冷たい僕と暖かい君

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冷たい僕と暖かい君

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 冬。
僕と幼なじみである結衣はいつもどうり遊んでいた。
「ひぇ~。冷たいよ~。」
どっちが大きい雪だるまを作れるかの
勝負をしていた。
「なんで雪ってこんなに冷たいんだよ。」
「そんなの私は知らないわよ。
 雪だから冷たいってだけよ。」
「あーあ。ほんとに冷たい。」
僕の手は真っ赤になっていた。
「なんで手袋つけてないのよ。」
「雪は冷たくないと思ってた。」
「冷たいに決まってるじゃない。」
はぁ~。とため息をつく幼なじみ。
「ほら。ここに入れなよ。」
結衣は手袋を少し広げる。
「恩に着るよ。」
僕は手袋の中で幼なじみと手を繋ぐ。
「ほんとに冷たいじゃない。」
「結衣は暖かいな~。」
「当たり前よ。手袋をつけてるんだから。
 翔太が冷たすぎるだけよ。」
「そんなもんかね~。」
そうして雪だるまのことを忘れ、
2人で手を繋ぎながら一緒に帰った。

 そして、雪が溶ける季節、春が来た。
僕は冷え性であり、春でも少し手は冷たい。
そして、結衣とはなかなか喋らない。
学校が違うとこだから。
だけど、クラスの友達といるよりも
結衣と一緒にいる方が楽しい。
「はぁ~。また遊びたいな~。」
ボソッとつぶやく。
僕の手はまだ冷たい。いや、冷たすぎる。
僕は僕の異変に気づいた。
昨年に比べて手が冷たすぎる。
そして、心臓が締め付けられる痛みが発生し
僕は気絶していた。

 僕が目を覚ました時には
見知らぬ天井が広がっていた。
「ここはどこ。」
「目を覚ましたのね。」
お父さんとお母さんが喜んでいる。
なんで目を開けるだけでそんなに喜ぶんだよ。
「どうしたの?お母さん。」
「急に翔太が倒れたって聞くから、驚いたのよ。」
医者が少し顔色が悪く病室に来た。

 俺とお母さんそしてお父さんが医者の話を聞いた。
そして、医者から言われたひとつの言葉。
難しい話だったからよくわからなかったが
ここの言葉だけはわかった。
「お子さんは肺がんです。それもステージ4の。」
俺もお母さんもお父さんも全員が頭を真っ白にした。
「余命も3ヶ月もつかどうか。」

 僕は病室でボーッとしていた。
お母さんとお父さんはジュースを買いに出ていった。
医者が言うにはもう歩けるかどうからしい。
確かに。さっきも部屋の移動はお母さんに
肩を貸してもらっていた。
「どうして。どうしてなんだよ。」
お母さん達は僕の好きなコーラを買ってきてくれた。
僕はコーラを飲むが吐き気がした。
やはりダメか。そして、水を貰う。
本格的に自分の体が壊れているのだと気づいた。

 病室でスマホをつついていると、
「また今度遊ぼうよ。」と
結衣からのLINEがきた。
お母さん達には結衣には言わないでくれ。と
伝えている。こんな姿恥ずかしいから。
「ちょっと予定があるから少し先になるよ。」
「わかった。また連絡ちょうだい。」
僕は最後に結衣と遊びたかった。
そして、リハビリをする。
もう一度君と会うために。もう一度遊ぶために。
1ヶ月半くらいたった頃。
何とか歩くことはできるようになったが
もう体は動きにくくなり、
1時間おきに点滴を打たないといけないため
外出許可は下りなかった。

「ごめん。結衣。遊びに行けないや。」
「あら。そうなの?わかったわ。
 またLINEするわね。」
「うん。わかった。」
僕はこの慣れた病室でスマホをつつく。
何もすることがない。いや何も出来ない。
僕の体は僕が1番わかる。
もう僕に明日は来ないんだろう。と。

 その日の夜。
僕はもう目を開けるのもしんどくなった。
もうだめだ。僕はゆっくりと目をつぶる。
僕の手は温かさを持っていなかった。
なにか外が少し騒がしい気がする。
けどもう気にする余裕もなかった。
そんな時、扉の開く音。
誰が入ってきたのだろうか。
そんな時、僕の手に久しぶりの温かさを感じた。
「なんで教えてくれなかったのよ。」
結衣かな。この声は。泣いているのかな。
僕は何も反応することが出来ないが、
僕はもう残り少ない力を使い、手を握り返す。
「なんでなのよ。なんで翔太が...。」
ごめんな。僕は心の中でそうつぶやく。
「翔太。聞こえてるの?」
結衣の握る力が強くなる。
僕は必死に握り返すが、力が入らない。
「ねぇ。翔太。聞こえてるかは知らないけど、
 君に最後に言うね。」
結衣は息を飲む。
「翔太。君のことが好きだよ。」
僕は聞くことしか出来ない。
もう何も反応することが出来ない。
視覚の情報も嗅覚の情報も全てが無くなった。
真っ暗な世界。
だけど、僕は最後に君からの告白が聞こえた。

 私は伝えることが出来たのかな。
君は最後まで聞いてくれたのかな。
もう翔太に生気を感じられなかった。
ほんとになんでなのよ。
なんで翔太が死ぬのよ。
最後まで私の話を聞いてないと、
私がそっちに行った時に怒るからね。
私はその冷え切った君の手を握り続けた。


ーーーーー報告ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ほっこり・じんわり賞に
「私はあなたのことを決して忘れない」
「私はあなたの事をこの世界の誰よりも愛してます」
「またここで会う日まで~春先、君を想う~」の
3作品をエントリーしています!!
ぜひ、見ていただけたら幸いです。
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