王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。

タヌオー

文字の大きさ
51 / 100

051 女王陛下の病

しおりを挟む
エルフの女王の侍女と思われるミミアに導かれ、俺たちは2階の大きな部屋に通された。

そのだだっ広い部屋にはほとんど家具はなく、複雑な模様の絨毯がずっと奥まで続いている。
その先の窓際には大きなベッド。
モモとネネがそこに向かって駆けていく。

「おばあちゃん!お薬を持ってきたよ!」

俺たちは少し離れて、ミミアの背後からその様子を見つめている。

ベッドから緩慢な動きでエルフの女性が身体を起こす。
あれがエルフの女王陛下であり、モモとネネのおばあちゃんなのだろう。
1000歳を超える年齢だと聞いていたが、とてもそうは見えない。
人間でいえば40歳を少し過ぎたくらいの感じだ。
口元や目元に少し小皺は見られるものの、切れ長の目の長いまつ毛を伏せ、穏やかな気品を漂わせている。
ベッドの向こうの窓からは陽射しが後光のように差し込んでいるのもまた、その高貴な雰囲気をさらに際立たせている。

「…ありがとう。モモ、ネネ。もっと近くへおいで。最近少し目が見えにくいの」

そう言ってエルフの女王は、ベッドに身を乗り出したモモとネネの手をとって微笑んだ。
しかし、女王の手には遠目から見ても力がなく、ふるふると震えている。

「この満月貝の貝殻を粉にして飲めば、おばあちゃんの月光病もきっと治るからね!」

女王はその言葉にほんの少し息を呑んだ。

「…まあ、一体どうやってそんなものを。大変だったでしょう」

モモとネネは大きくかぶりを振る。

「早く、早くよくなってね…!」

女王はモモとネネ、それぞれの頭を優しく撫でて微笑んだ。


…………………………………………


エルフの女王との謁見を終えた俺たちは、再びミミアの案内によって今度は1階の大食堂へと通された。

そこでは女王の娘、モモとネネのお母さんであるエルフが出迎えてくれた。
見た目は人間でいえば30代前半くらいだろうか。
女王とそれほど年が離れているとは思えないが、そこは寿命の長いエルフ、それでもおそらく数百歳は離れているのだろう。

母の姿を見るなり、モモとネネが目に涙を溜めて抱きついた。

「お母さん!!!」

母は二人の娘を抱きとめ、両手でそれぞれの頭を撫でた。

「モモ、ネネ…よく戻ったわね。急に出ていってしまって心配したのよ…」

懐かしむようにしばらく娘たちと抱き合うと、母は俺たちに向き直った。

「皆様がモモとネネを助けてくださったのですね。私はエルフの女王リリアンの娘、ララリルと申します」

ララリルはそう言って俺たちに丁寧にお辞儀した。
その所作には一部の乱れもなく、王族ならではの気高さを漂わせていた。

それから俺たちは食堂のテーブルに促され、しばらくすると給仕係と思われるエルフたちによって食事が運ばれてきた。
久しぶりの文化的な食事。ありがたい。

みんなで食事を堪能していると湯気の上がるスープをひとさじ飲んでから、レミーが顔を上げて質問した。

「ところで月光病って、どんな病気なんですか?」

おばあちゃんに薬を渡し、母にも会うことができたことで少し安心した様子のモモとネネのうち、モモが話し始めた。

「私たちエルフには定期的な月光浴が必要なんです。といっても月に1回くらいでいいんですけど。それでも、月のエネルギーをきちんと取り入れないと身体が弱って死んでしまう。それがエルフなんです」

ということは我が家に住むエルフのシシリーも、時々月光浴をしていたのだろうか。
シシリーはテーブルの上に出した拳をキュッと握っている。

モモに続いて、ネネが説明を追加する。

「ですが、どんなに月光浴をしても月のエネルギーが身体に取り込まれなくなってしまうのが、月光病なんです。今までエルフの間で不治の病と言われてきましたが、私たちが20年間、外の世界を旅してエルフに関する様々な文献を漁ったり人間の吟遊詩人の歌に残された伝承の裏付けを探したり、とにかくエルフの里にはない情報を探し回って、とうとう見つけたのがこの満月貝なんです」

ネネの手のひらには金色の貝が乗せられている。
たくさん持ってきた満月貝の一部は粉にされ、すでに女王陛下に処方されているそうだ。

「この満月貝に宿る大量の月エネルギーを取り入れれば、きっと月光病はよくなるはずです」

シェリルがモモとネネの説明を受けて確認する。

「では、あなたたちの旅はこれで終わりということね。これからはここに住むの?」

モモとネネは顔を見合わせてから笑顔を見せる。

「はい!ここでお母さんと一緒に、おばあちゃんが元気になるのを待ちたいと思います」

シェリルはそれを聞いて「よかったわね」と優しく微笑んだ。
モモとネネに挟まれて座るララリルも頷いて、モモ、それからネネの頭を撫でて微笑んだ。

しばしの沈黙のあと、俺たちの様子を大食堂の入り口で見ていたミミアさんから冷徹な言葉が発せられた。

「しかし…陛下のご体調が戻ることはないだろう」

レミーがスープをすくっていた匙を置いてミミアのほうを振り返って質問する。

「それはもう、月光病は治療不可能な末期まで来ているということですか?」

ミミアが首を左右に振る。

「そうではない。月光病はお前たちのおかげで治るはずだ。本当にその満月貝とやらに大量の月エネルギーがあるのならな。ただ、現在の女王陛下はもうひとつの問題にお身体を蝕まれているのだ。その問題が発生したのはモモとネネ、お前たちが出ていったあとの話だ」

シェリルがスープを一口飲んでから質問する。

「その問題って?」

ミミアが眉間に皺を寄せて苦々しそうに声を振り絞る。

「ダークエルフだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...