【完結】『三太郎の憂鬱~討論!暴論!大激論!~』の巻 「のーの」の有名人さんいらっしゃいの部屋(リメイク版)

のーの

文字の大きさ
16 / 21

「再逆転なるか桃太郎!激烈バトルロワイヤル!」

しおりを挟む
「再逆転なるか桃太郎!激烈バトルロワイヤル!」
 「キュー」の声と同時にユーチューブのCMが終わり、スタジオの映像が映し出された。「のーの」が持つフリップに黒マジックで数字が書き込まれている。カメラは、フリップをズームし、画面いっぱいに映し出された。
「はーい、視聴者の皆さーん、現段階の投票シェアでーす。トップは金太郎さんの39%、2位は桃太郎さんの36%、三位は浦島太郎さんの25%と混戦になってきてますよー!最後の順位を決めるのはあなたの一票!「三太郎総選挙」もいよいよ大詰めでーす。
 最後のコーナーは、かつて、この番組で数々の大逆転のドラマを生んできた名物コーナー!「放送コード違反」と「根拠なき誹謗中傷」と「暴力行為」以外は何でもOKの仁義なき戦い!「自己PR」、「スキャンダル暴露」、「ご当地自慢」なんでもござれの「言論バトルローワーイーヤールー!」始まるよー!ルールは簡単、出演者の前のボタンを早押しでたたき、ランプがついた人が最大180秒話せます。一度発言すると、次回はお休み。ふたりでの競争です。押し負けしてても7回に1回は発言権が回ってきます。平等の中にも争いあり!今日の流れから、発言は「R―15」相当でお願いしますねー。特に浦島太郎さんは気を付けてくださいよー!「亀吉」ネタ話の事ですよー!」
 カメラはフリップから「のーの」に引き、さらにワイドに。スタジオの四人が映し出された。ゲスト三人の前には、先ほどまでは無かった赤いパトランプとボタンがおかれているのが見て取れる。
「では、御三方、心の準備と右手の準備はよろしいですか?では、スタート!」
「のーの」の開始のコールと同時に桃太郎の席のランプが点灯した。金太郎と浦島太郎は動く素振も見せなかった。
「はい、桃太郎さん!」
「はい、まずは、僕の苗字が無い件なのですが、理由をここで述べさせていただきたいと思います。」
 (えっ?お侍さんじゃないから苗字が無い以外に何か理由があるの?)「のーの」が驚いた表情を浮かべると同時に、浦島太郎と金太郎が桃太郎の顔を見た。自信満々の笑みを浮かべている。
「はい、桃太郎さん、続けてどうぞー!」
「実は、桃太郎は「俗称」であって、僕の本名は、「吉備津彦命(きびつひこのみこと)」と言います。日本書紀では「稚武彦命(わかたけひこのみこと)」となっています。
 僕は、第7代天皇の孝霊天皇の皇子なのです。
 皆様もご存じのように天皇陛下を筆頭に皇族には苗字というものが存在しません。名前だけです。前半の質問時には、僕が「皇族」しかも天皇の息子であることを告白すると、この総選挙の勝敗を決定づけてしまうため、あえて黙っておりましたことをこの場でお詫び申し上げます。
 「桃太郎」の話は、かの「菅原道真」公が、瀬戸内のある漁師町で「稚武彦命」が三人の勇士を従えて海賊退治をしたという話を漁師から聞き、海賊を古代の鬼「温羅(おんら)」とし、三人の勇士を鬼門である「丑寅」に反する裏鬼門の「申酉戌」の方角に準(なぞら)え「猿」、「鳥(雉)」、「犬」とし、おとぎ話として後世に残したのです。
 以上を持ちまして、士族ではない下賤な家の出ではないことがお分かりいただけるものと思います。」
 と言い、どや顔で着席した。「のーの」の前のパソコンモニターには、「皇子キター!!」、「気品があると思ってたよー。」、「皇族と比べたら、金太郎も嶋子も庶民!いや下民!」とコメントが並び、ふたりの投票カウントは減り、桃太郎に票がなだれ込む。再び桃太郎の得票率は60%を超え、圧勝ムードが流れた。(凄―い、桃太郎さんって皇族だったんだ。それならそうと先に言ってくれればよかったのになー。今の発言でほぼ決まっちゃったかなー。)「のーの」は思った。
 「キンコーン!」浦島太郎の前のパトランプが点灯しまわった。
「はい、浦島太郎さーん。自己PRですかー?それとも反論ですかー?」
「あぁ、人の「上げ足」とるのは好きじゃないんやけど、今の桃太郎さんの話にいくつか補足しておこうと思ってな。
 まずは、「吉備津彦命」についてやけど、きっと岡山県の「吉備の国征伐」のことを鬼退治に準(なぞら)えて言ってるんやと思うんや。
 岡山市北区に吉備津彦を祭る二つの神社がある。距離は約2キロと非常に近いんやな。その一つ、北区一宮にある吉備津彦神社は吉備の中山と呼ばれる神体山の北東にある。本殿左の森の中に温羅(おんら)を「うら」と読ませる「温羅(うら)神社」があるねん。祭神の宿敵が祀られとんねんな。
 もう一つの神社は、吉備津神社って言うて、個々の本殿は京都の八坂神社の本殿に次ぐ大きさで国宝や。そりゃ、立派な建てもんやで…。ここは、「湯窯殿」ちゅう建てもんがあって、「温羅(うら)」の故事に準えた市民のための「鳴釜神事」いう「吉凶占い」が有名やな。「鳴窯神事」は、温羅(うら)の首がいつまでたってもくたばらず、呻き続けて仕方なく竈(かまど)の下に埋めたんやけど、声は止まららへんで困った吉備津彦命が、そこを「温羅(うら)」を慕ってた村民に開放したちゅう話が元やな。」
 話し続ける浦島太郎に、
「おいおい、なにが言いたんだよ。手短に説明してくれよ。こんな調子だと347年たっちまうじゃないか。ぎゃははは。」
桃太郎が笑いながら野次を飛ばす。そのヤジを機にすることもなく浦島太郎は話をつづけた。
「わしが言いたいのは、本当に村人に悪さをする「鬼」であれば、「温羅(うら)」を偲ぶものを残すことがあるんか、言う話や。「温羅(うら)」の出自は、製鉄技術をもって百済から渡ってきた渡来人やという説がある…。当時の製鉄技術は、剣や槍先に使うだけでなく、鉄製の農機具に活用すれば、木製農具と比べると農作行為の効率化に断然大きな恩恵があった。
 わしが聞いた話では、「吉備の国は温羅(うら)の農機具のおかげで非常に豊かだった。そこに目を付けた大和朝廷が、製鉄技術と豊かな農作物の徴収のために「有らぬ罪」を吉備中山の村におっかぶせて、征伐の名のもとに温羅(うら)を殺したんとちゃうか。」いうことやった。
 吉備津彦命が、温羅(うら)の悪行の事実を確認したわけでなく、朝廷の命で「都」から駆け付け征伐したのであれば、今も温羅(うら)が市民に愛されていることが理解できると思うんや。
 吉備津彦命については、他にも言いたいことがあるんやけど、ここでは、やめとくわな。347年もたってしもたら桃太郎さんに申し訳あれへんからな…。」
 浦島太郎は、ゆっくりと席に着いた。「のーの」の前のモニターには「嶋子の話の方が信ぴょう性あるんじゃね!」、「当時の朝廷ならやりそう!湾岸戦争の時のアメリカみたいな感じかな。」、「市民(当時の村民)に愛されてた「異人」が「鬼扱い」ってあり得ると思う。」、「ネコババの桃太郎よりは、「純愛」の「嶋子」を信じる。」と先ほど増えた桃太郎の票が浦島太郎に流れた。地団太を踏んだ、桃太郎が今度は金太郎に対して牙をむいた。
 「キンコーン」桃太郎の前のパトランプが点灯した。「のーの」が桃太郎を指名すると。
「金太郎さんにも言っておきたいことがある。本当に、酒呑童子の首を取ったのかという点です。今の福知山市の大江山に頼光さんたち5人と藤原の何某(なにがし)って人で「酒呑童子」を討ったって話だけど、誰も酒呑童子の首を確認してないんでしょ?源義経の時もそうなんだけど、「源」の人ってなんか胡散臭いんだよねー。腐った頭を出して「義経です」ってやったり、酒呑童子の話だって、大江山から帰ってきて、都までもう少しの老ノ坂峠で「酒呑童子の首が動かなくなって仕方がなく埋めた」って言うけど、怪力自慢の金太郎さんでも動かせないっておかしいんじゃないですかー?
 本当は、鬼退治なんかしないで、亀岡で温泉でも入って時間潰して、「鬼やっつけたよー!ご褒美くれー!」ってインチキしちゃってるんじゃないの?御所まであとたったの17キロだよー。おかしいでしょ。きっと平安京手前の人気(ひとけ)のない峠だからばれないって思ったんでしょうけど、本当のことを教えてくださいよー。
 頼光さんたちが変な噂流しちゃうもんだから、「老ノ坂峠」は、京都中央斎場の「花山トンネル」、「船岡山」と並んで京都の「最強」いや「最凶」三大心霊スポットになっちゃたじゃないですかー。あー、そういえば、船岡山は源為義と子供が源頼朝に処刑されちゃって心霊スポットになっちゃたんだよねー。三か所中二か所が源絡み!源さん、「鎌倉好き」で、「京」に恨みでもあったんじゃないのー?」
と金太郎を挑発した。浦島太郎が、金太郎に「金さん、冷静にな!」と小声をかけた。金太郎は浦島太郎に頷いて立ち上がった。
「私のことを腐すのは構いませんが、「源氏」を腐すのはやめていただきたい。酒呑童子は間違いなく成敗しています。茨木童子も後に仲間が倒しております。
 その結果は、京の都に鬼の害が出なくなったことで証明されております。また、老ノ坂峠まで、桃太郎さんが言う吉備津彦命が征伐した温羅(うら)が首だけになっても生きていたように、酒呑童子の首も生き続けました。長道中で腐敗も進みつつあったこともあり、「「疫病」を都に持ち込むことの無い様に」との頼光様のお考えと、反省した酒呑童子が「大事に祭ってくれるなら、首から上の病気を治す神様になる。」との言葉から、「首塚大明神」を建て、酒呑童子を祀った次第です。そこに何の嘘もありません。私からは以上です。」
 金太郎と桃太郎のカウンターは多少の上下はあったものの、ほぼ発言前後で差は出なかった。(ちっ、これで金太郎は潰してやるつもりだったのに!先に浦島太郎を潰しにかかるか…。)桃太郎は、卓上のスイッチを押した。

 
 「すみませーん、次は、浦島太郎さんに質問でーす。浦島さん、いや、浦さんでしたね。失礼しましたー。浦さんが祭られてる「浦島神社」もとい「宇良神社」ってすっごくしょぼいですよねー。参拝客も少なそうだし、うちの吉備津神社と吉備津彦神社と比べると全然小さいですよねー。淳和天皇が建立してくれたって言ってましたけど、浦さんほどの有名人にはふさわしくないと思いませんかー?ご意見聞かせてくださーい!
 あと、「おーさかふぁんくらぶ」で有名なrecogさんのアルバム「recognize」の中の「永遠に幸せになれる方法、見つけました」って歌の歌詞の中で「竜宮城で乙姫さんが出てこなかったよー」ってあって、その後の歌詞というかセリフで「乙姫様は、総選挙で亀に負けたんじゃー」、「亀がセンターだとよwww」という歌詞と「乙姫様ってどんなだったの?」、「乙姫様はばいんばいんじゃった」とあるんだけど、それって浦さんの最愛の姫様って「亀」以下のただの「ばいんばいん」ってことなんですかー?ちょっと聞かせてくださいよー。」

 桃太郎は、浦島太郎にえげつ無い挑発をしてきた。心配そうに金太郎が浦島太郎を見守るなか浦島太郎が席から立ちあがった。
「神社の大小は、わしには関係ない。繰り返しになるが、わしは「英雄」やないし、「有名になりたい。」とも思わへん。参拝客が多く、参拝者の顔も覚えられない神様やったら、一日に数十人の参拝者、それも地元漁業関係者や市民がわしを慕って来てくれるこじんまりとした神社の方がわしには向いとる…。今の宇良神社でもわしには大きすぎるくらいや…。
 そんで、recogさんいう人の歌は、わしは知らんのやけど、今日言ったように、姫さんは「亀の化身」や。「姫さん」が一位でも「亀」が一位でもわしにとってはどちらでもええことや。そんなことで、わしと姫さんの「愛」は、なんも変わらんからな…。「ばいんばいん」はその通りや。「そりゃ、今風に言えば「ナイスバディー」いうやつや。それは全く否定はせん。」
 挑発に動じず、「身の程」について語り、純粋に「愛」を語る浦島太郎の好感度が上がり、意地悪な質問を繰り返す桃太郎の票が浦島太郎に流れた。(ちっ、なかなか落ち着いてやがる。小市民は扱いにくいぜ…。もう少しつついて、キレさせるか!)再び桃太郎の前のランプが灯った。

 「浦さーん、「姫さん」イコール「亀」ってことだったけど、その「亀」と「へげへげ」してたんでしょー。それって、金太郎さんのシカやウサギと「へげへげ」といっしょで「動物虐待」なんじゃないんですかー?
 環境保護団体の「WWF」や「動物愛護協会」から訴えられちゃうんじゃないですかー?浦さんの「亀吉」に「へげへげ」されちゃった「亀」が可哀想じゃないですかー!」
との発言に浦島太郎が激しく席を立った。椅子は、勢いで後ろに倒れ、「ガターン」と大きな音がスタジオに響いた。
 

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...