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6 ナイルとチグリス 1
しおりを挟む私が彼に最初に出逢ったのは私が、幼体だった頃…。
父に手を引かれ竜皇国の城で出逢ったのが最初、彼は気だるげな表情で遠くを見ていた。
「いいかい、ナイル。これから会う方は特別な方だが、そう扱われのがお嫌いな方だから畏まらずいつも通りにしていないさい」
「はい、パ…とーさま」
「行こうか」
父様に手を引かれ竜皇国の城の一室を訪れる、中に入ればソファーに、横に座り足を背凭れに掛けだらしなくいたチグリスだった。
「ナイデルか…」
「全く、今日は来ると伝えていたでしょう?」
「知っている…お前の子か…」
「そうですよ、ナイル」
「はじめまして、ナイルともうします!」
「チグリス…」
チラとこちらを見てまたどこか遠くをみている、思えば彼はいつも今を見ていないように思えた。
でも、綺麗だった…
ドラゴンの中でも原種と謂われる深紅の髪と、鮮やかなオレンジの瞳、私は一目で彼を気に入った。
「チグリス?」
「ああ何だ…坊っちゃん」
「チグリス…」
「だっこ!」
「ん…ほら」
父様が諌めるがチグリスはどこ吹く風でだっこをせがむ私の両脇に手を入れて抱き上げてくれる、私はすごく嬉しくて喜んだ。
それから彼が父様達の群れに行くと知り更に喜んだ、父様が少し困った顔をしていたのを覚えている…。
「チグリスー」
「何だ…坊っちゃん」
「ナイルだよー」
ずっと坊っちゃんと呼ぶチグリスにいつも自分の名前を伝えて、抱っこして貰うのが好きだった。
「ほら…」
「わあーい」
チグリスはいつもそうして私のわがままを叶えてくれる、そうして私が大きくなるまで好きにさせていてくれた。
愛想も無ければ、よく食べ物を長達から貰って自堕落に過ごしていても良いと思った。
でもあの日…あの方が封印されたあの時から、私達に溝が出来た。
「どうして!チグリス貴方なら助けられたでしょう?」
「望んでいないだろう」
「それでもこんな…!」
「私は…人を許せない…」
「ドラゴンたちは皆そうだろうな…」
「貴方は!?」
「……」
チグリスは私に背を向けた、そうだ憎い恨むと言って欲しかった…。
「次はどんなお菓子を作りましょうか」
大河さんから借りたお菓子の本を千眼さんから貰った眼鏡を掛けて読む、小麦粉や卵も砂糖もある…このクッキーと言うものにしてみようか。
「これ…」
チグリスが指を指す、ちょうど作ろうとしていたクッキー、何だか面白くはない。
「まだ決めてませんよ」
「これ…食いたい」
「知りませんよ」
私は少しだけムキになる、チグリスは薄く笑う。
「早く食べたい…」
そう言って詠斗さん達の所へ行く、どうせ食べ物を貰うのだろう。
詠斗さん達も甘やかして食べ物を渡している、私はクッキーの作り方を読む、カイネさんやバルタルさん…と作ろうか、千眼さんは最近忙しそうにしている。
お菓子…甘い物は人を癒す効果があると率さんがこの間教えてくれた、人の所へ行かない私は此処で皆さんを癒すとしましょう…。
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