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波乱の結婚パーティー その4
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『召喚獣でも我の使役者にはなれるぞ。この世界を統べる神以外の者ならば良い』
「女神との直接契約はできないということですか」
そりゃまたどうして? とか聞いてもしょうがないか。そういうものだと言われればそれまでだ。
『その通り。我を創造した神がそのように決めた。
ああ、汝が思い浮かべている前任者の駄女神とは違うぞ。そのまた前任の神だ』
「そうですか。しかし俺と——というか誰かと契約するメリットが貴方にあるんですか? 使役者に命じられてあれこれやらされるのは面倒では?」
『一人と契約さえしていれば、中途半端な力を持つ者どもに召喚されずに済む。
召喚されても言いなりにはならぬが、しつこく何度も呼び出されるだけでも鬱陶しい』
うん、まあ、鬱陶しいだろうなぁ。
実はこうして対話してる間にも花婿とその取り巻きたちは俺をちまちま攻撃してたりする。鎧と盾と剣が自動的に攻撃を反射して弾いているけど。
花嫁とその弟君は、お互いを攻撃するのを一時休止したらしく、木の蔓や金属の鎖でフェンリルを縛り上げようと試みては失敗している。
「契約はいいですけど時間がない」
『契約は一瞬で済む』
「契約すると俺が消えると同時に貴方も消えますか?」
『魔力の残量次第だ』
「この人たちを国に送り届けるまで魔力を保たせられます?」
『容易いことだ』
「では契約を!」
情報の奔流。
永遠の一秒だの永劫の一瞬だのと表現すると大袈裟かつ詩的に過ぎるだろうか。
だけど俺の頭の中には数十枚分にわたる契約の書と何冊もの分厚い取扱説明書に相当する情報が叩き込まれたのだ。外部の時間は一秒も過ぎないうちに。
情報には世界の担当が駄女神になってからの神獣不遇の歴史も含まれていた。
特定の血族が召喚方法を秘匿する制度に変更されたため、使役者となるのに充分な潜在能力を持つ者たちに機会が与えられなくなった。
能力的に本来は神獣の召喚などできるはずのない人間が、駄女神が授けた神器の力を借りて、神獣を顕現させることだけはできるようになってしまった。
無理矢理召喚された神獣が命令に従わないとなると、蔓や鎖や紐で縛り付けようとしたり、全力で魅了をかけてみたり、明後日な方向の努力を続けていった。力技でどうにかできる程度にまで出力を上げる努力するならばまだしも、小手先の技術で何とかしようとしてもなぁ。相手を不愉快にさせるだけ。でも駄女神の神器のおかげで、かろうじて噛み殺されるのは免れていたようだ。
さらに追加情報として、本日の結婚パーティーの様子が映像として浮かぶ。
「盗んだ神器でフェンリルを召喚とは」
花嫁が少年を睨みつけている。今はもうボロボロになって見る影もないが、この時点では豪奢な衣装を着て、巨大な宝石の輝くティアラをつけている。横にいる花婿もまだ火傷とかしてないし、お綺麗な美男美女のカップルだったんだなぁ、まだこのときは。
少年も花嫁も香炉みたいな形のもの——多分あれが駄女神の神器とその複製——を両の手のひらに挟むようにして持っている。
「神器が偽物かどうかも見抜けない姉様は神獣を使役する資格はありません」
うん、そこの魅了の聖女そっくりの花嫁さんに資格がないというのは、結論としては正しいかもしれないけど、だからと言って君に使役者の資格があるかどうかは別問題だよね。
そしてフェンリルは青白い光に包まれ、雪か氷のような粒がキラキラと周囲に降り注ぐ。
「そんな……神獣の契約が成立してしまった……?」
花嫁とその弟、両方が絶望の表情になった。
「こちらの王子たちが国に帰るまで支援と、あちらにいる人たちに向けての説明をよろしく」
