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波乱の結婚パーティー その3
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「我が国からの出席者は全員転移しました。同盟国や友好国の出席者の方々の転移もそろそろ終わりです」
カプセル割り王子が言う。
俺が顕現していられる三分間というのは、全員を避難させるには短過ぎるのではないかと心配だったが、王子がカプセルを割るより前に、同じ国の人々は王子の側に集合済みだった模様。
そして転移陣からこちらの会場に転移してきた兵士たちが、王子の言う「同盟国や友好国の出席者」と思われる人たちを素早く迎えにいって、俺たちのところに連れてくる。おお、ああいうのを優雅なエスコートと言うんだな。いわゆるお姫様抱っこで運んでくる者までいる。
「それはいいんだ——ガッ!」
かざした盾に跳ね返された矢が射手に刺さる。
さっき跳ね返したのが魔法攻撃と思えば今度は物理攻撃か。
どこのどいつの差金なんだろう?
「フェンリルをわたくしに返しなさい!」
「絶対にっ、お断りします!」
キンキンと黄色い声を出している本日の花嫁とその弟らしき少年。彼らはお互いを攻撃するのに忙しくて俺を攻撃する余力はなさそうだしなぁ。
残り時間は僅か。俺は剣の属性を風に変更して、テーブルや椅子、崩れ落ちた壁の破片などを集めてバリケードを作る。
「俺が消えてもこれは残ります」
「わかりました。では、また」
避難させるべき人の避難はもう済んだ様子だけど、王子は俺を再召喚する気満々のようだ。
そんなことを思いながら俺は消えた。
「危ないっ!」とカプセル割り王子の声。
カプセルが割られた名残りの白煙が消える間もなく、火球が俺の方に飛んできた。盾を突き出すと火球は相手に跳ね返って——お、おい、俺と同業の魔法剣士みたいだけど、自分が火だるまになるだけじゃなくて、凄く身分の高そうな男まで炎上させているぞ。
「防御壁!」
俺はいつもの光の網付き防御壁を眼前に展開させ、カプセル割り王子の方を向いて言う。
「巻き添えで燃えてる身分の高そうな人は助けますか?」
「はい、お願いします」
俺は剣に水の属性を纏わせ、とても地位が高そうな男を燃やしていた火を消す。
魔法剣士っぽい男の方は放置。水をかけてなんかやんない。
「多分、俺の盾や鎧の攻撃反射の仕様を理解してなくて、素早く移動すれば避けられるとでも思ったんでしょう」
「守るつもりで王太子の側に移動したのでしょうが、類焼させるはめになるとは。
とにかく助かりました。花婿の焼死に我が国が関与したとか難癖をつけられても困るので」
カプセル割り王子が胸に手を当てて礼を言う。
「あれが本日の新郎さんでしたか。
それで新婦さんの方は、ご自分の弟さんとフェンリルの取り合いで忙しいと?」
「はい。本日は王太子妃がフェンリルの使役者となるお披露目の日でもあったわけですが、何だか揉めているようだという事前情報がありまして……。
使役者の性格次第で伝説の神獣は他国を攻撃する強力な兵器となり得ます。
使役者が誰になってどう転ぶか見届けたいのです」
「そうですか、片がつくまでカプセルの連続割りをしていただいても構いませんが、これは俺の上司に出てきてもらった方がいいかもしれませんねぇ。
花嫁もその弟も、伝説の神獣とやらを従わせる程の大層な存在には思えない」
『その通りだ』
「そうでしょ? だからゲームマスターに直接介入してもらって、フェンリルは新女神である彼女の直属になればいいんじゃないですか」
『汝が我を使役しようとは思わぬのか?』
「……ん?」
静かに佇むフェンリルと目が合った。「汝が我を使役」って、まさか——。
「いやいやいや、俺はサモナーじゃないし、今は俺自身が召喚獣みたいなもんなのに神獣の使役者になるなんて無理ーっ」
カプセル割り王子が言う。
俺が顕現していられる三分間というのは、全員を避難させるには短過ぎるのではないかと心配だったが、王子がカプセルを割るより前に、同じ国の人々は王子の側に集合済みだった模様。
そして転移陣からこちらの会場に転移してきた兵士たちが、王子の言う「同盟国や友好国の出席者」と思われる人たちを素早く迎えにいって、俺たちのところに連れてくる。おお、ああいうのを優雅なエスコートと言うんだな。いわゆるお姫様抱っこで運んでくる者までいる。
「それはいいんだ——ガッ!」
かざした盾に跳ね返された矢が射手に刺さる。
さっき跳ね返したのが魔法攻撃と思えば今度は物理攻撃か。
どこのどいつの差金なんだろう?
「フェンリルをわたくしに返しなさい!」
「絶対にっ、お断りします!」
キンキンと黄色い声を出している本日の花嫁とその弟らしき少年。彼らはお互いを攻撃するのに忙しくて俺を攻撃する余力はなさそうだしなぁ。
残り時間は僅か。俺は剣の属性を風に変更して、テーブルや椅子、崩れ落ちた壁の破片などを集めてバリケードを作る。
「俺が消えてもこれは残ります」
「わかりました。では、また」
避難させるべき人の避難はもう済んだ様子だけど、王子は俺を再召喚する気満々のようだ。
そんなことを思いながら俺は消えた。
「危ないっ!」とカプセル割り王子の声。
カプセルが割られた名残りの白煙が消える間もなく、火球が俺の方に飛んできた。盾を突き出すと火球は相手に跳ね返って——お、おい、俺と同業の魔法剣士みたいだけど、自分が火だるまになるだけじゃなくて、凄く身分の高そうな男まで炎上させているぞ。
「防御壁!」
俺はいつもの光の網付き防御壁を眼前に展開させ、カプセル割り王子の方を向いて言う。
「巻き添えで燃えてる身分の高そうな人は助けますか?」
「はい、お願いします」
俺は剣に水の属性を纏わせ、とても地位が高そうな男を燃やしていた火を消す。
魔法剣士っぽい男の方は放置。水をかけてなんかやんない。
「多分、俺の盾や鎧の攻撃反射の仕様を理解してなくて、素早く移動すれば避けられるとでも思ったんでしょう」
「守るつもりで王太子の側に移動したのでしょうが、類焼させるはめになるとは。
とにかく助かりました。花婿の焼死に我が国が関与したとか難癖をつけられても困るので」
カプセル割り王子が胸に手を当てて礼を言う。
「あれが本日の新郎さんでしたか。
それで新婦さんの方は、ご自分の弟さんとフェンリルの取り合いで忙しいと?」
「はい。本日は王太子妃がフェンリルの使役者となるお披露目の日でもあったわけですが、何だか揉めているようだという事前情報がありまして……。
使役者の性格次第で伝説の神獣は他国を攻撃する強力な兵器となり得ます。
使役者が誰になってどう転ぶか見届けたいのです」
「そうですか、片がつくまでカプセルの連続割りをしていただいても構いませんが、これは俺の上司に出てきてもらった方がいいかもしれませんねぇ。
花嫁もその弟も、伝説の神獣とやらを従わせる程の大層な存在には思えない」
『その通りだ』
「そうでしょ? だからゲームマスターに直接介入してもらって、フェンリルは新女神である彼女の直属になればいいんじゃないですか」
『汝が我を使役しようとは思わぬのか?』
「……ん?」
静かに佇むフェンリルと目が合った。「汝が我を使役」って、まさか——。
「いやいやいや、俺はサモナーじゃないし、今は俺自身が召喚獣みたいなもんなのに神獣の使役者になるなんて無理ーっ」
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