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第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編

11 ドラゴンとクッキーとカメと金魚と卵と…

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「きゅう、どうですか?卵は」
『きゅ?』『ぱしゃ』『ぴぃ』
「そうですか、眠っているんですね。それでは起きるまでクッキー作りでも…、きゅう達はどうします?詠斗さん達の所へ行きますか?」
『きゅ!』
「一緒にクッキーを作ってくれるんですか?嬉しいです、頑張りましょう」
『きゅ!』『ぱしゃ』『ぴぃ』
今この《不毛の地》の畑にいるのはナイル、きゅう、ふー、ウィン、卵だけだった、ナイルはきゅうに卵の事を聞くが寝ているようで反応はないが、殻は割れるとの事なのでいつでも出て来れる状態だいう、後は中の鳥が出たいかどうかの意思による。
「粉と卵と砂糖と…後は味ですね。飴とかを使っても良いそうですが、今日はまず簡単にチョコと干した果物とジャムでやってみますか…後は型があればこの本みたいに…折角だし型も造ってみましょうか」
風魔法で大河(母の物)ほお菓子作りの本を浮かせて写真に載っているクッキーの型を、鉱物ダンジョンのドロップ品の鉱物を使い型を造る、きゅう達も造りたいと希望しナイルが鉱物を渡す、魔力を流すと柔らかくなり好きな形に変えられるのが面白い。
きゅう達も各々魔力を込めて思い思いの型に練っていった…。
『オナカスイタネムイオナカスイタ…イイニオイ…』
卵の中の鳥が微かに微睡の中意識を浮上させるが、すぐに眠ってしまった。
「私は星の形にしてみました、きゅうは魚の形、ふーはきゅうの形で、ウィンはウサギの形ですねみんな可愛いのが出来ましたね。さ、粉を混ぜていきましょう」
ナイル達は早速、率が夜市で買った魔法具の量りを使い粉を計って混ぜていった…。

「うん!良い感じですね!チョコレートのも美味しいですね!」
カルに造って貰ったオーブンの調子も良く、綺麗なきつね色のクッキーが次々焼き上がる。
「晴海さんにラインして…。クッキーを食べながらお茶にしますか…千眼さん程ではないですがお茶を淹れましょう、ミルクも牛乳もありますよ」
何時の間にかベルンのモギが3頭ナイル達の側まで来ていて、クッキーのおねだりをしていた。
「ナイルさん、来たよ」
「晴海さん、どうぞ」
「わ、いっぱい作ったね。カメと金魚!ウサギも星もある!」
「まだまだ作りますから、これ持っていって下さいね」
「いいの?ありがとう、また後で!」
葉に包んだクッキーを沢山貰い元気に晴海が戻っていく、ナイルは手を振り見送ってお茶の準備をしてモギ達にもクッキーを渡して、ナイルときゅうとふーとウィンとモギそして傍らに卵の茶会が始まる。

『オナカスタ…ネムイ…オナカ…スイタ…イイニオイ…』
クッキーを食べてお茶を飲み干しすと、ぴくりときゅうが卵に反応しトコトコ卵に向かっていく、ナイルもそれについて行く。
『きゅ?』
「そうですか、お腹が減っているんですね…鉱物ならありますよ。産まれてきますか?」
『きゅ!』
コクリときゅうが頷き口を開けて殻を噛み砕く、中の鳥…バレットストーンズバードも力の入らない嘴で力を振り絞りし殻を突いていく。
きゅうも殻を食べないように咥えた殻を置きまた噛み砕く作業を行う、ふーもウィンも静かに見守っていた。
「ここを越えなければ殻を出ても生き残れません、貴方次第です。同族はいないですが家族も仲間も友人もいます…だから元気に産まれて下さい」
『きゅぅぅぅう!』
きゅうが一際大きい殻の塊を掴み噛み砕く、大きく空いた卵の穴からは小さな翡翠色の尾の長い小鳥が優雅に舞って卵の殻う上に降り立った。
『ぴぴ』
「産まれましたね…」
『きゅ!』
「さ、自分の殻を食べて精を付けて下さいね。私は詠斗さん達にラインしますね、きゅう見ててあげてください」
『きゅ!』

「戻った」
「ただいまー」
「もどりました」
「帰りました!」
「腹へった、何にもしてないけどー」
『おかえりなさい』
「領主の許可は貰ったからな、一息ついたら《トイタナ》に皆を連れて戻るぞ」
「あ、みんな!ナイルさんから産まれたって!」
『え!』
「晴海…卵…バレットストーンズバードが産まれた」
「あ、そうだよねー良かった!」
「準備して、まだ孤児院の改築は済んでいないだろうが…建物ごと店お裏手に、子供達はまだここで」
「院長先生、領主様から許可を頂きました。安心して来て下さい」
「あ、ありがとうございます。何からなにまで…」
詠斗達が戻り事の顛末を簡略的に話し、院長が涙を流す。
まずは救出出来た子供達の健康状態が概ね回復し、2人の少女たちは隣町で誘拐された子供達のようでユナイドとズィーガーに事の顛末を話し助力を請うて明日隣町のズィーガー商会で引き渡しを行う事にした。
「トラス、テトス君たちは孤児院の子達と先生達と一緒に《トイタナ》へ行くで良いかな?」
「は、はい!なんでもします!連れて行ってください!」
「おれも頑張ります、足…でも頑張る!」
「じゃ、足を治して頑張れ!」
レグが笑いテトスの足に手を当て回復魔法を掛ける、みるみるうちに足の鈍い痛みが消えて足が軽くなった。
「に、兄ちゃん!おれの足!」
「テトス!テトス!」
ジャンプしてはしゃぐ弟を抱き締め泣きじゃくる、弟もつられて涙が零れ兄の背に手を回して強い力で抱きついた。
「後は君だが…」
「僕は、ラキと言います。僕も帰る場所がありません!親もいません!どうか連れて行って下さい、お願いします」
海色の青い髪、煌めく宝石の碧い瞳が育ちの良さ見せる所作、大河と綴はしばし考え連れて行く事にした。
「分かった、彼らと暮して貰うが…」
「はい!」
子供達の件はこれでひとまず落ち着いた…次はあまりやりたくはないが、情報を流した人間を…片端から鑑定を掛けていくかと大河が思っていると晴海からラインで、情報を流した人間が分かったとメッセージが来た、大河が視線を晴海に向け頷くと、晴海からは予想していた人間が挙がった…。
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