ロリコンだった俺がある日突然何の脈絡もなくロリコンじゃなくなったから再びロリコンに戻りたい!

発酵物体A

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12-5 昨日の出来事と群司の真意

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「……ん? なんだこれ?」

 熱海群司は自分のPCのメールを確認し、疑問の声を上げる。

「島抜……巧人?」

 見慣れない相手の名前をみて、その内容に目を向ける。
 そうして一通り読み終えて、男はため息をつく。

「……はぁ、なるほど」

 状況は理解した。つまりこれは――

(めぐるの仕業だな)

 熱海巡こと彼の妹は、このあかりというアイドルのことを応援していた。
 それに、勝手に自分のPCを使っているときがあったのも知っている。前に見つけて、叱ってはいるが、その程度で反省するたまではなかったか。

(とにかく、この巧人という相手も必死なようだし。巡を怒るのは後にしてまずは、話をするか)

 男は立ち上がると、巡の部屋へと向かう。

「お~い? 巡?」

 ドアをノックして、そう聞いた後、間髪入れずに扉を開く。
 巡はベッドの上に寝っ転がって、ゲームをしていた。
 巡は群司を気にする様子もなく、ゲームをしながら聞く。

「なに~? お兄ちゃん? ごはん?」
「それはまだ」
「じゃあなに? 今日のサバゲーで勝ったっていう自慢話? 私聞きたくないよ」

(む、先に止められてしまった)

 前に超接戦したときの話をしてから、一切聞いてくれなくなった。あの名勝負を話すのに熱が入り過ぎたからか。それは残念ではあるが、今はそれは関係ない。
 群司は、さきほどのことを話す。

「さっき、島抜巧人という人からメールが来た」
「へ、へー……そ、それがどうしたの?」

 体を全身ビクッとさせて、動揺したような棒読みで返事をする。

(隠すのヘタだな)

 群司はそう思いつつ、さっさと本題に移る。

「本当は分かってるだろ。そいつはお前の知り合いだろ? 相談に乗ってほしいとさ」
「相談? ってなに?」
「あかりというアイドルと知り合いになって、連絡先もらったけど未だ返信してなく、俺はどうすればいいのか、だそうだ」
「ええ!? あのあかりちゃんと知り合いになっちゃったの!?」

 ついに、巡はゲームから顔を外し、こちらを振り返る。
 ようやくまともな会話ができる。そう思ったが、巡は落ち込んだように顔を伏せ呟く。

「うぅ……あかりちゃんが相手じゃ勝てない」

 一体何の勝負だと思ったが群司はすぐに理解する。
 そして理解したからこそ、群司はそこには触れずに、「それで?」とたずねる。

「どうするんだ? 相談に乗るんだろ?」
「それはもちろんだよ! けど……」

 一度上げた顔を再び元気なく俯かせる。

「私に何ができるのかな……?」

 巡は呟くが、それは群司には答えることはできない。いや、元々それはこちらに聞いたものではない。自分自身に確かめるためのものだ。
 群司はただ巡を見守り続けた。そして、数十秒経って巡は答える。

「私もちゃんと考えたいから。返事は一日待ってて」
「わかったよ。……けど、俺のPCを勝手に使うなよ」
「……ごめんなさい」

 巡がそう謝ったところで群司は、もう一度だけ念を押して、「じゃあこれは明日な」と言い残し、部屋を出ていった。
 巡は群司が消えて改めて、思い返す。

「巧人さん……」

 あかりちゃんと知り合いになったことは本当に驚いたけど、そのことを連絡してくるなんて。連絡くらいならすればいいのに。……でも、あの人ならではの悩みだよね。

(超がつくほどに極度のロリコンさんだもん)

*****

 そして、次の日。昼頃になって、群司のほうから巡に話しかけた。現在は、群司の部屋でPCの前に二人して向かっている。

「う~ん……」

 巡は、どう返すのかでまだ悩んでいた。
 一日という時間をもらいはしたが、元々こういうことには慣れてない。今回は真面目な話になる。いつものように冗談でおちゃらけたり、ヘタなことは言えないのだ。
 だからこそ、内容は難航している。

