Angel or Reaper 〜正義と悪〜

くらげ

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第29話

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ジャック「なんだよ....これ....」

ジャックとフェイの任務は、集落で暴れていた能力者を捕らえること。
負傷者は2人。
報告の内容から、ジャックとフェイは凶暴な能力者が居るのだと思っていた。
だが、2人が目にしたのは。

「頼む!話を聞いてくれ!!」

「話だと!?ふざけるな!!穢れた能力者風情の話なんて誰が聞くもんか!!」

「そうだそうだ!!」

動けないように手と足を縛られ、話を聞いてくれと願う能力者。
そして、聞く耳を持たずただただ罵り差別をする、住民。
ずっとこれの繰り返しだった。

「なんで誰も聞いてくれないんだ!!軍人さん!あんたも何か言ってくれ!!」

状況を飲み込むのに時間をかけたが、先に口を開いたのはフェイだった。

フェイ「とりあえず話を聞くのは、あなたを連行してからです....ジャック」

ジャック「...!!あ、あぁ.....」

「待ってくれ!!俺には子供がいるんだ!!せめてその子達に飯を食わしてくれ!!」

フェイ「気の毒ですが....」

「なに!?子供だと!?」

「あんなやつの子供だと!?ふざけるな!穢れた血を増やしやがって!!その子どもはどこに居やがる!」

ジャック「みなさん!ちょっと落ち着いてください!」

「これが落ち着いていられるか!!本当に子供が居るんならそいつ諸共ぶっ殺してやる!!」

ジャック「....え???」

さすがの2人も、ここまでの差別を目の当たりにするのは初めてだった。

フェイ「ジャック、長居は危険です。今すぐ連れていきましょう」

「そもそも連れてかなくても、ここで殺せばいいじゃないか」

フェイ「そんな....それは」

「無理だって??何のためにわざわざ能力者なんかに頼んだと思ってんだ。軍に所属してるとはいえ所詮害虫かよ、これだから能力者は信用出来ないんだ」

ジャック「おい、それ以上は」

「なんだ?まさかお前ら、そこに居る能力者の仲間なんじゃないだろうな??」

「そうか、だから殺そうとしないんだ、その軍服も盗んだやつなんじゃないのか??」

「じゃあここに居る3人とも危険じゃないか!」

フェイ「そんな!私たちは!」

ジャック「分かった」

住民の暴走はここで止めなければいけない。
見るに堪えない状況だった。

フェイ「ジャック!?」

ジャック「......俺がやる」

「やっとその気になったか!早く殺せ!!」

「殺せ!!能力者に報いを!!」

殺せ!!殺せ!!殺せ!!

「お、おい、マジでやんのかよ!!なんでだよ!!どうして!!!俺を連れて行って、話を聞くんじゃなかったのかよ!!」

ジャック「......ッ!!!すまない....」

ジャックは持っていた銃を、能力者の頭を撃ち抜いた。
銃声とともに、その男は倒れた。

「やったぁぁ!!!害虫が一人減ったぞ!!」

「この集落も救われたんだ!!」

「やったぁぁぁ!!」

フェイ「ジャック......」

「.....あ.....ッ.....」

フェイ「まだ息が.....」

「...どう....して....」

僅かに残っていた息もその一言を最後に終わりを告げた。

ジャック「.....積んでいくぞ.....」

帰還の準備を終え、2人はその村を後にした。
感謝の言葉は一言も聞こえなかった。

ジャック「.......」

フェイ「あの.....ジャック.....」

ジャック「......どうした」

フェイ「.....いえ.....」

ジャック「.....なんで、俺たち2人だったんだろうな.....」

フェイ「....報告通りなら、能力者は凶暴そのもの。ましてや住民もいる、守りながら戦う必要が出てきますから....」

ジャック「守る.....か」

揺らいでいた、自分が一体何のために戦っているのか。
長い帰還路でジャックとフェイの頭の中は集落での出来事、住民の叫び、能力者の涙と最期の言葉。
全てが焼き付いて離れなかった。
集落は救った、そのはずなのに。
自分の行いが本当に正解だったのか、結論が出せない。

ジャック(俺は.....ずっと....あんなのを守るために.....戦ってたのか.....俺の掲げていた正義に....意味なんてあるのか.....)

フェイ「.....なんなんでしょうね....正義って.....」

ジャック「......」

その任務の報告を最後に、2人は軍を抜け、消息を経った。

To be continued....
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