クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅

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第五膜 零れた朝露、蜜の残り香編

百三十三射目「コードM」

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万波行宗まんなみゆきむね視点ー

 直穂なおほに言われた通り、俺はマナトの動きを抑え続けた。
 ギルアがマナトに投げ与えた剣と、俺の剣が交錯する。
 俺はマナトの動きを見極めながら、防御に専念していた。 
 
 マナトを傷つけるわけにはいかないからな。
 マナトは恐怖に染まった顔で、混乱の悲鳴を上げ続けている。
 ニーナやヨウコも同じだ、獣族語で何かを叫んでいるけれど、
 俺には聞き取れない……

 真剣と真剣の戦い。
 一歩間違えて、剣で喉を捌かれれば即死である。

 だが、俺は高レベルになったおかげだろうか
 それとも誠也せいやさんの猛攻で、ギルアに余裕がないせいだろうか?
 マナトの動きは単調だったので、防ぐのは比較的に楽だった。
 これでいい、時間を稼ぐんだ。
 
 誠也せいやさんは、ニーナやヨウコと戦いながら、ギルアを攻め続けていた。
 誠也せいやさんの攻撃は、ギルアに届く前にすべて防がれてしまっていたけれど……
 でもそれでいいのだ。
 時間さえ稼げば、直穂なおほは必ずやってくれる……

 そんな時……
 ふとあの時のことを思い出していた。
 最初のボス戦で、俺がオ◯ニーした時のこと……
 あの時の俺は、死の恐怖のあまり、ぜんぜん立ち上がれなくて、
 怖さのあまり、ぜんぜん興奮できなかった。

 もしかしたら、今の直穂なおほも、同じような状況なんじゃないだろうか?
 今まで、直穂なおほが天使になるときは、常に俺がそばに居た。
 もしくは声を掛け合っていた。

 思えば最初のボス戦でも、直穂なおほが俺に駆け寄ってくれて、
 抱きしめて、オカズにすることを許してくれたから……
 
 俺は賢者になれたのだ。
 
 今度は俺の番だ。

 きっと直穂なおほは今、森の木陰で一人、不安と恐怖でいっぱいだろう。
 俺は戦闘中で、そばにいれなくても、言葉だけでも、
 俺は直穂なおほを、安心させたいんだ。
 
 そして、俺は、直穂なおほにプロポーズを叫んだ。

 



 そして直穂なおほは……

 純白の光を身にまとい……

 天使となった。


 ★★★


「チッ! しつこい野郎がっ!」

 ギルアは冷や汗をかきながら、ニーナとヨウコを操り、誠也せいやさんの攻撃を食い止めていた。

「ギャッ!」

「うぅぅっ!」

 攻撃を受け止めるたび、ヨウコやニーナが悲鳴を上げる。

「クソ野郎が……」

 誠也せいやさんは歯噛みしながら、それでも攻撃の手を止めない……
 そしてついに、その時はやってきた。

 キィィィィンという閃光とともに……
 大地に天使が舞い降りた。

「待たせてごめんね……」

 そう冷たい声を吐く、天使となった新崎直穂にいざきなおほは……
 ギルアを鋭く睨みつけた。

「チッ! クソがぁぁ!」

 ギルアの明らかに動揺する声。
 形勢が逆転した。
 今この場で群を抜いて強いのは、天使となった新崎直穂にいざきなおほである。

「あまりこの手は使いたくなかったんだがなぁ……そうも言ってられねぇか……」

 ギルアは真剣な目つきに豹変し、ポケットに手をやり……

「コードMゥ!!」

 不可解な単語を叫んだ。
 そしてポケットの中から、三本の薬の瓶を取り出した。

 ギルアが後方へ飛び、誠也せいやさんに対して距離をとる。 
 つられてニーナやヨウコも、ギルアのそばへと引き寄せられて、
 万波行宗まんなみゆきむねと戦っていたはずのマナトも、ギルアへ向かって走り出した。

 獣族姉弟たちが、ギルアの元へと呼び寄せられていく……

「何をする気だ?」

 誠也せいやさんが警戒した様子で動きを止めた。


 違和感……
 その違和感は、すぐに嫌な予感へと変貌した。
 心臓の音が嫌にうるさい。

 ギルアは、三本の瓶を握りしめて……
 それぞれ、ニーナと、ヨウコと、マナトめがけて投げつけた。

 空を舞う、赤い液体の入った瓶……
 その瓶には見覚えがあった。

 あ……あぁ、だめだ……
 それを飲んじゃ……だめだっ!

