55 / 58
東両国
東両国 ―捌―
しおりを挟む
東両国で出会ったあの男のことを気にしつつも、甚吉はいつものように起き、見世物小屋の掃除や支度をし、飯を食っていた。
朝、いつものせっかちな魚売りからマル公の餌を受け取っていると、新兵衛座の舞台の方に見慣れない――いや、昨日見た縞のお仕着せが見えた。甚吉はハッとして魚の入った盥を置くと、慌てて真砂太夫の方に駆け寄った。
「ま、真砂太夫ッ、そのお人は昨日の――もう起きても平気なんで?」
振り返った男の顔は腫れていた。決して男ぶりは悪くなかったはずが、昨日よりさらに腫れて人相が変わってしまっている。
しかし、男はそんな顔にも関わらずにこやかに立っていた。
「おはよう、甚吉」
真砂太夫が輝かしい微笑を向けてくれたものの、今日の甚吉はそれに酔えたものではなかった。真砂太夫は男に向けて言う。
「拾吉さん、この子が傷だらけのあんたを見つけてきたんだよ」
名前を思い出したのか、真砂太夫はこの男を拾吉と呼んだ。
「名前、思い出せたんで? 拾吉さんてぇ名だったんですか」
すると、真砂太夫はコロコロと笑った。
「いいや、思い出しちゃいないよ。間に合わせにあたしがつけたのさ。甚吉が拾ったんだから、拾吉さんでいいかって」
――どんな名でも、真砂太夫がつけたのならばそれ相応の値打ちもあるだろう。と、思うことにした。
幸い、拾吉はあまり気にしていないようだ。
「お前さんが。覚えちゃいねぇが、助かったよ。その時、何か私の身元がわかりそうなものはなかったかい?」
「す、すいやせん。そこまでは」
甚吉がしょんぼりすると、拾吉は苦笑した。
「いや、悪い。そうだよな、気にしねぇでくれ」
こう顔かたちが変わっていたのでは、知己が拾吉を見ても当人だと気づけないかもしれない。拾吉の顔を見ると気の毒になった。
油の中から鮮やかに小判を救い出していたことを教えてやるべきだろうか。そんなことで身元がわかるとも思えないけれど。
そこで甚吉は考えた。とりあえずマル公と会わせてみようと。
賢いマル公ならば何かに気づくかもしれない。
「あ、拾吉さん、おれが世話をしてる生き物を見にきやせんか? 可愛いヤツなんで、きっといい気晴らしになると思いやす」
そんなことを言い出した甚吉に、真砂太夫は優しくうなずいた。
「そうだね、行っておいでよ」
「へえ」
拾吉は、助けてもらったのだから働かねばと思っているのだろうか。少し申し訳なさそうに真砂太夫に頭を下げた。そんな拾吉の袖を引き、甚吉は生け簀に戻る。
客の入りが始まる前に帰ってもらわなければならないので、そう長居はできない。
マル公は、甚吉がなかなか戻ってこないので退屈だったのか、生け簀をプカプカと漂っていた。しかし、甚吉が人を連れてきたと知ると、気を引き締め直したようだ。
半眼になっていた眼を開き直し、まん丸にして愛想を振り撒く。
「ヲォゥ?」
などと言って小首を傾げてみせる。いつも、そんなマル公に釘づけになっている客を見て、マル公は逆にその客を眺めて楽しんでいるのだ。今もこうして拾吉を観察していることだろう。
「こりゃあ、また――」
拾吉はそれだけ言って、黙った。
黙って、食い入るように腫れたまぶたの下からマル公を見つめている。マル公は(見た目は)可愛いから――と甚吉が思ったのも束の間。何かがおかしい。
拾吉はにこりともせず、表情を消してマル公を見ていた。その真剣さに甚吉も声をかけづらくなった。
そして、意外なことに、拾吉を前にしてマル公が固まってしまった。しかし、マル公はそこから気を取り直し、ぎこちなくそろりそろりと泳ぐと、拾吉から間を取るようにして生け簀の角まで後退した。
一体、マル公はどうしたのだろうか。
あの勝気で好奇心の強いマル公が拾吉を警戒している。今までに見たことのない動きだった。マル公は拾吉に何を感じたのだろうか。
