襲われたい令嬢と紳士になりたい婚約者

壱真みやび

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32. *学院オリエンテーション①   エルミナ視点

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「よろしいですか、みなさん。建国祭も終わり、いよいよ最高学年によるオリエンテーションが行われます。各種目の担当教官から、今日の終業までに選抜メンバーには声が掛かります。とても名誉なことですから、選ばれた方は鋭意努力し当日を迎えてください」



最高学年――私たちの学年で行われる朝のホームルームで先生はそう言った。

一体何の話をしているのかわからなかったけれど、私以外の生徒を見ると意気込んでいるような人や、戸惑っている人、自分には関係ないといった反応の人など様々だった。
その中で理解すらしていないのは自分だけだとわかってしまって、疑問をその場で口に出すことはできなかった。


***


「あぁ、あれね。いわゆる入学説明会よ」

朝の先生の話がなんだったのか聞けないまま、今日一日の授業が終わった。
結局私には『選抜メンバー』として声が掛かることはなかった。
他の人の耳がないところでイブに説明を求めて、今に至る。

「毎年、建国祭が終わった頃に来年度の新入生とその親を対象にした説明会が開かれるんだよね。説明会自体は全部先生たちがやってくれるから、普通の生徒は関係ないんだけど。毎年、最高学年から選ばれた何人かが種目を実演するみたいよ。『この学院ではこんなことができるようになります~』みたいな?」

「その選抜メンバーだったのね」
「親も子どもも興味持ってくれる上に、学院としても一般的な学校との差をアピールできるって毎年力入れてるみたい。種目はその年の生徒の出来によって違うみたいだけど…今年は剣術、馬術、ダンスだって聞いたわ」



さすがイブ。
同じように一日を過ごしているというのに情報量が違う。いつそんな情報を仕入れたんだろう。

「イブは?出るの?」
「あたし?ないない!だいたい見に来るのって貴族が多いから、庶民のあたしは対象外。エルも今年入ったばかりだから対象外でしょ」

それが当然とばかりにイブは笑うけれど。優秀なことに身分なんて関係ないのに。
なんだかモヤモヤとしてしまう。

「ね、そんなことより!練習見に行かない!?」
「え?見に行っていいの?」

私の疑問にイブがニヤリと笑って手招きする。

「オリエンテーション本番はあたしたちは休日だし、学校棟に立入禁止なんだけど。これから二週間の練習期間は見学可!しかもそれぞれ種目ごとに専用部屋が開放されるんだって。あたし、ダンス見に行きたくて!!」

「行きたい!でもイブ、ダンスに興味あったの?」
「ない!!でも今の流行を知れるいいチャンスじゃない!ね、行こ!!」



そうして私たちは今夜顔を出したダンスのレッスン室で、これから二週間ダンス漬けの日々を過ごすことになる。
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