【短編集】ならわし

采女

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神様の花嫁

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 私の村には、神様がいます。
 山の中にある石造りの社殿にいらっしゃるのだそうで、この村の守り神です。

 神様は、一年ごとに新しい花嫁を迎えます。

 花嫁は、村の十八歳から二十九歳までの女性から、特に美しい者を選びます。
 そのため、毎年正月に花嫁を選ぶための選考会があります。

 選考会では、該当する女性全員が全裸で外に並べられます。
 正月はとても寒いのですが、選考会はとても長く、しかも夕刻から始まるのでかなりつらいと聞きます。

 聞きます、というのは、私が今年十八歳を迎えたばかりだからです。
 次の選考会が、初めての参加なのです。
 日中は普通におせちを食べたり、お年玉をもらったり、親戚と過ごすものなのですが、夕刻になると村の広場で選考会に参加しなければなりません。
 早い段階で選考から外れることができれば早く帰れるのですが。

 いよいよ初の選考会です。
 広場に着くと、服を脱ぐよう指示されました。
 下着も靴も全部です。
 広場は石畳なので、足がとても冷えます。
 寒いので、せめて腕で身体を覆いたいのですが、身体も選考対象なので、手で隠さないようにと言われました。
 同じ理由で、しゃがむこともできません。

 ガタガタ震えながら立っていると、村の偉い人や、神社の関係者さんたちがやってきました。

 短冊状の和紙を持っていて、和紙には選考対象者の名前が書かれていました。
 名前を確認すると、その和紙を咥えているよう指示されます。
 名札代わりなのですね。

 まずは顔と身体を見て、イマイチな女性から帰っていいと言われます。
 寒いので早く帰りたいですが、ここで帰っていいと言われるのは、別の意味でちょっと嫌です。
 アトピー持ちの同級生は、とっとと帰っていきました。
 顔は可愛いんですけどね。

 半分くらいに絞り込むと、今度は何か棒のようなもので胸を触っているようです。
 自分の番が近くなると、それが筆だとわかりました。
 筆で胸をくるくると愛撫して、反応をチェックしているようでした。
 みんな口に名札を咥えているので声は出しませんが、人によっては寒さではなく身体を震わせています。
 そういう私も、必死で我慢しましたが、身体がピクピク跳ねました。
 寒さで尖っている先端をクリクリと愛撫するのは反則だと思います。
 むしろ無反応な人はどうなっているのでしょうか。

 そんなことを思っていたら、無反応だった人たちは概ね帰されたようです。
 神様の花嫁選びなので、感度も重要だということでしょう。
 もっと我慢しておけば、私も早く帰れたのかもしれません。

 気付けばさらに減っていて、同級生と一つ二つ年上くらいの若い子が多くなっていました。
 神様は若い子が好きなのでしょうか。

 今度は、選考員が手のひらサイズのひょうたんにしっぽが生えたような形のものを持ってきました。
 それを膣に入れるよう指示されます。
 そんなに大きくはないのですが、だいぶ違和感です。
 そのまま待っていると、「抜けないように力を入れてね」と、しっぽのような部分を軽く引っ張られました。
 反射的ぎゅっと力を入れてしまったのですが、後から考えるとあれは膣圧を測っていたのでしょう。
 抜けてしまった方が帰れたのです。

 そうして、私は最終選考まで残ってしまいました。
 辺りはとっくに真っ暗で、もう寒いというより痛いくらい身体が冷え切ってしまっています。

「身体を温めますね」
と、今まで直接触れることのなかった選考員が、身体を触りはじめました。
 人数が減ったので、一人に一人ずつついて、身体を触っています。
 反射的に身を捩ろうとすると、後ろで両手をまとめて掴まれ、逃れられなくなりました。
 確かにただ立っているよりは温まりますが、胸を執拗に愛撫されて、名札を咥えているのが大変でした。

 神様の花嫁には、同級生の女の子が選ばれました。
 負けた気がしてちょっと悔しいですが、神様の花嫁に選ばれると、一年間は山奥の社殿から出られないので、ちょっとホッとした部分もあります。

 ところで、神様の花嫁は高い確率で神様の子を授かって山を降りてきます。
 神様なんて本当にいるのでしょうか。
 とても不思議です。
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