カプセル勇者は三分間だけ暴れまわる

ばうどらて

文字の大きさ
14 / 30

波乱の結婚パーティー その2

しおりを挟む
「本当だ、フェンリルだ」
 視界の右端には「LRの神獣、フェンリル」とか表示されている。
 この手の表示を見るのは、この世界に来たばかりの頃に戦った湖の怪物以来だよなあ。あれは「URのUMA」という表示だけで「フェンリル」の部分に相当する名称の表示はなかったけど。
 それにしても、ニーズヘッグもどきの屍竜のときにこのような表示がなかったのは解せない。他はまあ、人間は表示の対象外なんだろうとか、化け物でも大集団になっていたら表示しきれないんだろうとか、脳内補完して納得することができる。

「神獣だそうだけど、あれ、どうすればいいですか?」
「まずは戦い専門の者たち以外を逃がしたいと思います! 援護をお願いします」
「了解、防御壁!」
 今回のそれは、自分らを防御する壁というよりフェンリルを囲む檻と言った方が近い。

 カプセル割り王子は身につけていた緋のマントを脱ぎ、素早く床へと広げる。
 マントの裏には魔法陣。「転移の魔法陣か」と俺は唸る。
 床から転移の魔法陣の発する光が立ち上る。転移門ともピートの転移とも異なる効果だ。
 お姫様のような少女、上級貴族っぽい夫婦、煌びやかな衣装を纏った者たちが、次々と転移の光に足を踏み入れては、消えていく。

 俺は神獣に視線を移す。湖の怪物のときと同様、表示されるランクやステータスは俺の見慣れたものではないから良くわからん。湖の怪物で表示されていた数値はもちろん覚えていないが、このフェンリルはあれよりも少し強い気がする。
 それよりも問題は、湖の怪物のときは屋外だったけど今回は屋内で、壁にはステンドグラス、天井には巨大なシャンデリアと、何だか殺傷能力の強いものだらけということだ。
 防御壁の檻の中のフェンリルは身を捩って暴れている。特に人間たちを狙って攻撃しようという意志はないようだが、人間に危害が及ばないように配慮する様子もないのが困る。

「ええと、俺には時間の制限があって、俺が消えるとフェンリルを囲んでいる壁も消えてしまうんですけど、大丈夫ですか?
 消えたらまたカプセルを割ってもらうにしても、防御壁なしの時間ができてしまいますよね」
「応援が来るから大丈夫です。ほら——」
 床に広がるマントの裏の転移陣から兵士らしき人間が登場。さっきとは逆に、転移の光の中から現れた者たちが一人二人と光から足を踏み出して、カプセル割り王子の傍に立つ。
「なるほど、双方向の転移ですか」
 他国のこのような会場に戦闘要員を引き込んでいいのかと一瞬思ったが、俺を顕現させるカプセルを持っているということは、ゲームマスターやってる新女神が後ろについているということで——うん、そちらに関しては全く問題はない。

 問題はフェンリルのすぐ近くで言い争っている花嫁衣装の女性と十二、三歳くらいの少年か。
「わたくしのフェンリルを奪おうだなんてっ!」
「召喚したのは僕だ。姉様ではありません!」

「俺が消えて壁も消えたら、あの二人、危なそうです。
 それと俺に対して魔法攻撃して、反射を食らって倒れている者もいます。
 できれば俺が消えたらすぐにカプセルを割って呼んでください」

 カプセル割り王子は力強く頷いてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】 https://ncode.syosetu.com/n9071il/ 異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。 貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。 イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。 このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん? 別にいっか! 聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね! 重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!

処理中です...