「やっぱりここは、少しふざけた感じでいったほうが……」
「……いや、これはマズいだろ。もう少し気を遣えよ」

 適当にタイピングした文章を横から見ていた群司は注意する。

『うぉい! 責任転嫁じゃんか! こっちかんけーねーよw。とりあえず、相談自体は乗ってやるけど、もうちょいkwsk事情を話せ』

 確かに、もう少し言い方があるかも。そう考え直して、巡は頭を悩ませる。
 そうしている巡と、その一度書かれたメールを見て、群司は少しだけ投やりに言った。

「というか、これだと何度もメールを往復させないといけないよな? それだったらもう、面倒だし。直接会って話をしたほうがいいんじゃないか?」
「え……ええ!?」

 予想外の提案に、驚きの声を上げる。

(そんな、会うだなんて……無理!)

 緊張を通り越して、心臓が止まっちゃうよ。

「なんだよ。会ったことないのか? 近所に住んでるんだろ? それに、巡は住所も知っているんだろ?」
「え、いや私はあるけど……あっちは知らないっていうか」

 あっちには住所もなにも教えてないし。
 それに、私は遠くから眺めてるだけで満足なんだから。
 群司はあたふたとする巡をみて、決める。

「やっぱり直接会ったほうがいいな」

 そう言うと、おもむろにPCを巡から奪って、タイピングを始める。

「メールする」
「え! ちょ、ちょっと! 勝手に!」
「巡も勝手に使っただろ、おあいこだ」

 群司はそうとだけ返して、必死に阻止しようする巡を無視し、『今から会えないか?』という簡素な内容で送信した。

「あー! なんてことするの! 私知らないよ!」

 そんなことを言って怒ったようにするが、部屋からはいなくなりもせず、横目でこっちを見ている。気にしているのがまるわかりだ。

「……お? 連絡が来たぞ。『別にいいけど』だってさ」
「し、知らないよ! お兄ちゃんがやったことなんだから!」
「じゃあ次は待ち合わせ場所の指定かな? え~っと」

 そうして考える群司に巡は焦った様子で答える。

「わ、私行かないよ! お兄ちゃんが代わりに行ってよ!」
「なんでだよ。お前の知り合いだろ? お前が助けなくてどうするんだ」
「だから、それは会わなくてもできるじゃん!」
「でも、会うってことになったしな」
「だったら、一通り話だけ聞いてきてよ! そうしたら、考えるって言って、またあとでメールするなりすればいいんだから」

 一応、悪くない手ではある。けど、それを受け入れるべきかどうかが問題だ。
 群司としては、巡自身に解決させてあげたいものではある。そして、それは今言った案でも実現することができる。
 だが、果たしてそれでいいのか。実際に巡が会うことのほうが、いいに決まっているし、そうするべきだ。

(でも、それは人それぞれか)

 俺はそう思うが、巡は違う。大事な気持ちだからこそ……特別だからこそ、できないこと。それが巡の考えた結果なら、今はそれに従うか。

(それに、巡が気に入った相手とはいえ、俺は会ったことがないしな)

 ちゃんと、相手のことを知っておきたい。
 それは巡の家族として、兄として。
 心配する気持ちと、巡の選んだ相手のことを知り認めたい気持ちの二つ。
 だから群司は巡の言葉に頷いた。

「わかった」
「ホント? じゃあお願いね、お兄ちゃん!」

 巡は笑う。……やはり、そうでなくてはな。大切なのは、お前自身の心だから。

*****

「えっと……あ、あれが巧人さんだよ!」

 巡は人物を見つけると、指をさして伝えてくる。
 群司がその方向を見ると、そこには高校生くらいの男がいた。ロリコンなどというし、思ったよりも若いことに少々驚く。見た目としては、普通だ。好青年といったところか。

(って、俺が言えた義理じゃないか)

 俺のほうがいわゆるキモオタなどと言われるような見た目だ。
 それを自分でもわかっている。そんな俺が、人を見た目で判断してはいけない。
 群司は、気持ちを改め、巡にこれからについて伝える。

「そうか、わかった。じゃあ巡は適当に隠れて後をついてくるか、もしくは俺の連絡を待ってなさい」
「お兄ちゃん、巧人さんに失礼なことしちゃダメだよ!」

 後ろから巡の声援(?)を受けつつ、群司は巧人の元へ向かった。
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