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波乱の結婚パーティー その2
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「本当だ、フェンリルだ」
視界の右端には「LRの神獣、フェンリル」とか表示されている。
この手の表示を見るのは、この世界に来たばかりの頃に戦った湖の怪物以来だよなあ。あれは「URのUMA」という表示だけで「フェンリル」の部分に相当する名称の表示はなかったけど。
それにしても、ニーズヘッグもどきの屍竜のときにこのような表示がなかったのは解せない。他はまあ、人間は表示の対象外なんだろうとか、化け物でも大集団になっていたら表示しきれないんだろうとか、脳内補完して納得することができる。
「神獣だそうだけど、あれ、どうすればいいですか?」
「まずは戦い専門の者たち以外を逃がしたいと思います! 援護をお願いします」
「了解、防御壁!」
今回のそれは、自分らを防御する壁というよりフェンリルを囲む檻と言った方が近い。
カプセル割り王子は身につけていた緋のマントを脱ぎ、素早く床へと広げる。
マントの裏には魔法陣。「転移の魔法陣か」と俺は唸る。
床から転移の魔法陣の発する光が立ち上る。転移門ともピートの転移とも異なる効果だ。
お姫様のような少女、上級貴族っぽい夫婦、煌びやかな衣装を纏った者たちが、次々と転移の光に足を踏み入れては、消えていく。
俺は神獣に視線を移す。湖の怪物のときと同様、表示されるランクやステータスは俺の見慣れたものではないから良くわからん。湖の怪物で表示されていた数値はもちろん覚えていないが、このフェンリルはあれよりも少し強い気がする。
それよりも問題は、湖の怪物のときは屋外だったけど今回は屋内で、壁にはステンドグラス、天井には巨大なシャンデリアと、何だか殺傷能力の強いものだらけということだ。
防御壁の檻の中のフェンリルは身を捩って暴れている。特に人間たちを狙って攻撃しようという意志はないようだが、人間に危害が及ばないように配慮する様子もないのが困る。
「ええと、俺には時間の制限があって、俺が消えるとフェンリルを囲んでいる壁も消えてしまうんですけど、大丈夫ですか?
消えたらまたカプセルを割ってもらうにしても、防御壁なしの時間ができてしまいますよね」
「応援が来るから大丈夫です。ほら——」
床に広がるマントの裏の転移陣から兵士らしき人間が登場。さっきとは逆に、転移の光の中から現れた者たちが一人二人と光から足を踏み出して、カプセル割り王子の傍に立つ。
「なるほど、双方向の転移ですか」
他国のこのような会場に戦闘要員を引き込んでいいのかと一瞬思ったが、俺を顕現させるカプセルを持っているということは、ゲームマスターやってる新女神が後ろについているということで——うん、そちらに関しては全く問題はない。
問題はフェンリルのすぐ近くで言い争っている花嫁衣装の女性と十二、三歳くらいの少年か。
「わたくしのフェンリルを奪おうだなんてっ!」
「召喚したのは僕だ。姉様ではありません!」
「俺が消えて壁も消えたら、あの二人、危なそうです。
それと俺に対して魔法攻撃して、反射を食らって倒れている者もいます。
できれば俺が消えたらすぐにカプセルを割って呼んでください」
カプセル割り王子は力強く頷いてくれた。
視界の右端には「LRの神獣、フェンリル」とか表示されている。
この手の表示を見るのは、この世界に来たばかりの頃に戦った湖の怪物以来だよなあ。あれは「URのUMA」という表示だけで「フェンリル」の部分に相当する名称の表示はなかったけど。
それにしても、ニーズヘッグもどきの屍竜のときにこのような表示がなかったのは解せない。他はまあ、人間は表示の対象外なんだろうとか、化け物でも大集団になっていたら表示しきれないんだろうとか、脳内補完して納得することができる。
「神獣だそうだけど、あれ、どうすればいいですか?」
「まずは戦い専門の者たち以外を逃がしたいと思います! 援護をお願いします」
「了解、防御壁!」
今回のそれは、自分らを防御する壁というよりフェンリルを囲む檻と言った方が近い。
カプセル割り王子は身につけていた緋のマントを脱ぎ、素早く床へと広げる。
マントの裏には魔法陣。「転移の魔法陣か」と俺は唸る。
床から転移の魔法陣の発する光が立ち上る。転移門ともピートの転移とも異なる効果だ。
お姫様のような少女、上級貴族っぽい夫婦、煌びやかな衣装を纏った者たちが、次々と転移の光に足を踏み入れては、消えていく。
俺は神獣に視線を移す。湖の怪物のときと同様、表示されるランクやステータスは俺の見慣れたものではないから良くわからん。湖の怪物で表示されていた数値はもちろん覚えていないが、このフェンリルはあれよりも少し強い気がする。
それよりも問題は、湖の怪物のときは屋外だったけど今回は屋内で、壁にはステンドグラス、天井には巨大なシャンデリアと、何だか殺傷能力の強いものだらけということだ。
防御壁の檻の中のフェンリルは身を捩って暴れている。特に人間たちを狙って攻撃しようという意志はないようだが、人間に危害が及ばないように配慮する様子もないのが困る。
「ええと、俺には時間の制限があって、俺が消えるとフェンリルを囲んでいる壁も消えてしまうんですけど、大丈夫ですか?
消えたらまたカプセルを割ってもらうにしても、防御壁なしの時間ができてしまいますよね」
「応援が来るから大丈夫です。ほら——」
床に広がるマントの裏の転移陣から兵士らしき人間が登場。さっきとは逆に、転移の光の中から現れた者たちが一人二人と光から足を踏み出して、カプセル割り王子の傍に立つ。
「なるほど、双方向の転移ですか」
他国のこのような会場に戦闘要員を引き込んでいいのかと一瞬思ったが、俺を顕現させるカプセルを持っているということは、ゲームマスターやってる新女神が後ろについているということで——うん、そちらに関しては全く問題はない。
問題はフェンリルのすぐ近くで言い争っている花嫁衣装の女性と十二、三歳くらいの少年か。
「わたくしのフェンリルを奪おうだなんてっ!」
「召喚したのは僕だ。姉様ではありません!」
「俺が消えて壁も消えたら、あの二人、危なそうです。
それと俺に対して魔法攻撃して、反射を食らって倒れている者もいます。
できれば俺が消えたらすぐにカプセルを割って呼んでください」
カプセル割り王子は力強く頷いてくれた。
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