、う、ああっ」
こんなのが、これから六時間。気が遠くなるほどの放置プレイだ。
「どう? 瑞姫、がんばって耐えてくれる?」
奏輔が、優しく囁く。この声には弱い。なんでも受け入れてしまう。
「うん……がんばり、ます……んっ、は、ああっ」
優しく頭を撫でられて、「それじゃあ、行ってくるね。いい子で待ってて」とキスをされた。
玄関のドアがバタン、と閉まり、ガチャリと鍵をかける音がした。
静かな部屋に、バイブとローターの振動音がする。
あとは、エアコンがゆるく風を送る音と、時計のカチカチという音。
そして、自分の息遣い。
始まったばかりだというのに、すでにかなり刺激的だ。
ほとんど動けない状態でベッドの上に転がされて、上も下も、前も後ろも、思いっきり刺激されっぱなし。とてもじっとはしていられなくて、縛られて不自由な身体なのに、芋虫のようにうねうねと動かさずにはいられなかった。動くたびに、太腿に巻いたビニールテープが、ぎゅっと締め付ける上、脚の間に隙間がある分、その辺りのテープは脚に付いたり剥がれたりして、剥がす時のピリピリとした刺激もあった。
気持ち良すぎてつらいのに、身体はもっと、もっと、と刺激を求めているようだった。
時計を見ると、まだ七時半。
奏輔が出て行ってから、まだたったの十五分しか経っていない。
いっそ昨晩のようにイッてしまえれば、もう少しぼうっと過ごせるかもしれなかったが、こんな刺激では到底無理だ。
外では、次第に生活音が増えていく。
同じ階の住人が、すぐ前の廊下を歩く音もする。
こんな日常の中で、自分はこんな恥ずかしい姿でよがっているなんて。
なんともいえない羞恥心が、瑞姫を襲う。
と、新聞受けに何かが入る音がした。
びくり、と身体を強張らせる。
別に、鍵は締めてあるのだから特に問題はないのだが、音がするとドキドキするものだった。
フリーペーパーか何かだろう。
一階の集合郵便受けに入れれば楽だろうに、個別に入れているのか。
さらに時間が経って、ローターの振動が止まった。どうやら電池切れらしい。
まだバイブは動いているが、少し刺激が弱まった気がする。
とはいえ、しっかり縛られた身体はのんびりまったりとはいかないし、主張してくる異物感はむしろ増している。身じろぎするたびに、「んっ、」と声が漏れていた。
午前十時を過ぎたところで、ピンポーン、とインターホンが鳴った。
ドキリ、と心臓が跳ねる。
声を押し殺していると、もう一度ピンポーン、と鳴った。
もしかすると、誰かがいる気配を感じているのかもしれない。居るはずなのに出てこないから、訝しんでいるのかも。
とはいえ、この格好で出るわけにはいかないので、じっと黙って様子を窺っていると、何やらガサガサと音がして、新聞受けに何かを入れる音がした。
そろそろ暇だったのもあって、瑞姫は玄関まで行ってみることにする。
ベッドからそろそろと降りて、ゆっくり歩く。膝から下の脚しか動かないので、少しずつしか進めない。
玄関のドアに背を向けて少し斜めに身体を捻り、手探りで新聞受けを開けると、新聞受けがお尻に当たった。ひやりとした感触に「んっ」と声が出た。
開けてみたはいいが、思ったよりも深くて、後ろ手に縛られた手では届きそうもなかった。仕方がないので中を覗いてみると、何かチラシのようなものと、宅配便の不在票が入っている。どうやら、さっきのインターホンは宅配業者だったらしい。
またゆっくりとベッドに戻り、ころりと横になる。
少し歩いただけだったが、けっこう大変だった。
しかし、奏輔が帰ってくるまではまだ半分の時間しか経っていない。
足りない刺激に、うねうねと身を捩る。
(ああ……早く奏輔さんに触って欲しい……)
もう、頭は奏輔のことでいっぱいだ。
そういえば、昨日は二度もセックスをした。したというか、できたという方が正しいだろうか。
(奏輔さん、もう普通に勃つみたい。普通のエッチが増えたりするのかな……)
もともと奏輔はノーマルなはずだ。瑞姫がよろこぶから、サディスティックなことをするようになっただけだし、勃てば挿入れているわけだから、やっぱり挿入れたいんだろう。
奏輔が相手ならば、それでも良かった。