俺が消える直前にフェンリルは、必要な魔力を適当に引っこ抜いてくれた模様。
「女神との直接契約はできないということですか」
そりゃまたどうして? とか聞いてもしょうがないか。そういうものだと言われればそれまでだ。
『その通り。我を創造した神がそのように決めた。
ああ、汝が思い浮かべている前任者の駄女神とは違うぞ。そのまた前任の神だ』
「そうですか。しかし俺と——というか誰かと契約するメリットが貴方にあるんですか? 使役者に命じられてあれこれやらされるのは面倒では?」
『一人と契約さえしていれば、中途半端な力を持つ者どもに召喚されずに済む。
召喚されても言いなりにはならぬが、しつこく何度も呼び出されるだけでも鬱陶しい』
うん、まあ、鬱陶しいだろうなぁ。
実はこうして対話してる間にも花婿とその取り巻きたちは俺をちまちま攻撃してたりする。鎧と盾と剣が自動的に攻撃を反射して弾いているけど。
花嫁とその弟君は、お互いを攻撃するのを一時休止したらしく、木の蔓や金属の鎖でフェンリルを縛り上げようと試みては失敗している。
「契約はいいですけど時間がない」
『契約は一瞬で済む』
「契約すると俺が消えると同時に貴方も消えますか?」
『魔力の残量次第だ』
「この人たちを国に送り届けるまで魔力を保たせられます?」
『容易いことだ』
「では契約を!」
情報の奔流。
永遠の一秒だの永劫の一瞬だのと表現すると大袈裟かつ詩的に過ぎるだろうか。
だけど俺の頭の中には数十枚分にわたる契約の書と何冊もの分厚い取扱説明書に相当する情報が叩き込まれたのだ。外部の時間は一秒も過ぎないうちに。
情報には世界の担当が駄女神になってからの神獣不遇の歴史も含まれていた。
特定の血族が召喚方法を秘匿する制度に変更されたため、使役者となるのに充分な潜在能力を持つ者たちに機会が与えられなくなった。
能力的に本来は神獣の召喚などできるはずのない人間が、駄女神が授けた神器の力を借りて、神獣を顕現させることだけはできるようになってしまった。
無理矢理召喚された神獣が命令に従わないとなると、蔓や鎖や紐で縛り付けようとしたり、全力で魅了をかけてみたり、明後日な方向の努力を続けていった。力技でどうにかできる程度にまで出力を上げる努力するならばまだしも、小手先の技術で何とかしようとしてもなぁ。相手を不愉快にさせるだけ。でも駄女神の神器のおかげで、かろうじて噛み殺されるのは免れていたようだ。
さらに追加情報として、本日の結婚パーティーの様子が映像として浮かぶ。
「盗んだ神器でフェンリルを召喚とは」
花嫁が少年を睨みつけている。今はもうボロボロになって見る影もないが、この時点では豪奢な衣装を着て、巨大な宝石の輝くティアラをつけている。横にいる花婿もまだ火傷とかしてないし、お綺麗な美男美女のカップルだったんだなぁ、まだこのときは。
少年も花嫁も香炉みたいな形のもの——多分あれが駄女神の神器とその複製——を両の手のひらに挟むようにして持っている。
「神器が偽物かどうかも見抜けない姉様は神獣を使役する資格はありません」
うん、そこの魅了の聖女そっくりの花嫁さんに資格がないというのは、結論としては正しいかもしれないけど、だからと言って君に使役者の資格があるかどうかは別問題だよね。
そしてフェンリルは青白い光に包まれ、雪か氷のような粒がキラキラと周囲に降り注ぐ。
「そんな……神獣の契約が成立してしまった……?」
花嫁とその弟、両方が絶望の表情になった。
「こちらの王子たちが国に帰るまで支援と、あちらにいる人たちに向けての説明をよろしく」
俺が消える直前にフェンリルは、必要な魔力を適当に引っこ抜いてくれた模様。
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