23 / 23
エピローグ
護衛長はぼやく
しおりを挟む
ディラン様とユカリナ様の離縁が成立して数年がたった。
あの時、ディラン様が1年もの間引っ張っていた心に決着をつけられたのは、シェリー様と料理人との件だけではなく、俺が報告したことも関係していることは明らかだ。
すべては、ディラン様が大戦から戻られたときに始まった。
後に、後ろめたさからユカリナ様にシェリー様を娶る事を言えなかったのだと聞かされたが、当時では俺ですらシェリー様に心が移ったと思った。全ては、周囲の人々の勝手な解釈による勘違いから起こっていた。それは敬愛する人を守る為の嘘、嫉妬心から生まれた嘘、焦燥感から発生した嘘。嘘を付いた理由は様々だったし、本当にそれが理由かなんて心の奥までは分からない。そして、相手を思って付いた嘘に、その相手が傷つけられるという悪循環がうまれた。
執事は捕まった。毒草は彼が内密に依頼していたと判明したからだ。発注はしたが、自分の手に渡る前に誤って厨房に搬入されてあの事故が起こったのだと言い訳していたが、そんな事理由にならない。結果として、ディラン様とユカリナ様のお子様は産まれてくることができなかったのだから。事実を報告したところ、ディラン様は見たこともない表情で執事を殴り飛ばした。
『私は、あなたのために!』
ユカリナ様を愛しているとディラン様が仰った時の執事の顔は忘れられない。
『そんな…馬鹿な…』
使用人の間で事実が周知された頃、顔を青くしていたのは侍女長だ。直接苦言を呈されることはなかったものの、彼女は自分の言動がユカリナ様とシェリー様を追い詰める発端になったのだと察した。彼女は責任をとって退職し、シェリー様の子供を引き取った。
その後のディラン様は新たに二人の妻を娶られた。爵位を弟に譲りシェリー様と市位に下られることも考えたそうだが、祝勝会で一度ユカリナ様に恥をかかせている。それでは第2夫人と二人で生きるために第1夫人を捨てて市位に下ったのだと誤解される可能性があるらめ、ユカリナ様に対してあまりに配慮がないと思い直したようだ。ディラン様は今もなお、ユカリナ様を愛している。ユカリナ様にはすでに新しく思う男性がいると伝えた上での、彼女の未来のためにとの決断だった。新たに迎えられた二人の妻とディラン様は、可もなく不可もない愛のない関係を続けている。奥方も特にディラン様に興味を持たれるでもなく、子育てに奮闘されている。
俺は今、調査に協力してくれた侍女と束の間の休憩を共に過ごしていた。
「こじれにこじれて結果としてはこうなってしまったが、一歩違えたらとても幸福な結末もあったと思う。この世界は歪みが生じやすい。複数妻を持てる事もそう、愛した人と添えない風潮もそう。ただ、ディラン様がユカリナ様にもう一人愛する人が出来てしまったとお伝えしていれば、シェリー様にユカリナ様と比べてはいないとお伝えしていれば、三人はとてもよい関係が築けたかもしれない。この不条理で矛盾だらけの世界において、もっとも理想的な家庭を」
「今となっては何とでも言えます。ただ、私たちは今後同じ過ちを繰り返さないように嘘を付かず、思い込みから突っ走ることのないよう気を付けるだけですわ」
「そうかもしれないな…さぁ休憩は終わりだ。」
end
***************************
読んで下さりありがとうございまいた。
始めての長編と言う事で、捻りのない内容を小難しくしただけのお話となっていまいました。次回作の構想を練っています。7月中の投稿をめどにしたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
また、勝手に感想を停止してしまい申し訳ありませんでした。近況ボードに書いて下さっいるのに数日前に気がつき、読者様の温かい声援に励まされました。ありがとうございました○┓
あの時、ディラン様が1年もの間引っ張っていた心に決着をつけられたのは、シェリー様と料理人との件だけではなく、俺が報告したことも関係していることは明らかだ。
すべては、ディラン様が大戦から戻られたときに始まった。
後に、後ろめたさからユカリナ様にシェリー様を娶る事を言えなかったのだと聞かされたが、当時では俺ですらシェリー様に心が移ったと思った。全ては、周囲の人々の勝手な解釈による勘違いから起こっていた。それは敬愛する人を守る為の嘘、嫉妬心から生まれた嘘、焦燥感から発生した嘘。嘘を付いた理由は様々だったし、本当にそれが理由かなんて心の奥までは分からない。そして、相手を思って付いた嘘に、その相手が傷つけられるという悪循環がうまれた。
執事は捕まった。毒草は彼が内密に依頼していたと判明したからだ。発注はしたが、自分の手に渡る前に誤って厨房に搬入されてあの事故が起こったのだと言い訳していたが、そんな事理由にならない。結果として、ディラン様とユカリナ様のお子様は産まれてくることができなかったのだから。事実を報告したところ、ディラン様は見たこともない表情で執事を殴り飛ばした。
『私は、あなたのために!』
ユカリナ様を愛しているとディラン様が仰った時の執事の顔は忘れられない。
『そんな…馬鹿な…』
使用人の間で事実が周知された頃、顔を青くしていたのは侍女長だ。直接苦言を呈されることはなかったものの、彼女は自分の言動がユカリナ様とシェリー様を追い詰める発端になったのだと察した。彼女は責任をとって退職し、シェリー様の子供を引き取った。
その後のディラン様は新たに二人の妻を娶られた。爵位を弟に譲りシェリー様と市位に下られることも考えたそうだが、祝勝会で一度ユカリナ様に恥をかかせている。それでは第2夫人と二人で生きるために第1夫人を捨てて市位に下ったのだと誤解される可能性があるらめ、ユカリナ様に対してあまりに配慮がないと思い直したようだ。ディラン様は今もなお、ユカリナ様を愛している。ユカリナ様にはすでに新しく思う男性がいると伝えた上での、彼女の未来のためにとの決断だった。新たに迎えられた二人の妻とディラン様は、可もなく不可もない愛のない関係を続けている。奥方も特にディラン様に興味を持たれるでもなく、子育てに奮闘されている。
俺は今、調査に協力してくれた侍女と束の間の休憩を共に過ごしていた。
「こじれにこじれて結果としてはこうなってしまったが、一歩違えたらとても幸福な結末もあったと思う。この世界は歪みが生じやすい。複数妻を持てる事もそう、愛した人と添えない風潮もそう。ただ、ディラン様がユカリナ様にもう一人愛する人が出来てしまったとお伝えしていれば、シェリー様にユカリナ様と比べてはいないとお伝えしていれば、三人はとてもよい関係が築けたかもしれない。この不条理で矛盾だらけの世界において、もっとも理想的な家庭を」
