カプセル勇者は三分間だけ暴れまわる

ばうどらて

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インタールード 神の交替

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「自ら顕現して戦うだなんて、まるで古き神々みたいだわ」
「創世神話の神と今の神とは性格が違っていて、別人ならぬ別神としか思えないという研究結果もあるしな。ダンのいる世界と同様、どこかの時点で世界を担当する神が変更になったのかもしれない」
「そうね、創世の神々だったら卑劣な勇者暗殺を肯定なんかしなかったと思う。
 本当に腹立たしい限り」

 勇者パーティーの聖女と僧侶が言う。以前はもっと敬虔な信者だったんだけど、だいぶ突き放した感じで神を語るようになった。

 俺は王太子と話している。
「創世の神々と今のダンの上司とは似ているところがあるような気がする」
「世界の構築に取り掛かっている様子はね。うちの上司の方は、あれでかなり温厚な性格しているそうだ。上位存在からは、世界を全部壊して最初から作り直しでもいいと言われているのを、今いる人間を全員消滅させるのもなーとぼちぼちやっているんだと。創世神話の神の方は、元いた生き物を全部死滅させて最初からやり直したんじゃないかと思う」
「そちらは瘴気の大陸を一つ沈める程度だが、こちらの創世は最初に全部沈めたと言い伝えられてるしね」
「社会制度や慣習は思い切り壊している。
 奴隷は禁止するし、娼館はほとんど全部が廃業に追い込まれるし。
 働く本人の自由意志を尊重して過度の搾取を禁じるだけで崩壊する仕組みの方が悪いんだと」
「自由意志の尊重や過度の搾取の線引きは神託によって決まるし、幸運度や他者からの好感度を上下させるルールも神託で決まるというのは興味深い。
 ……私も早くそちらの世界に行ってみたいな」

 そこに魔術師が割って入る。
「いや、内乱を起こさずに王太子を変更できるようになるのは、もう少し先だろ。
 それより僕を先に移住させてもらいたいんだけど。
 あちらの技術担当者とか研究機関とか、ワクワクするものがいっぱい存在している世界に行きたい」
「確かにお前と相性が良さそうだ。あれらについて詳しくは知らんけど」

 そろそろ夢も終わりで従業員が閉店を告げる。
 宿泊施設に隣接している店で、雰囲気最高、料理も酒も美味いぞと、パーティーメンバー全員が大喜びだったんだ。
 いい気分で部屋に帰って、寝ていたところを襲われて死んだってのは酷いオチだったと思うけど。
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