公爵夫人の気ままな家出冒険記〜「自由」を真に受けた妻を、夫は今日も追いかける〜

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フィリアとの静かな抗議を経て、ルカはフィリアの冒険者活動への直接的な干渉を控えるようになった。彼は、フィリアの「浄化支援」の才能が、Eランクの依頼ではもはや活かしきれていないことを理解し、彼女を次のステージへ進ませる必要があると考えた。


ルカは、公爵としての仕事の重圧が増してきたことを理由に、テオリアの街に**「ライゼ公爵家 国境防衛出張所」**を、緊急で開設することを決定した。


ルカは王都へ、精鋭の秘書官と事務官、そして護衛騎士団の一部を派遣するよう、緊急の命令を下した。


「影」部隊の隊長が、ルカの隠れ家で困惑した顔で報告した。「閣下、テオリアに公爵家の出張所ですか？ 夫人を連れ戻すどころか、公爵家の本拠地を移すおつもりですか？」


ルカは涼しい顔で言った。「馬鹿を言え。フィリアは、国境の魔物対策に興味を示している。そして、彼女の才能は、この街の防衛力の強化に不可欠だ。宰相として、妻の能力を国のために活かすのは当然の責務だろう？」


ルカは、公的な理由を盾に、フィリアが安全に、そして公爵夫人としてではなく冒険者として活動できる環境を、テオリアに完全に構築しようとしていた。


数日後、テオリアの閑静な一角に、急ごしらえだが、最新の設備を備えた公爵家出張所が完成した。


フィリアは、その出張所を見て、呆れるしかなかった。「旦那様……国境防衛のために、私を追いかけて、公爵家をこのテオリアに呼んだのですか……？」


ルカは、フィリアの肩に手を置き、満面の笑顔で言った。「これで、君は公爵家の後援を受けながら、テオリアで最も安全な冒険者として活動できる。君が稼いだ金は、公爵家の名で、孤児院の支援に回すことができる。フィリア、君の夢を、私は公爵の力で最大限にバックアップする」


ルカは、フィリアの「自由に生きて、自分の力で貢献する」という夢を、公爵としての自身の役割に完全に組み込んでしまったのだ。


フィリアは、ルカの底知れない溺愛と権力に、もはや反論する気力も失っていた。しかし、ルカの行動は、彼女が目指す孤児院の支援や、この街の治安維持に、確実に貢献している。


「わかりました、旦那様。もう何を言っても無駄ですね」フィリアは諦め、しかし嬉しそうに微笑んだ。「では、私はこの出張所を拠点に、公爵家公認の冒険者として、この街の平和に貢献します」


ルカは、フィリアの同意を得て、心から満足した。


「公爵家公認冒険者、か。最高の響きだ。さあ、フィリア。次の依頼は、公爵家出張所に届いた、未踏の遺跡の調査依頼だ。もちろん、私も同行する」


ルカは、フィリアの安全を理由に、これからも彼女の傍を離れるつもりはなかった。公爵夫妻の、溺愛と自立を巡る異世界冒険は、テオリアを舞台に、新たなフェーズへと突入した。