吸血鬼の血に目覚めた悪役令嬢は、別の世界の扉を開いて変態聖女にキスをする。

タヌオー

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第1章

27 侯爵令嬢は我に返る

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ああ、もう。

そもそも私、なんでこんなところまで来ちゃったのかしら。

アルミラとともに落とされた穴蔵のような真っ暗な空間の中で私は考える。

あのハルバラムとかいう奴に会ったところで、どうせ何も教えてくれないだろうなとか私を帰してくれるつもりはないだろうなとか、薄々わかってたことじゃない。

なのになんで私、わざわざこんなところまで来ちゃったわけ?

お父様たちを探すため?
私が人間に戻る方法を探すため?

もちろんそうだけど、お父様たちは自分たちで旅立ったんだから待ってればそのうち帰ってくるはずなんだし、もしずっと帰ってこなければその時に探しに行けばよかったわけだし、私が人間に戻る方法を探すのだって、お父様たちが帰ってきてから探しに行けばよかったじゃない。いえ、もっと言えば、いろいろ落ち着いたところで誰かに探しに行ってもらえばよかったじゃない。
でもまあ、私があの家に居続けたらきっと聖都法皇庁サンクティオからの追手とかクレアティーノ王国軍とかが来たわけだけど…。でもそれもイザベラやアルフォンスやヴァルゲスに守ってもらえば何とかなったんじゃないかしら。
甘えた考えのようだけど、そもそも私、甘ったれの侯爵令嬢なんだし。

穴蔵で立ち上がったアルミラが「リリアスよ」と話しかけるが、私は「ちょっと待ってて今考え中」とそれを遮る。

なんでだろう?なんでこんなところまで来ちゃったの?

要するに、たぶん、気分?
なんかおかしな気分になっていたのだと思う。いつから?

たぶん最初から。処刑された時、いえ、たぶん婚約破棄されたくらいから。

でもよくよく考えてみればそれも当然よね。

これまでの人生の大半をかけて必死に頑張ってきたのにいきなり婚約破棄されて処刑されて首ちょん切られて、それでも吸血鬼ヴァンパイアなんかになってて死ななくて、なぜかローザが「肉奴隷ですわ」とか言い出して、さらに突然あらわれた怪しい女騎士のアルミラも一緒に故郷へ旅立つことになってしかもその道中ず~っとず~っと眠れなくて、竜やら祓魔師エクソシストやらに襲われて、それでもまだ眠れなくて、やっと家に着いてやっと眠れた~!と思ったら今度はなんか「世界は7つある」とか言われて。

おかしな気分にもなるわよね。
吸血鬼ヴァンパイアの血のせいなのか何なのか、生理前後よりさらに情緒不安定だし最近。

だけど思い出すとちょっと恥ずかしいわ。

『ハルバラム、私があなたに聞きたいことは4つよ』とか言って。

答えない。カッコつけたところで答えない。

まあ正直、今でも吸血鬼ヴァンパイアにした理由くらいは言ってもよかったじゃないと思うけど、あの男のあの感じ、徹底的に自分のことにしか興味ない身勝手そのものみたいなあの感じ、あれは何ひとつ答えないわね。

私を吸血鬼ヴァンパイアにした男は身勝手の権化。
ということは私を吸血鬼ヴァンパイアにした理由も気まぐれなのか何なのか、とにかくひどく身勝手なものだったはず。
つまり私が吸血鬼ヴァンパイアにされた理由と人間に戻る方法はきっと関連しない。

それがわかっただけでも収穫ね。

とはいえ私やっぱり完全におかしな気分になってた。
まるで冒険小説の主人公になったみたいに。

ダメね。少なくともちょっと無謀すぎた気がするわ。

吸血鬼ヴァンパイアと呼ばれようが雷竜王と呼ばれようが、あくまでも私はもともと侯爵家に生まれただけの普通の女の子なんだから。

それでこんな来なくてもよかったはずの場所にわざわざ来て謎の穴蔵みたいなところに落とされてしまった。落とされたというか、足元の黒い茨に全身が包まれたと思ったらここにいたっていう感じ。

どうしよ。

まあ決まっているわ。とにかくここを出なくちゃね。
この穴蔵を、この城を、この死者の世界を早く出て、ローザと一緒に元の世界へ帰る。

お父様たちの行方や私が人間に戻る方法は、いったん置いておこう。
ちょっと私には荷が重すぎるもの。
あ、ライラっていう娘の居場所も、うん、ごめん。ちょっと置かせて。

よし。

私は立ち上がってアルミラに「行くわよ!」と宣言する。
アルミラはそれを聞いて「ふふ、なかなか逞しくなってきたじゃないか」と言う。

そうよ!私は逞しい、え?

そうかしら?

ただ帰りたいだけなんだけど。


******


穴蔵の奥は長い一本道の通路になっていた。

アルミラは一体何を勘違いしたのか、意気揚々と私を通路の奥へ奥へと案内し、「ここは古くから我ら吸血鬼ヴァンパイアが闇騎士になるための試練の場として使われていた場所でな」なんて説明を始めた。

「ちょっと待ってアルミラ」
「ん?」
「私、早く帰りたいんだけど」
「んん?」
「だから、早くこんなところから出たいのよ」

アルミラは首をひねって困惑した表情を見せた。

「出られんぞ?」
「は?」
「この地下迷宮からはそう簡単には出られんと言っているのだ」
「何よそれ、めんどくさいわね!じゃあ一体どうしたら出られるのよ!」

アルミラは遠い目をして言う。

「今まで数百という吸血鬼ヴァンパイアがこの地下迷宮に挑戦したが、消滅することなく生還したのは過去にアタシも含めて9人だけだ」
「…で、その9人はどうやって出てきたのよ」
「地下迷宮の第6層を突破すれば城内に戻ることができる」
「えぇ~、めんどくさ。もっとパッと出られる方法ないわけ?」
「…ない」
「そこをなんとか」
「…なんともならん」
「ケチ」
「そ、そういう問題ではないだろう!」

私とアルミラがしばらくの間「ケチ」「アタシはケチじゃない!」「じゃあズル」「ズルでもない!」などと言い合いながら暗くてジメジメした迷路を歩いていくと、いつの間にか大きな鉄の扉の前に辿り着いた。

「この先に第1層の守護者がいるぞ。準備はいいな?」
「いや良くないわよ、何よ準備って」
「戦闘準備に決まっているだろう」
「嫌よ私は。アルミラが戦ってよね」
「馬鹿を言うな。貴様の試練だぞ」
「なんで私が試練なんか受けなきゃいけないのよ」
「つべこべ言うな。早くここを出たいのだろう」
「…もう、だいたい何なのよ守護者って」

アルミラは腕組みをして真剣な顔で答えた。

「地獄の番犬、ケルベロスだ」
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