【短編集】ならわし

玩具会社

　私は、老舗玩具メーカーに勤務しています。

　そう言えば、とても夢のあるお仕事に聞こえますが、実は「大人の」玩具メーカーです。
　高卒でもすごく給料が良かったので決めました。

　私のお仕事は、玩具を装着するところから始まります。
　時期によって異なりますが、今はカップタイプの乳首ローターと、三点責めの装着型バイブです。
　あ、野外調教趣味じゃないんですよ？
　洋服の販売をする店員さんが、そのお店の商品を着ているのは普通ですよね。
　それと同じです。

　かわいい下着も支給されているので、玩具の上から下着を着て、普通に服を着ます。
　入社当初に持っていたリクルートスーツはスカートがタイトでしたが、今はフレアスカートです。
　上は白のブラウスで、今は夏なのでジャケットは着ません。
　ブラが黒なのでちょっと透けますが、暑さには勝てませんね。

　大きめの鞄を持って、先輩と一緒に外回りに行きます。
　外回りは基本、二人一組で行きます。
　仕事が仕事なだけに、痴漢とか犯罪防止の意図もあります。
　社内でのセクハラが常態化しないように、一緒に行くペアは毎回異なるのですが、今日の先輩は遠慮なくリモコンのスイッチを入れてくる人なので、ちょっと大変です。
　さすがに当社製品でも一日はバッテリが保たないのですが、途中で交換できるよう、替えも五つ用意されています。
　当社自慢の逸品なので、かなり刺激が強いく、毎回必死です。
　とはいえ、先輩とペアの日は売上が格段に上がるので文句は言いません。

　今日最初のお客様は、アダルトグッズの販売店です。
　実物と資料を提示して、まだ置いてもらっていない商品を売り込みます。

　先輩が「ご覧になりますか？」と言うので、私はスカートを捲りました。これをするのに、タイトスカートは不便なのです。
　まずは、ショーツの上から見てもらって、薄型でしっかり装着できることを説明します。
　さらに先輩がショーツを下ろして、私は脚を広げてお客様に見せます。
　装着具合をしっかり見せると、一度玩具が抜き取られます。
　そうすると、真っ赤に充血した秘部が丸見えです。
　これがめちゃくちゃ恥ずかしいのですが、製品の効果を実感してもらうには最適です。
　さらにお客様自身に装着の簡単さを確認してもらって、リモコン操作も体験してもらいます。

　かなりの羞恥プレイですが、かなりの率で契約いただけます。

　胸の方もお客様に見せることが多いので、前ボタンのブラウスが多いです。
　以前、カットソータイプにしたら、裾を口に咥えさせられて余計に恥ずかしかったので、もっぱら前ボタンですね。

　あくまで商品の説明で、枕営業はしないので、先輩もお客様も、基本的には私の肌には触れません。
　ただ、今回は新発売のニップルクランプも見たいと言われたので、先輩が乳首を摘んでニップルクランプを付けました。
　ずっとカップタイプのローターで刺激されていたのですごく敏感になっていて、思わず声をあげてしまいました。

　ちなみにこの新商品、ＳＭ用なので挟む力も強くて、しかもバケツがぶら下がっているので、中に重りを入れられる仕様です。
　重りを入れても耐えられるくらい強く挟む必要があったので、当社でも最強です。
　それをアピールするために、先輩が遠慮容赦なくバケツに硬貨を入れていって、さらに「まだいけるんですよ」とバケツの縁にＳ字フックを引っ掛けて、そこに五円玉を掛けられるだけ掛けるというデモンストレーションを始めてくれたので、私は一軒目から涙目になってしまいました。

　本日二軒目は、ＡＶの制作会社です。
　一般のイメージではヤバそうに思えるかもしれませんが、実はこちらの方がだいぶ楽です。
　というのも、実際に刺激が強いとか気持ちがいいとか、そういうのは求めていないので、カタログの見た目と価格の安さで決めてしまうからです。ＡＶなんてフィクションですからね。

　先輩も巻きで商談を進め、早目にランチに行くことができました。
　おかげでのんびりデザートまで食べられました。
　玩具は着けたままでしたけどね。

　午後はさらに五件も回って、もうヘトヘトです。
　直帰でいいと言ってもらったので、先輩が自宅まで車で送ってくれました。
　先輩は送り狼になったりはしませんが、私が部屋に入ったのを見計らって、入れっぱなしのバイブを最強にするイタズラを仕掛けてきました。
　おかげでイっちゃったのは内緒です。