瑞姫があまりセックスに興味を持てないのは、瑞姫の性癖が大きい。「お嬢様気質」で、自分のために尽くしてもらいたい瑞姫は、男性の「自分が気持ちよくなるために腰をふる」という行為にどうしても冷めてしまうことが多かった。SM系の漫画を読んでいたって、最終的には男が挿入れて気持ちよくなるのがゴールなのだ。一気に冷めてしまうので、「ああ、今から挿入れるんだな」と思うと、そこで読むのを止めてしまうことも多い。
ただ、奏輔とのセックスは、不思議な特別感があった。
勃たないと悩んでいたのを知っていたせいもあるかもしれないが、自分とのSMの関係の中で興奮してくれていることが大きいと思う。お嬢様気質で尽くしてもらいたいけれど、同時に支配してもらいたいマゾでもある。その感覚を共有してくれているような気がするのだ。大事に尽くしてくれて、瑞姫が身も心も委ねきったのを感じ取って、初めて勃つ。そういう奏輔の特殊な『性癖』は、たとえ理性が飛んだ激しいセックスでも、独りよがりを感じて冷めてしまうようなことはなかった。
(むしろ、どんなセックスにでも応えてあげたくなっちゃうくらい……)
今日も奏輔は会社だ。
「今日は午後半休もらえてるから、お昼過ぎに帰るよ」
そう聞いて、瑞姫はなんとなく安堵する。昨日の博己との件があって、あまり一人でいたくはなかった。
「でね、今日は瑞姫を縛って出かけようかと思うんだ」
「え……?」
「僕が帰るまで、六時間くらいかな。その間、瑞姫は縛られてるの」
想像してみる。六時間もの間、ここで縛られている自分。誰も居ないので、途中では絶対にやめられない。
「縛る、だけ?」
「瑞姫が嫌でなければ、洗濯ばさみも、バイブも、ローターも付けて」
頬がかぁっと熱くなる。六時間も、ずっと?
「飲み物は、ストローを差して置いておくから大丈夫。エアコンも入れていく。お手洗いは、今行っておいで。途中で漏らしちゃってもいいけどね」
言われて、トイレへと行く。朝起きて一度行ったので、そんなには出ない。
トイレから出ると、奏輔が真っ赤なビニールテープを持っていた。
「どうかな? 六時間も嫌かな?」
そう問われれば、嫌とは言えない。
「……縛られて、待ってる……」
時刻はまだ朝七時。
全裸になった瑞姫を、奏輔が縛っていく。
今回は、時間も長く、瑞姫を一人で放置するので、ロープではなく負担の少ないビニールテープだ。
後ろ手に拘束してから、胸の上下を腕ごと縛る。
息を吸うと、胸のビニールテープがぎゅっと締め付けてきて、それだけで気持ちよかった。
お尻には、ローターを二つ。いつの間にか、二つ入れるのがスタンダードになってしまっている。バイブは少し細めのものだが、振動しながらかなりうねうねと動くやつだ。バイブ固定パンツを履いてしまうと、もう抜きようがない。ワイヤレスではないので、電源を入れてから固定パンツを履かされると、「あっ、あっ、」と声が出た。
脚をそろえて、太腿にもビニールテープを二箇所巻いた。膝から下は固定していないので頑張れば動けないこともないが、かなり難しそうだ。
仕上げに、乳首に洗濯ばさみを付けられる。甘い痛みに、身体がぞくぞくする。
「ローターもしっかり動かしておくからね」
そう言って、まだ止まっていたローターの出力も最大に。
「ふっ、う、ああっ」
こんなのが、これから六時間。気が遠くなるほどの放置プレイだ。
「どう? 瑞姫、がんばって耐えてくれる?」
奏輔が、優しく囁く。この声には弱い。なんでも受け入れてしまう。
「うん……がんばり、ます……んっ、は、ああっ」
優しく頭を撫でられて、「それじゃあ、行ってくるね。いい子で待ってて」とキスをされた。
玄関のドアがバタン、と閉まり、ガチャリと鍵をかける音がした。
静かな部屋に、バイブとローターの振動音がする。
あとは、エアコンがゆるく風を送る音と、時計のカチカチという音。
そして、自分の息遣い。
始まったばかりだというのに、すでにかなり刺激的だ。
ほとんど動けない状態でベッドの上に転がされて、上も下も、前も後ろも、思いっきり刺激されっぱなし。とてもじっとはしていられなくて、縛られて不自由な身体なのに、芋虫のようにうねうねと動かさずにはいられなかった。動くたびに、太腿に巻いたビニールテープが、ぎゅっと締め付ける上、脚の間に隙間がある分、その辺りのテープは脚に付いたり剥がれたりして、剥がす時のピリピリとした刺激もあった。
気持ち良すぎてつらいのに、身体はもっと、もっと、と刺激を求めているようだった。
時計を見ると、まだ七時半。
奏輔が出て行ってから、まだたったの十五分しか経っていない。
いっそ昨晩のようにイッてしまえれば、もう少しぼうっと過ごせるかもしれなかったが、こんな刺激では到底無理だ。
外では、次第に生活音が増えていく。
同じ階の住人が、すぐ前の廊下を歩く音もする。
こんな日常の中で、自分はこんな恥ずかしい姿でよがっているなんて。
なんともいえない羞恥心が、瑞姫を襲う。
と、新聞受けに何かが入る音がした。
びくり、と身体を強張らせる。
別に、鍵は締めてあるのだから特に問題はないのだが、音がするとドキドキするものだった。
フリーペーパーか何かだろう。
一階の集合郵便受けに入れれば楽だろうに、個別に入れているのか。
さらに時間が経って、ローターの振動が止まった。どうやら電池切れらしい。
まだバイブは動いているが、少し刺激が弱まった気がする。
とはいえ、しっかり縛られた身体はのんびりまったりとはいかないし、主張してくる異物感はむしろ増している。身じろぎするたびに、「んっ、」と声が漏れていた。
午前十時を過ぎたところで、ピンポーン、とインターホンが鳴った。
ドキリ、と心臓が跳ねる。
声を押し殺していると、もう一度ピンポーン、と鳴った。
もしかすると、誰かがいる気配を感じているのかもしれない。居るはずなのに出てこないから、訝しんでいるのかも。
とはいえ、この格好で出るわけにはいかないので、じっと黙って様子を窺っていると、何やらガサガサと音がして、新聞受けに何かを入れる音がした。
そろそろ暇だったのもあって、瑞姫は玄関まで行ってみることにする。
ベッドからそろそろと降りて、ゆっくり歩く。膝から下の脚しか動かないので、少しずつしか進めない。
玄関のドアに背を向けて少し斜めに身体を捻り、手探りで新聞受けを開けると、新聞受けがお尻に当たった。ひやりとした感触に「んっ」と声が出た。
開けてみたはいいが、思ったよりも深くて、後ろ手に縛られた手では届きそうもなかった。仕方がないので中を覗いてみると、何かチラシのようなものと、宅配便の不在票が入っている。どうやら、さっきのインターホンは宅配業者だったらしい。
またゆっくりとベッドに戻り、ころりと横になる。
少し歩いただけだったが、けっこう大変だった。
しかし、奏輔が帰ってくるまではまだ半分の時間しか経っていない。
足りない刺激に、うねうねと身を捩る。
(ああ……早く奏輔さんに触って欲しい……)
もう、頭は奏輔のことでいっぱいだ。
そういえば、昨日は二度もセックスをした。したというか、できたという方が正しいだろうか。
(奏輔さん、もう普通に勃つみたい。普通のエッチが増えたりするのかな……)
もともと奏輔はノーマルなはずだ。瑞姫がよろこぶから、サディスティックなことをするようになっただけだし、勃てば挿入れているわけだから、やっぱり挿入れたいんだろう。
奏輔が相手ならば、それでも良かった。
瑞姫があまりセックスに興味を持てないのは、瑞姫の性癖が大きい。「お嬢様気質」で、自分のために尽くしてもらいたい瑞姫は、男性の「自分が気持ちよくなるために腰をふる」という行為にどうしても冷めてしまうことが多かった。SM系の漫画を読んでいたって、最終的には男が挿入れて気持ちよくなるのがゴールなのだ。一気に冷めてしまうので、「ああ、今から挿入れるんだな」と思うと、そこで読むのを止めてしまうことも多い。
ただ、奏輔とのセックスは、不思議な特別感があった。
勃たないと悩んでいたのを知っていたせいもあるかもしれないが、自分とのSMの関係の中で興奮してくれていることが大きいと思う。お嬢様気質で尽くしてもらいたいけれど、同時に支配してもらいたいマゾでもある。その感覚を共有してくれているような気がするのだ。大事に尽くしてくれて、瑞姫が身も心も委ねきったのを感じ取って、初めて勃つ。そういう奏輔の特殊な『性癖』は、たとえ理性が飛んだ激しいセックスでも、独りよがりを感じて冷めてしまうようなことはなかった。
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