甚吉はおずおずと声をかけた。
「あ、あの、拾吉さん?」
すると、拾吉はハッと我に返った。そうして、何か照れたような仕草で頭を掻く。
「ああ、可愛い生き物だな」
そうしていると、葦簀を潜って寅蔵が現れた。こんな時刻に顔を見せることは珍しく、甚吉も驚いて姿勢を正した。
「お、お疲れ様でございやす」
しかし、寅蔵の強面は甚吉には向かず、拾吉を睨めつける。
「お前さん、誰に断ってここに来やがった?」
誰にというか、甚吉が連れてきた。本来、見料を払わねば見られぬところ、タダで海怪を見たと言いたいのかもしれない。
甚吉が勝手に連れてきて見せた。叱られるべきは甚吉なのだが、寅蔵が恐ろしくて口を挟めない。何か言わなくてはと思ったが、口は貝のように開くことを拒んでいた。手足がカタカタと震える。
すると、拾吉はふわりと軽く笑った。
「珍しい生き物がいるってんで、私が無理言ってこの子についてきてしまったんです。すいやせん」
真実とは違うことを拾吉は口にした。甚吉はただ茫然と立ち尽くし、二人の話の間にいた。
「――そうかい。今回は見なかったことにしてやるから、二度と近づくんじゃねぇぞ」
冷え冷えとした口調で寅蔵が言っても、拾吉は怯えた様子を見せなかった。シャンと余裕を持って頭を下げる。
「へぇ、ありがとうございやす。親分さんはここの元締めなんですね?」
「――それがなんだ?」
ギロリ、と寅蔵は拾吉を睨む。得体の知れない男に気安く声をかけられるのも不愉快なのだろう。
それでも拾吉は平然として見えた。
「いや、大所帯ですから、束ねるのも大変でござんしょう。じゃあ、私はそろそろ行きます」
頭を下げ、拾吉は去った。その背中は堂々として大きく見えた。何故か、寅蔵も拾吉が去った後に少しばかり苦々しい顔をすると、甚吉には何も言わずに出ていった。
甚吉は、ポカンと口を開けた。
その途端にマル公は慌ただしく泳いで生け簀の縁までやってきた。
「お、オイ、甚ッ。あいつかッ。あいつが小判をつまみ出したってぇ男かッ」
いつになく落ち着きがない。喋りながらも尾ビレがピシピシと水を跳ね上げる。
「そうだけど。どうしたんだい、マル先生?」
「どーしたもこーしたもあるかッ。なんだありゃ、なんて目つきだッ。おっかねぇったらねぇッ」
おっかなかったらしい。
可愛いマル公を見る人々が、そんな目をすることはあまりない。
例えば、寅蔵はマル公を見る時、可愛いなどということは思いもせず、ただマル公がどれだけ稼げるか金勘定をしているのがわかるという。しかし、そうした目を向けられていても、マル公が怯えたことはない。
拾吉はお仕着せを着てるだけで堅気の人間ではないのだろうか。寅蔵と平然と渡り合えるだけでも只者ではない。
「あいつ、親方が自分に目を光らせていやがるから、あんなこと言いやがったんだゼ?」
「え?」
「怪しい厄介者を寄せつけねぇようにするのは、頭としちゃ当たり前だ。それがわかるから、そういう態度を取られても、自分は気を悪くしないって余裕だな、ありゃ。親方もそこんとこ感じたんじゃねぇか?」
甚吉は寅蔵がそばにいるだけで震えが来る。それほど怖い寅蔵を黙らせるとは。
「多分だがなぁ、あいつも下をいっぱい引き連れて面倒見てんじゃねぇのか?」
そうかもしれない。
とっさに甚吉を庇ってくれた拾吉だから、弱者の気持ちもよくわかっていてくれる気がした。
朝、いつものせっかちな魚売りからマル公の餌を受け取っていると、新兵衛座の舞台の方に見慣れない――いや、昨日見た縞のお仕着せが見えた。甚吉はハッとして魚の入った盥を置くと、慌てて真砂太夫の方に駆け寄った。
「ま、真砂太夫ッ、そのお人は昨日の――もう起きても平気なんで?」
