吸血鬼の血に目覚めた悪役令嬢は、別の世界の扉を開いて変態聖女にキスをする。

タヌオー

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第1章

6 侯爵令嬢は服を着替える

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クレアティーノ王国の王都からエスパーダ領の屋敷までは、馬車で数日の距離だ。
私とローザが馬車に乗り込むと、扉を閉める前にアルミラが言った。

「まずはその汚い格好をどうにかしろ。そこに上着から下着まで着替えを用意している」
「え!こんな、馬車の中で着替えろっていうの!?」
「外からは何も見えん。貴様たち女二人なら何の問題もないだろう」

アルミラはそれだけ言って馬車の扉を閉めた。
確かに私の服は囚人が着る粗末なもので血だらけでもあったが、ローザが顔を紅潮させて私をじろじろ見ていて、なんだかとっても嫌だ。

「あ、あっち向いてなさい!」

私がそう言うとローザは「は、はい…」と言って顔を背けたので、私は汚れた服と何日も替えていなかった下着を脱ぐ。うう…。確かに馬車は窓にも黒いカーテンがかかっていて外からは何も見えないけど、さっきからローザが「はあ…はあ…」と息を荒くしているし、何よりこうしてローザと二人きりで裸になると、私の小さな胸やお尻がとても貧相なものに感じられて悲しいし恥ずかしい。
身体を捻ってカーテンのほうを向いているローザの、タイトな純白のドレスに包まれた身体はスラリと手足が長いくせに胸もお尻も大きくてすごく女性的だ。
早く着替えてしまおうと用意されていた箱から慌ただしく下着を取り出した私に、ローザが言う。

「あの…リリアス様」
「な、何よ!」
「お身体は、汚れていませんか…?」

そう言われて見れば、私は牢獄の中で何日もお風呂に入っていなかったので身体中が汗でベトベトだったし泥や埃で汚れてもいるし、正直、変な匂いもする。

「も、もしよろしければ、わたくしの聖術で浄化して差し上げますわ…」
「う………」

確かに、そうしてもらいたいところだったが、裸を見られるのは…ちょっと………。

「わたくし、決してお身体には触れませんので…」
「わ、わかったわよ…じゃあ、あと目もつぶってやってよね」
「それは、無理ですわよ…見ていなかったらどうしても触ってしまいますわ」
「えぇ…?み、見られたくないわ…」
「どうしてですの…?女の子同士なんですから…ね……?」
「いや、なんか、もうその言い方が、イヤ」
「大丈夫ですから…変なことはしませんから…ね?」
「うう…わかったわよ………ぜ、絶対、触らないでよ?」

私がそう言い終わるかどうかのところでローザは素早くこちらを振り向いた。私は反射的に胸と腰のあたりを両手で隠す。
ローザは手のひらから暖かい光を放って私の腕や肩、首筋を照らしていく。照らされた肌は汚れがシュワアァァッと蒸発していくようにキレイになっていく。
暖かい光が私の胸元を照らす。

「腕をどけてくださいますか…?」
「え…いや…ここはそんなに汚れてないっていうか…」
「恥ずかしがらないでください…逆にいやらしい感じになってしまいますわよ?」

う…まあ、確かに、そうか…。

私は観念して腕をどける。ローザの手のひらから放たれる光が、私の小ぶりな胸を照らしていく。なんか、やっぱりローザの息が荒いように思えて気になって仕方ない。

「ちょっと、じろじろ見ないでよ…早くやって」
「もう終わりますわ…ほら、腕を上げてくださいまし」
「えっ?ここも?」
「当たり前じゃありませんの」

まあ、脇の下は、そうよね…。
腕を上げて私はローザの光を受け入れる。なんか、触られていないのにくすぐったい。
脇の下が終わって光は下に降りていく。身をよじる私の脇腹から腰、おなか、その下…え!いや、そこは!

「リリアス様、逃げないでくださいまし」
「だ、だってそこは…!」
「一番キレイにしなければいけないところですわ」
「そっ、そうだけど!」

だけどそうは言ってもいくら女の子同士だからって、そこはさすがにちょっと。
でも確かにキレイにしなきゃいけないし、だけどやっぱり見られたくない。一番見られたくない。ああ、どうしよう。見られたくないし触られたくないし。そうだ!

「ローザ、やっぱり目をつぶって!」
「え…でも」
「いいから!」

ローザが目をつぶったのを確認すると、私はローザの手首を掴み、手のひらから出る光を自分で自分にあててキレイにしていった。ああもう、最初からこうすればよかった。

「そのまま光を出しててね!絶対に見ないでよ!」
「は、はい…」

私はそのあとはサクサクと手際よく、自分の身体をキレイにしていく。後ろを向いてお尻をやる時は本当にローザが目を開けていないか何度も確認したけど。
身体中の浄化が終わると、私は「おしまい!ありがと!」と言って下着を履いて服に袖を通した。

用意されていた服は男装のような黒いジャケットに黒いベスト、たっぷりとしたフリルのついたシャツ、ピッタリした黒いズボンだったけど、袖や襟など細かいところの刺繍やレースがとっても可愛かったので私は少しごきげんだった。

着替え終わってブーツを履いている私に、ローザはため息をついて言った。

「ああ、あともう少しでしたのに…」

やっぱりこいつ、最初から私の、見るつもりだったのね…!
変態!


******


着替え終わって馬車に揺られながら、私が外の景色を見るためにカーテンを開けると、御者台のアルミラから声がかかった。

「閉めておけ。陽光は吸血鬼ヴァンパイアの身体を蝕むぞ」

連絡窓も閉まっているのに、どうして御者台からの声がこんなにはっきり聞こえるのだろうと思ったが、これもきっと吸血鬼ヴァンパイアの力なのだとすぐに納得した。
ただ私は、アルミラの言葉に首をかしげた。

「でも、あなただって御者台で日光を浴びてるじゃない」
「アタシは特殊な魔術で一時的に身を守っているだけだ。貴様はそうではないだろう」

私は確かにそんな魔術は使えないし存在も知らない。

「でも私、さっきの広場でもそうだったけど日光なんか何でもないわよ?」

アルミラは焦ったように御者台から振り返り、連絡窓を開けて私をまじまじと見た。

「…本当に、何でもないのか?」
「え、ええ…真夏に長時間なら普通に日焼けくらいするかもしれないけど…」

アルミラが目を丸くする。

「そうか…そうか………」

私はなんだか居心地の悪い感じがしてたじろいでしまう。

「な、何よ…」
「いや、素晴らしいことだ。困ったことがあれば何でも言え」

何なのよ一体。
さっきまでぶっきらぼうだったのに急に優しいことを言って。
訝しがる私に、アルミラはニヤリと微笑った。

「まあ、腹が減っても食料持参のようだし、心配はないがな」

そう言ってアルミラが連絡窓を閉めると、私の隣りでローザが身体をビクッと震わせた。

食料。

私はゆっくりと、ローザのほうに顔を向けた。
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