カプセル勇者は三分間だけ暴れまわる

ばうどらて

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瘴気に汚染された大陸からの脱出 その6

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「あの怪しいパーティーと本気で戦わなかった理由? 特に何も。
 ピートくんの安全確保が優先だったし、殺すのはいつでもできるけど、いったん殺すと生き返らせることはできないし」

「いつでも殺せますか、それは何よりです。彼らや、少し前にあなたが撃退した辺境伯あたりが、この大陸の人間としては最大の戦闘能力の保持者なのです」

 本日のゲームマスターは白の女神ファッション。ラッパのように広がった袖などは中世ヨーロッパ風味なんだけど、体に巻き付けているのがゴツめの金鎖だったり装飾品の意匠が安全剃刀や歯車だったりとパンクしている。
 ふよふよ浮いている俺はいつもの左肩留めの膝上丈キトン。イメージを練り上げると別の格好にもできるらしいが、何だか面倒くさいのでパス。

「アレで、ですか。うーん、化け物の二、三匹程度なら倒せるとしても、数百匹単位の化け物の群れを相手にできるほどの実力があるとは思えなかったんですが。
 あのパーティーには転移能力者がいたみたいだから、一匹倒したらどこかに転移して素材を剥ぎ取って、終わったらまた化け物のところに転移して——とかやっていたんでしょうかね」と俺。

「それもあるのでしょうけれど、数百匹単位の群れに遭遇した経験自体が彼らにはないと思われます。浄化の聖女たちの情報によると、前回の噴火が百三十年前で経験者は生き残っていません。
 それに前回の噴火は今回の噴火よりもずっと規模が小さく、群れを構成する魔物の数は今回より少なめ、高ランクな巨大魔物の発生率も低かったようです。記録を照らし合わせる限りでは、二百年前にあった前々回の噴火の規模が今回のそれと近いでしょう」とゲームマスター。

「それだから奪った命を無駄にするなとか、のんびりしたことを言ってられるのでしょうねぇ。そうでなくても、動物なんかが相手ならともかく、化け物の命に敬意を払えとかホザかれても困りますよ」

「ピートくんとも話したのですが、彼らの価値体系では魔物、特に強い魔物ほど、高価で有効な素材の供給源であると同時に、畏敬すべき対象でもあるみたいです。
 まあ、放送で避難勧告を出しても無視、あなたが討伐する直前の魔物の大集合を見せても駄目、浄化の聖女が説得しようとすれば立体映像に切り掛かるのですから処置なしです」

 ゲームマスターがいくつかの映像を映し出す。

 あのときは暗くてよく見えなかったが、落雷連発前の化け物大集合の様子はなかなか凄かったんだな。見せられたパーティーのメンバーは頭に血がのぼっていて、感じるべき恐怖を感じていないようだけど。
 あっ、本当に浄化の聖女の立体映像を剣で横薙ぎにしている。
 ピート相手にもがっつり攻撃していたし、明らかに非戦闘用員相手でも容赦しないなあ、あいつら。じゃあ、こっちも容赦しなくていいよね?

「はい。次に彼らが現れたら、巻き添えにしても構いません。
 やっちゃってください」

 ちなみに次のカプセル割り男もピートの予定。怪我が完治してからだけど。
 防具と防御の魔道具を強化し、魔術師の転移妨害を妨害する魔道具も追加するとのこと。何だか技術担当者がノリノリで改良・製作したんだそうだ。



 それから、外の時間でどのくらい経過したのか。
 今、俺が目にしているのは、遥か彼方から徐々に近づいてくる化け物たち。
 まだまだ距離があって火山灰に煙ったその向こうに、遠近感が狂っているような巨大な影。
 マジかよ、あれ、魔王よりでかいんじゃね?
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