振り返った男の顔は腫れていた。決して男ぶりは悪くなかったはずが、昨日よりさらに腫れて人相が変わってしまっている。
しかし、男はそんな顔にも関わらずにこやかに立っていた。
「おはよう、甚吉」
真砂太夫が輝かしい微笑を向けてくれたものの、今日の甚吉はそれに酔えたものではなかった。真砂太夫は男に向けて言う。
「拾吉さん、この子が傷だらけのあんたを見つけてきたんだよ」
名前を思い出したのか、真砂太夫はこの男を拾吉と呼んだ。
「名前、思い出せたんで? 拾吉さんてぇ名だったんですか」
すると、真砂太夫はコロコロと笑った。
「いいや、思い出しちゃいないよ。間に合わせにあたしがつけたのさ。甚吉が拾ったんだから、拾吉さんでいいかって」
――どんな名でも、真砂太夫がつけたのならばそれ相応の値打ちもあるだろう。と、思うことにした。
幸い、拾吉はあまり気にしていないようだ。
「お前さんが。覚えちゃいねぇが、助かったよ。その時、何か私の身元がわかりそうなものはなかったかい?」
「す、すいやせん。そこまでは」
甚吉がしょんぼりすると、拾吉は苦笑した。
「いや、悪い。そうだよな、気にしねぇでくれ」
こう顔かたちが変わっていたのでは、知己が拾吉を見ても当人だと気づけないかもしれない。拾吉の顔を見ると気の毒になった。
油の中から鮮やかに小判を救い出していたことを教えてやるべきだろうか。そんなことで身元がわかるとも思えないけれど。
そこで甚吉は考えた。とりあえずマル公と会わせてみようと。
賢いマル公ならば何かに気づくかもしれない。
「あ、拾吉さん、おれが世話をしてる生き物を見にきやせんか? 可愛いヤツなんで、きっといい気晴らしになると思いやす」
そんなことを言い出した甚吉に、真砂太夫は優しくうなずいた。
「そうだね、行っておいでよ」
「へえ」
拾吉は、助けてもらったのだから働かねばと思っているのだろうか。少し申し訳なさそうに真砂太夫に頭を下げた。そんな拾吉の袖を引き、甚吉は生け簀に戻る。
客の入りが始まる前に帰ってもらわなければならないので、そう長居はできない。
マル公は、甚吉がなかなか戻ってこないので退屈だったのか、生け簀をプカプカと漂っていた。しかし、甚吉が人を連れてきたと知ると、気を引き締め直したようだ。
半眼になっていた眼を開き直し、まん丸にして愛想を振り撒く。
「ヲォゥ?」
などと言って小首を傾げてみせる。いつも、そんなマル公に釘づけになっている客を見て、マル公は逆にその客を眺めて楽しんでいるのだ。今もこうして拾吉を観察していることだろう。
「こりゃあ、また――」
拾吉はそれだけ言って、黙った。
黙って、食い入るように腫れたまぶたの下からマル公を見つめている。マル公は(見た目は)可愛いから――と甚吉が思ったのも束の間。何かがおかしい。
拾吉はにこりともせず、表情を消してマル公を見ていた。その真剣さに甚吉も声をかけづらくなった。
そして、意外なことに、拾吉を前にしてマル公が固まってしまった。しかし、マル公はそこから気を取り直し、ぎこちなくそろりそろりと泳ぐと、拾吉から間を取るようにして生け簀の角まで後退した。
一体、マル公はどうしたのだろうか。
あの勝気で好奇心の強いマル公が拾吉を警戒している。今までに見たことのない動きだった。マル公は拾吉に何を感じたのだろうか。
甚吉はおずおずと声をかけた。
「あ、あの、拾吉さん?」
すると、拾吉はハッと我に返った。そうして、何か照れたような仕草で頭を掻く。
「ああ、可愛い生き物だな」
そうしていると、葦簀を潜って寅蔵が現れた。こんな時刻に顔を見せることは珍しく、甚吉も驚いて姿勢を正した。
「お、お疲れ様でございやす」
しかし、寅蔵の強面は甚吉には向かず、拾吉を睨めつける。
「お前さん、誰に断ってここに来やがった?」