 俺はすぐさま、マナトを追いかけて走り出した。

「だめぇぇぇえええ!!!!!」

 直穂なおほが絶叫を上げて止めにかかる。
 だめだ、だめだっ!
 それを飲んじゃだめだっ!

 なんで警戒していなかったっ! バカなのか俺はっ!
 あれはっ! あの薬はっ!
 マルハブシの猛毒だっ!
 俺たちのクラス全員が、ボス戦前に飲まされた猛毒だっ!
 
 あのときステータス画面で見たあの文面は、今でもトラウマのように一言一句覚えている。

 ーーーーーーーーーー
 状態異常 マルハブシの猛毒
 約一時間の間、ステータスを限界値まで引き上げ、その後、死に至らしめる。
 治療法のない猛毒。
 ーーーーーーーーーー

 短時間のパワーアップと引き換えに、飲んだ者を死に至らしめる猛毒。
 俺たちの場合は、クラスの番長岡野大吾おかのだいごが【ネザーストーン願いを叶える石】に願ったお陰で、助かることができたけれど……
 文面にもあるように、基本的に”治療法のない”猛毒である。


「飲んじゃだめだァァァ!!!」


 俺は叫び、マナトを必死で追いかける。
 マナトは、投げつけられた薬の瓶を手で受け止めて、
 その瓶を、口元へと……

 ぐっ……
 俺は、ギリギリでマナトに追いついて、薬瓶を握る手を右手で握って食い止めた。
 そして力を込めて、薬瓶をマナトの手から引っ剥がし、地面に叩きつけてバリンと割った。

 その時だった……
 視界の中に、信じられないものが写っていた。
 死を噴きながら空を舞う、切り落とされた人間の腕だ。
 二の腕で切断されたその腕は、俺とマナトの間を舞った。

 それが俺の右腕だと気づくには、数瞬を要した。
 俺の右腕は、マナトの剣によって、完全に切り飛ばされていた。

 
 ★★★

新崎直穂にいざきなおほ視点―

 あ……あぁ…
 私は、頭の中が真っ白になっていた。

 ギルアは奥の手として、マルハブシの猛毒……
 つまりボス戦で私達が飲まされたものと同じ、
 一時間の超ステータスアップとひきかえに、その後死んでしまう猛毒を、ニーナとヨウコとマナトに飲ませようとした。

 ニーナとヨウコは、止められなかった。
 彼女たちは、マルハブシの猛毒である赤い液体の入った瓶を受け取り、それを飲み込んでしまった。
 
 でもマナトだけは、行宗ゆきむねが食い止めてくれた。
 行宗ゆきむねは死にものぐるいでマナトに飛びつき、薬瓶を地面に叩きつけて飲むのを阻止した……
 しかし……

 その一瞬の隙に、マナトの剣は、行宗ゆきむねの右腕を斬り飛ばした。

 そして、もう一方で……
 マルハブシの猛毒を飲んでレベルが倍増したニーナとヨウコが、凄まじい速度で誠也せいやさんに襲いかかり……
 誠也せいやさんの腹を、2本の剣で貫いた……

 腹を貫通されて、血を撒き散らす誠也せいやさん…
 右腕を失い、絶叫する行宗ゆきむね……

 それでも、ニーナとヨウコとマナトは、容赦なく二人に襲いかかった。

 あ……あぁ……ぁああ……

「だめぇぇええええ!!!」

 私は混乱しながら、ガタガタの恐怖に身を震わせながら……
 マナトとニーナとヨウコに、閃光の一撃を叩き込んだ。
 
「うぁあああああ!!!」

 そして私は絶叫しながら……
 諸悪の根源、ギルアへと、全身全霊の一撃を放った。
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