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婚約破棄はパーティーで その5
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俺はこの世界に来てから殺した人間についてざっと思い起こしていた。
湖の怪物と戦った際には召喚者を三人殺した。
浄化の聖女が最初にカプセルを割ったあのときには怪物をトレインしていた男を殺した。
そう、そもそも俺は別に人を不殺の誓いを立てているわけではないのだ。
だが、殺さずに済んだ者たちの方がずっと多いとも言える。
移民の足止めをしていた者たちは風で吹っ飛ばしただけだったため死人なし。
前辺境伯のジジイは眠らせただけ。
魅了の聖女に操られていた人たちも、致命傷を与えない俺の努力が実を結んで、死人は出なかったと聞いている。魅了の聖女本人は魅了が跳ね返っただけで肉体的にはノーダメージ。
怪しい五人パーティー、ええと暁の狩人だっけか、あいつらも全員無事だ。いやまあ、ついさっきの魔物殲滅のどさくさで誰か死んでなければ、だけど。
そして俺とフェンリルが契約を結んだあの結婚パーティーでは、俺の鎧や盾や剣が反射した物理攻撃や魔法攻撃による死人は出なかったそうだ。再起不能になった者はいたみたいだが。
となると、もしも浄化の聖女が俺と出会う前の召喚者三人殺しについて知らなくて、出会いのときの怪物トレイン男の殺害をしっかりとは認識していなかったとしたら——。うん、俺を不殺主義みたく誤解する可能性もなくはない。結婚パーティーのときは火だるまになった魔法剣士の巻き添えで燃えた花婿に水をかけて助けたりしたし、その印象が強かったのかも……って、あれ?
——とにかく助かりました。花婿の焼死に我が国が関与したとか難癖をつけられ
ても困るので
そう言えばあのときカプセル割り王子はそんなことも言ってたな。確かあの結婚パーティーは王族の結婚を祝うもので、王族を死なせたら流石にまずかったと?
さて、死体になったこの男の方は、フェンリルと契約し損ねた少年の隣にいた奴で、いかにも身分が高そうな感じで。
「もしかして俺、やっちゃいました? この人って殺ったらまずいほど偉い人?」
「この聖国の第二王子だというぞ」とフェンリル。
俺はフェンリルとのやり取りを念話に切り替える。
『どうして第二王子がここに? 婚約破棄やらかすのは王太子のはずなのに。
そう、ゲームマスターからの情報では、王太子——女性なので王太女とも呼ばれる——が王配になる予定だった婚約者に婚約破棄を突き付けるという話でした。
俺が事前に教わった主要人物は、王太子の王女と、婚約者の公爵子息。そして彼の浮気相手の結界の聖女です。三人とも魔力容量が特大で、闇または光の属性持ちで、闇堕ちしたら魔王化するかもの人材です。
第二王子のことなんて聞いていませんし、王女より年下なら卒業記念パーティーの参加資格もないのでは。まあ結界の聖女も卒業生でもないのにパーティーに参加すると予言されてましたけど。浮気男の公爵子息の腕にぶら下がって』
『ゲームマスターが汝に見せた三人は、洞窟の祠だの我に女神を救出しろだの喚いていた奴ばらとは、また別であるな。だが、結界の聖女とやらはあの空間の裂け目と関係あるやもしれぬ。結界の聖女自体は古き神の時代から存在していたのであるが、駄女神が考えなしに能力強化したのは知っておる』
『空間操作系ですかね? そんなの危ない奴に与えたら本当に危ないだろうに』
『激しく同意である』
口頭よりもずっと高速に会話を進めながら、俺とフェンリルは三人が会場にいるかどうかを探す。
『うーん、どこかに避難済みなんでしょうか?』
『呼んでみるか?』
俺は頷き、フェンリルは叫ぶ。
「この場に結界の聖女はおるか?
おるのならば我の前に来い!」
湖の怪物と戦った際には召喚者を三人殺した。
浄化の聖女が最初にカプセルを割ったあのときには怪物をトレインしていた男を殺した。
そう、そもそも俺は別に人を不殺の誓いを立てているわけではないのだ。
だが、殺さずに済んだ者たちの方がずっと多いとも言える。
移民の足止めをしていた者たちは風で吹っ飛ばしただけだったため死人なし。
前辺境伯のジジイは眠らせただけ。
魅了の聖女に操られていた人たちも、致命傷を与えない俺の努力が実を結んで、死人は出なかったと聞いている。魅了の聖女本人は魅了が跳ね返っただけで肉体的にはノーダメージ。
怪しい五人パーティー、ええと暁の狩人だっけか、あいつらも全員無事だ。いやまあ、ついさっきの魔物殲滅のどさくさで誰か死んでなければ、だけど。
そして俺とフェンリルが契約を結んだあの結婚パーティーでは、俺の鎧や盾や剣が反射した物理攻撃や魔法攻撃による死人は出なかったそうだ。再起不能になった者はいたみたいだが。
となると、もしも浄化の聖女が俺と出会う前の召喚者三人殺しについて知らなくて、出会いのときの怪物トレイン男の殺害をしっかりとは認識していなかったとしたら——。うん、俺を不殺主義みたく誤解する可能性もなくはない。結婚パーティーのときは火だるまになった魔法剣士の巻き添えで燃えた花婿に水をかけて助けたりしたし、その印象が強かったのかも……って、あれ?
——とにかく助かりました。花婿の焼死に我が国が関与したとか難癖をつけられ
ても困るので
そう言えばあのときカプセル割り王子はそんなことも言ってたな。確かあの結婚パーティーは王族の結婚を祝うもので、王族を死なせたら流石にまずかったと?
さて、死体になったこの男の方は、フェンリルと契約し損ねた少年の隣にいた奴で、いかにも身分が高そうな感じで。
「もしかして俺、やっちゃいました? この人って殺ったらまずいほど偉い人?」
「この聖国の第二王子だというぞ」とフェンリル。
俺はフェンリルとのやり取りを念話に切り替える。
『どうして第二王子がここに? 婚約破棄やらかすのは王太子のはずなのに。
そう、ゲームマスターからの情報では、王太子——女性なので王太女とも呼ばれる——が王配になる予定だった婚約者に婚約破棄を突き付けるという話でした。
俺が事前に教わった主要人物は、王太子の王女と、婚約者の公爵子息。そして彼の浮気相手の結界の聖女です。三人とも魔力容量が特大で、闇または光の属性持ちで、闇堕ちしたら魔王化するかもの人材です。
第二王子のことなんて聞いていませんし、王女より年下なら卒業記念パーティーの参加資格もないのでは。まあ結界の聖女も卒業生でもないのにパーティーに参加すると予言されてましたけど。浮気男の公爵子息の腕にぶら下がって』
『ゲームマスターが汝に見せた三人は、洞窟の祠だの我に女神を救出しろだの喚いていた奴ばらとは、また別であるな。だが、結界の聖女とやらはあの空間の裂け目と関係あるやもしれぬ。結界の聖女自体は古き神の時代から存在していたのであるが、駄女神が考えなしに能力強化したのは知っておる』
『空間操作系ですかね? そんなの危ない奴に与えたら本当に危ないだろうに』
『激しく同意である』
口頭よりもずっと高速に会話を進めながら、俺とフェンリルは三人が会場にいるかどうかを探す。
『うーん、どこかに避難済みなんでしょうか?』
『呼んでみるか?』
俺は頷き、フェンリルは叫ぶ。
「この場に結界の聖女はおるか?
おるのならば我の前に来い!」
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