誰にというか、甚吉が連れてきた。本来、見料を払わねば見られぬところ、タダで海怪を見たと言いたいのかもしれない。
甚吉が勝手に連れてきて見せた。叱られるべきは甚吉なのだが、寅蔵が恐ろしくて口を挟めない。何か言わなくてはと思ったが、口は貝のように開くことを拒んでいた。手足がカタカタと震える。
すると、拾吉はふわりと軽く笑った。
「珍しい生き物がいるってんで、私が無理言ってこの子についてきてしまったんです。すいやせん」
真実とは違うことを拾吉は口にした。甚吉はただ茫然と立ち尽くし、二人の話の間にいた。
「――そうかい。今回は見なかったことにしてやるから、二度と近づくんじゃねぇぞ」
冷え冷えとした口調で寅蔵が言っても、拾吉は怯えた様子を見せなかった。シャンと余裕を持って頭を下げる。
「へぇ、ありがとうございやす。親分さんはここの元締めなんですね?」
「――それがなんだ?」
ギロリ、と寅蔵は拾吉を睨む。得体の知れない男に気安く声をかけられるのも不愉快なのだろう。
それでも拾吉は平然として見えた。
「いや、大所帯ですから、束ねるのも大変でござんしょう。じゃあ、私はそろそろ行きます」
頭を下げ、拾吉は去った。その背中は堂々として大きく見えた。何故か、寅蔵も拾吉が去った後に少しばかり苦々しい顔をすると、甚吉には何も言わずに出ていった。
甚吉は、ポカンと口を開けた。
その途端にマル公は慌ただしく泳いで生け簀の縁までやってきた。
「お、オイ、甚ッ。あいつかッ。あいつが小判をつまみ出したってぇ男かッ」
いつになく落ち着きがない。喋りながらも尾ビレがピシピシと水を跳ね上げる。
「そうだけど。どうしたんだい、マル先生?」
「どーしたもこーしたもあるかッ。なんだありゃ、なんて目つきだッ。おっかねぇったらねぇッ」
おっかなかったらしい。
可愛いマル公を見る人々が、そんな目をすることはあまりない。
例えば、寅蔵はマル公を見る時、可愛いなどということは思いもせず、ただマル公がどれだけ稼げるか金勘定をしているのがわかるという。しかし、そうした目を向けられていても、マル公が怯えたことはない。
拾吉はお仕着せを着てるだけで堅気の人間ではないのだろうか。寅蔵と平然と渡り合えるだけでも只者ではない。
「あいつ、親方が自分に目を光らせていやがるから、あんなこと言いやがったんだゼ?」
「え?」
「怪しい厄介者を寄せつけねぇようにするのは、頭としちゃ当たり前だ。それがわかるから、そういう態度を取られても、自分は気を悪くしないって余裕だな、ありゃ。親方もそこんとこ感じたんじゃねぇか?」
甚吉は寅蔵がそばにいるだけで震えが来る。それほど怖い寅蔵を黙らせるとは。
「多分だがなぁ、あいつも下をいっぱい引き連れて面倒見てんじゃねぇのか?」
そうかもしれない。
とっさに甚吉を庇ってくれた拾吉だから、弱者の気持ちもよくわかっていてくれる気がした。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜
かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。
徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。
堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる……
豊臣家に味方する者はいない。
西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。
しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。
全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる