最強クラスの双子がゲームの攻略を目指す物語

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二章

第1話 三野結

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 三野結は良くも悪くも平凡な人生を送って来た。
 裕福な家庭に生まれたわけではないが、漫画で見るような貧乏な家庭に生まれもしなかった。
 何かをする上で親が常に足かせになったわけではないし、だからと言ってたまには親も厳しく言ってきたこともあった。
 ただそれだけである。
 そんな彼女がこの世界に来た時、始めに抱いたのは喜びであった。
 平凡故に、いやありふれた普通の人生だったが故に、彼女は異常を求めるようになっていた。
 もちろん、それで死ぬことなど彼女の中で想定などされていない。

 始めの大陸内で唯一適正レベルを外れた難易度を誇る裏ダンジョン『白の世界』
 始めの大陸の適正レベルは1から100であり、この裏ダンジョンを除いた他のダンジョンの適正レベルもその間で構成されている。
 しかしながら、この裏ダンジョンの適正レベルは200から。100階層にも及ぶ地下空間が広がっている長いダンジョンである。この裏ダンジョンは階を進むごとに難易度は上がり、最下層は900レベルクラスのプレイヤーでも苦戦を強いられるほどである。
 こういった裏ダンジョンは他の大陸でも存在するのだが、この裏ダンジョンの存在を知るプレイヤーはごく僅かである。それほど発見からして難しいダンジョンである。
 その裏ダンジョンの攻略を目指す結の現在のレベルは481。オーソドックスな黒魔法使い型。魔女のような、真っ黒な三角帽子とマントを着て、自身の身長ぐらいある杖を持つ。
 一切誰ともパーティーを組まず、一切ゲームの情報を持たず、独力でここまでレベルを上げたプレイヤーはそうそういないだろう。
 それほどの実力を彼女は持ち合わせており、それに誇りももっていた。

「ああ、もう」

 だから、この裏ダンジョンを攻略してやるのだと意気込み。およそ一か月間、ずっと裏ダンジョンに入り続けていた。
 幸運にもこのダンジョンは、階層と階層を結ぶ階段では一切のモンスターはスポーンせず、自然回復を行える安全地帯はいくらでもある。そして外にトイレ風呂付きの簡易的な宿を生成するアイテムの存在で、一度も街に戻らなくても大丈夫ではいた。

「でも、さすがに限界かな」

 第44階層。この辺りからスポーンするモンスターレベルは500に入り始める。
 結からすると自身よりも20レベル近く高いモンスター、グヴォジーカ。植物種のモンスターであり、高い耐久を誇る動く木のようなモンスターである。
 レベル上げを優先するならば、狩るモンスターは自身よりもレベルの高いモンスターの方が良い。もちろん安全を優先したうえでだが、案外このゲームは、自分よりも高いレベルのモンスターも狩る事ができる。
 それには訳がある。スキルとAIである。レベルの高いモンスターならば基本的にスキルを覚えるが、プレイヤーほど覚えるわけではない。スキルの数ではプレイヤー以上のモンスターなど存在しない。そしてモンスターのAIがプレイヤーを超えていない以上、低レベルでも倒すことは容易である。
 そしてこのゲームでは自身の5レベル前後のモンスターならば得られる経験値は等倍だが、仮にもそれ以上離れている場合、ボーナスかペナルティがつくように設定されている。高ければ最大で2倍、低ければ得られる経験値は最大で半分になる。
 この二つを駆使して、短時間でプレイヤーは高レベルにすることも可能である。
 ただこの場合、レベルだけが上がり、それ以外、例えば装備などが上昇するわけではない。
 レベル400の後半でありながら、結が装備する武器、防具は200レベル前後の装備である。

「くっ! スキル、ロックシールド!」

 グヴォジーカが攻撃モーションに入り、咄嗟に結は防御スキルを唱える。
 スキル、ロックシールドは耐久3000の盾変わりの岩壁を前方に呼ぶスキルである。黒魔法使い型の副産物として覚えたスキルであり、その道を究めた壁戦士のスキルと比べると耐久は低い。しかしながら、範囲攻撃でなければ一撃は必ず耐えてくれる。
 グヴォジーカなど攻撃速度が遅いモンスターには非常に有効である。

「体力は3割、魔力は残り1割」

 この階層に入ってから、魔力消費が予想以上に速い。
 モンスター1体を狩るうえで使う魔力が多い。
 結は攻撃魔法を展開する。

「スピカ、頑張って耐えて」

 ペット、スピカという名を与えた巨大なゴーレムが結の前に立つ。そしてグヴォジーカの攻撃を主人である結の変わりに受け止める。
 攻撃魔法の展開は時間が掛かる。そして途中に攻撃を受けると中断されてしまう。
 だからこそ、壁が必要であり、結が持つ壁系のペットのうち一体がスピカである。このゴーレムは攻撃能力は皆無だが、耐久に特化しており、ある程度なら自身よりも高レベルのモンスターの攻撃も耐えられる。
 ただ、壁として酷使しているが故に、すでに体力は少ない。
 結が攻撃魔法を唱え終わるのと、シチナーの体力がなくなるか、賭けであった。
 結よりもはるかに巨大な魔方陣が周りに展開される。不思議な文字列が一定に動く中、結の持つ杖が光り輝きだす。

「スキル、アンタレス!」

 スキル、アンタレスは巨大な炎の塊を敵にぶつける攻撃魔法である。結が持つ中でも非常に高火力な変わりに消費も激しく、そう何度も連発はできないスキルである。
 巨大な炎魔法がグヴォジーカを包み込む。
 スピカはまだ死んでいない。無事賭けに勝つことができた。
 そう思いながら、結は炎に包まれたグヴォジーカを見上げる。
 グヴォジーカは植物種故に悲鳴をあげない。効いているのか効いていないのか。それは見た目では判断できない。
 しかし、何度も倒してきたグヴォジーカの耐久がどれぐらいかは知っている。
 アンタレス一発で十分倒せることも。
 だから油断していた。

「嘘っ」

 炎が晴れるが、まだグヴォジーカはそこにいた。データとなって消える様子はない。倒れないグヴォジーカに、結はしまったと思い返し、慌ててステータス画面を開く。
 初心者が行いやすい初歩的なミス。低スタミナによるステータス減少である。
 自身でも気づかないほどに、結は疲労していた。
 まずい。
 すぐさま結は緊急用の回復ポーションを取り出す。
 逃走はできない。裏ダンジョン内では転移アイテムの使用が制限される。だからこそ回復しか倒す手段はない。
 自身の魔力を回復させなければ、今の結ではグヴォジーカを倒すことはできない。そしてその時間を稼ぐために、スピカには犠牲になって貰わなくてはいけない。

「ごめん、スピカ」

 仕方がない。仕方がないんだと自分に言い聞かせる。
 そして。
 グヴォジーカの攻撃がスピカの残り僅かな体力を削り取る。
 ペットの死はプレイヤーの死同様である。取り返せない。一度死ねばもう戻ってこない。
 回復ポーションを飲み終えた結は、とどめのスキルを唱える。

「スキル、プロキオン!」

 スキル、プロキオンは隕石を相手の周囲に振らす範囲攻撃魔法である。純粋な火力ではアンタレスに及ばないが攻撃速度は早い。
 隕石は音と共に上空から降り注ぎ、グヴォジーカを攻撃する。
 グヴォジーカの残り僅かな体力は削り取られ、グヴォジーカはデータとなって消えていった。





「今日は疲れた」

 結は安全地帯で腰を下ろす。階層の入口にある階段。そこを椅子変わりにして、階層の入口にある扉を眺めながらスタミナを回復させつつ自然回復を待つ。
 ペット、スピカがいなくなったのは彼女にとって大きい。

「当分は装備を整えよう。それと、ペットもレベル上げよう。スピカの変わり、見つけないと」

 スピカの変わりなど、簡単なものではない。初期の頃から自身の経験値を分け与え、手間をかけて育ててきた。
 やはり一人では難しいのだろうか。
 そう考えて、すぐさま首を横に振る。
 この腐った世界で、他のプレイヤーの助けなど、求めてはいけない。だからこそ一人でこの裏ダンジョンを攻略しようとしているのだから。
 ただ、一人だけ。
 結には気になるプレイヤーがいた。

「一ノ瀬樹」

 結は顔の知らないプレイヤーの名前を口に出す。
 この裏ダンジョンを攻略した唯一のプレイヤーの名。それは裏ダンジョン入口の石碑に刻まれていた。
 名前からして男なのだろうが、一人で攻略する実力を持つプレイヤー。その人の内面は知らないが成し遂げたことに、結は尊敬の念を抱いていた。

「一体どんな人なんだろう」
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