「今となっては何とでも言えます。ただ、私たちは今後同じ過ちを繰り返さないように嘘を付かず、思い込みから突っ走ることのないよう気を付けるだけですわ」
「そうかもしれないな…さぁ休憩は終わりだ。」
end
***************************
読んで下さりありがとうございまいた。
始めての長編と言う事で、捻りのない内容を小難しくしただけのお話となっていまいました。次回作の構想を練っています。7月中の投稿をめどにしたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
また、勝手に感想を停止してしまい申し訳ありませんでした。近況ボードに書いて下さっいるのに数日前に気がつき、読者様の温かい声援に励まされました。ありがとうございました○┓
618
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
君を自由にしたくて婚約破棄したのに
佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」
幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。
でもそれは一瞬のことだった。
「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」
なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。
その顔はいつもの淡々としたものだった。
だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。
彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。
============
注意)ほぼコメディです。
軽い気持ちで読んでいただければと思います。
※無断転載・複写はお断りいたします。
身代わりーダイヤモンドのように
Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。
恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。
お互い好きあっていたが破れた恋の話。
一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
私の好きな人は異母妹が好き。だと思っていました。
棗
恋愛
帝国の公爵令嬢アマビリスには片思いをしている相手がいた。
青みがかった銀髪と同じ瞳の色の第二皇子アルマン。何故かアマビリスにだけ冷たく、いつも睨んでばかりでアマビリスの異母妹リンダには優しい瞳を向ける。片思いをしている相手に長年嫌われていると思っているアマビリスは、嫌っているくせに婚約が決まったと告げたアルマンを拒絶して、とある人の許へ逃げ出した。
そこでアルマンを拒絶してしまった事、本当は嬉しかったのにと泣いてしまい、泣き付かれたアマビリスは眠ってしまう。
今日は屋敷に帰らないと決めたアマビリスの許にアルマンが駆け付けた。
※小説家になろうさんにも公開しています。
私のことは愛さなくても結構です
ありがとうございました。さようなら
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。
一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。
彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。
サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。
いわゆる悪女だった。
サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。
全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。
そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。
主役は、いわゆる悪役の妹です
跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。
Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。
政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。
しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。
「承知致しました」
夫は二つ返事で承諾した。
私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…!
貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。
私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――…
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
異母姉の身代わりにされて大国の公妾へと堕とされた姫は王太子を愛してしまったので逃げます。えっ?番?番ってなんですか?執着番は逃さない
降魔 鬼灯
恋愛
やかな異母姉ジュリアンナが大国エスメラルダ留学から帰って来た。どうも留学中にやらかしたらしく、罪人として修道女になるか、隠居したエスメラルダの先代王の公妾として生きるかを迫られていた。
しかし、ジュリアンナに弱い父王と側妃は、亡くなった正妃の娘アリアを替え玉として差し出すことにした。
粗末な馬車に乗って罪人としてエスメラルダに向かうアリアは道中ジュリアンナに恨みを持つものに襲われそうになる。
危機一髪、助けに来た王太子に番として攫われ溺愛されるのだか、番の単語の意味をわからないアリアは公妾として抱かれていると誤解していて……。
すれ違う2人の想いは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる