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火炙りになった元聖女
けたたましくドアをたたく音は地獄から死者が来た証
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その日、帰宅したリチャードはなぜか血まみれだった。
出血がひどいのか、足元も目線も定まっていない。
「ね、ねぇ、リチャード、どうしたの?」
咄嗟に彼の身体を支えると、生ぬるいベタッとした液体がまとわりついた。
「なっ……、なんでもない。キツネ狩りにあっただけだ」
苦しそうにベッドに倒れこむと、リチャードは何も言わなくなった。
嘘だ!
今まで聖女として、何千何万回と治療してきたからわかる。
これはキツネ狩りなんでつく怪我じゃない。
明らかに誰かに切りつけられた跡だ。
「そっか……」
リチャードが私に話す気がないなら今はそれでもいい。
原因を特定したら怪我が治るわけじゃない。
私が今すべきことは、リチャードを治すことだ。
ただ、できるかしら……。
傷ついた彼を目の前にいたら途端に怖くなった。
今まで瀕死の兵士を治したことは何度もあったが、力を取り戻してからは初めてだ。
それに、もし私が失敗したらリチャードは死んでしまう。
私が悠長に考えてるうちに、シーツははみるみる真っ赤に染まっていく。
「やらなきゃだめよ……」
私は覚悟を決め、そっと傷口に手を当てた。
致命的な傷からひとつ、また一つと治していく。
そのたびにリチャードの苦しそうな顔が和らいでいくのがわかる。
「よかった……、これでなんとかなりそうね」
「あれ、俺なんで……」
痛みが引いて目が覚めたのか、リチャードが急に動き出そうとしたので、無理矢理寝かしつける。
「まだ動いちゃダメ!」
「リチャードすごい怪我だったのよ」
「そうだ! 早く逃げろフローレンス! ここはやばい!」
ふと我に返ったかのように叫ぶリチャードをさらに強く押さえる。
どういうこと?
急に逃げろだなんて。
私が困惑していると、けたたましくドアを叩く音が聞こえた。
◇
「誰ですか!」
こんな乱暴にドアを叩くなんてただごとじゃない。
もしかしたらリチャードを追ってきてのかもしれない。
私が声を上げるとさらに乱暴にドアを叩いてくる。
まるで、部屋が揺れているかのようだ。
「フローレンスだな! 貴様がいるのは分かっている! 開けろ!」
リチャードを追って来たのではないの?
それよりも、なぜ私だと分かったの?
「ねぇリチャー――」
いや、今は彼に頼れない。
私がどうにかしないと。
「こじ開けろ!」
その掛け声と主に、屈強な兵士たちがいきなり部屋になだれ込んできた。
「誰ですか! あなたたちは!」
「王宮保安省です。ついて来ていただけますね?」
目深にかぶった帽子から、氷のような目が覗く。
なんで私が!
王宮保安省なんて、王政に悪影響を与える者を捕まえるところでしょ?
驚きのあまり動けないでいると、たちまち拘束されてしまった。
「離して! 私は何もしてない! 誤解よ!」
彼らに連れて行かれたらマズい。
捕らえられたものは全員処刑されるという噂だ。
「わざと加護を失ったふりして王宮から逃げたのを忘れたのか? 魔女さんよぉ」
ほんとに失ったと思っていたのよ!
それに私は魔女なんかじゃない!
「聖女が加護を失った例は、今までこの国で確認されていない。仮に何かの偶然で加護を失ったとしよう。また偶然でそれを取り戻すか? 俺は偶然を1度しか信じない、2度起こったということは何らかの必然があるはずだ。身辺調査でほぼなにも上がってこない以上、貴様が魔術を使って意図的に加護を隠蔽したとしか考えられない」
違う……。
本当に偶然が2回重なったのよ。
なんて言う気力はもう私に無かった。
「連れていけ!」
「はっ! 中尉殿、寝ている男はどうしますか?」
先ほどの男はリチャードを一瞥すると冷たく命じた。
「女だけでいい。あの血の海だ、どうせ死んでるだろ」
「了解しました!」
「待って、私をどこに連れて行く気なの?」
「貴女は黒の広場にて裁判を受けてもらいます」
私は口を塞がれ、黒の広場まで連れていかれた。
出血がひどいのか、足元も目線も定まっていない。
「ね、ねぇ、リチャード、どうしたの?」
咄嗟に彼の身体を支えると、生ぬるいベタッとした液体がまとわりついた。
「なっ……、なんでもない。キツネ狩りにあっただけだ」
苦しそうにベッドに倒れこむと、リチャードは何も言わなくなった。
嘘だ!
今まで聖女として、何千何万回と治療してきたからわかる。
これはキツネ狩りなんでつく怪我じゃない。
明らかに誰かに切りつけられた跡だ。
「そっか……」
リチャードが私に話す気がないなら今はそれでもいい。
原因を特定したら怪我が治るわけじゃない。
私が今すべきことは、リチャードを治すことだ。
ただ、できるかしら……。
傷ついた彼を目の前にいたら途端に怖くなった。
今まで瀕死の兵士を治したことは何度もあったが、力を取り戻してからは初めてだ。
それに、もし私が失敗したらリチャードは死んでしまう。
私が悠長に考えてるうちに、シーツははみるみる真っ赤に染まっていく。
「やらなきゃだめよ……」
私は覚悟を決め、そっと傷口に手を当てた。
致命的な傷からひとつ、また一つと治していく。
そのたびにリチャードの苦しそうな顔が和らいでいくのがわかる。
「よかった……、これでなんとかなりそうね」
「あれ、俺なんで……」
痛みが引いて目が覚めたのか、リチャードが急に動き出そうとしたので、無理矢理寝かしつける。
「まだ動いちゃダメ!」
「リチャードすごい怪我だったのよ」
「そうだ! 早く逃げろフローレンス! ここはやばい!」
ふと我に返ったかのように叫ぶリチャードをさらに強く押さえる。
どういうこと?
急に逃げろだなんて。
私が困惑していると、けたたましくドアを叩く音が聞こえた。
◇
「誰ですか!」
こんな乱暴にドアを叩くなんてただごとじゃない。
もしかしたらリチャードを追ってきてのかもしれない。
私が声を上げるとさらに乱暴にドアを叩いてくる。
まるで、部屋が揺れているかのようだ。
「フローレンスだな! 貴様がいるのは分かっている! 開けろ!」
リチャードを追って来たのではないの?
それよりも、なぜ私だと分かったの?
「ねぇリチャー――」
いや、今は彼に頼れない。
私がどうにかしないと。
「こじ開けろ!」
その掛け声と主に、屈強な兵士たちがいきなり部屋になだれ込んできた。
「誰ですか! あなたたちは!」
「王宮保安省です。ついて来ていただけますね?」
目深にかぶった帽子から、氷のような目が覗く。
なんで私が!
王宮保安省なんて、王政に悪影響を与える者を捕まえるところでしょ?
驚きのあまり動けないでいると、たちまち拘束されてしまった。
「離して! 私は何もしてない! 誤解よ!」
彼らに連れて行かれたらマズい。
捕らえられたものは全員処刑されるという噂だ。
「わざと加護を失ったふりして王宮から逃げたのを忘れたのか? 魔女さんよぉ」
ほんとに失ったと思っていたのよ!
それに私は魔女なんかじゃない!
「聖女が加護を失った例は、今までこの国で確認されていない。仮に何かの偶然で加護を失ったとしよう。また偶然でそれを取り戻すか? 俺は偶然を1度しか信じない、2度起こったということは何らかの必然があるはずだ。身辺調査でほぼなにも上がってこない以上、貴様が魔術を使って意図的に加護を隠蔽したとしか考えられない」
違う……。
本当に偶然が2回重なったのよ。
なんて言う気力はもう私に無かった。
「連れていけ!」
「はっ! 中尉殿、寝ている男はどうしますか?」
先ほどの男はリチャードを一瞥すると冷たく命じた。
「女だけでいい。あの血の海だ、どうせ死んでるだろ」
「了解しました!」
「待って、私をどこに連れて行く気なの?」
「貴女は黒の広場にて裁判を受けてもらいます」
私は口を塞がれ、黒の広場まで連れていかれた。
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