あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編

23 先生が来たよ ふぉふぉ

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テント内の図書スペースでパラりとページを捲る微かな音と離れた場所からの皆の寝息、千眼はこの時間も好きな時間の1つだった。
今読んでいるのはお菓子作りの本、最近ナイルと嵌っている菓子作りの為に読んでいる、作るのも見るのも食べるのも楽しい、そしてふと記憶を思い起こす。
『千眼魔王…私たちの魂はこれからも廻り…また貴方と巡り会うかもしれない…その時は見届けて欲しい…私たちが何を選び何を掴み取るのかを…』
『魔王…そなたもまた永久の楔を穿つ者、俺達と近しい存在…俺達はこれで終わりだが魂は先がある。魂が再び俺達を引き寄せるだろう、覚えていて欲しい今の俺達を…伝説や歴史の中に存在する俺達ではない、生身の俺達を…』
『それが願いか…ならばそうしよう…』
犠牲にする他無かった、とある国の王ととある国の王子、偉大なる魔法使いであり剣聖であった彼ら、死に行く者達の言葉として千眼魔王は受け止めた。
「約束は果たそう…」
詠斗達が深く聞いて来なかったのが救われる、何時かは話さなければならないだろうが聞けば彼らはきっと傷つく、千眼は彼らが傷つくのを望んではいない。
『きゅ?』
きゅうが傍らで千眼を見つめる、何やら難し気な本を読んでいるきゅうの頭を撫でてまた静かに読書に耽る。
そうして長すぎる訳でもない夜が過ぎていく、明日はナイルとパウンドケーキを作ってみるのはどうだろうかと思案しながらレシピを眺めた。

「おはよう…」
『おはようございまーす』
「ん…」
今日は店が休みな為、率と綴と晴海以外の面子が揃い朝食の準備が終わっていた。
「何か休みって感じでいいね!俺は朝風呂に行こうかと思うんですが、大河さんたちもどうですか?」
「そうだな」
「ん…」
「俺もー」
「俺も行くわ」
詠斗、大河、チグリス、ジラは朝食後に朝風呂へ向かう事にし、朝食のチーズオムレツ、サラダ、具沢山スープに腸詰めを挟んだパンとミルクを平らげていく。
「今日の朝飯も美味いな」
「おかわり…」
「俺はミルク」
それぞれお代わりも追加しつつ、食後のデザートも食べ自由な時間を過ごした。

『先生大丈夫ですか?』
「ふぉふぉ、良い風良い風」
『カタンーパパが行くぞー』
ナイデルがドラゴンの姿で龍皇国から仙人のような白髪に白い髭の老人を背に乗せ運ぶ…その後ろをもう1頭の蒼緑の鱗と宝石のように輝くエメラルドの瞳のドラゴンが飛んでいた。
『勝手な事をして…』
『カタンー!』
カタンの父カラクが叫びながら空を駆ける、ナイデルはやれやれとため息混じりに空を飛ぶ《不毛の地》が見えて来た。

「父様と先生と…後は…カラクが来ましたね」
「カラク?」
「確か、カタンの父親だったか?」
「はい、龍皇国で騎士団長をしていて忙しいのですが…」
「大方息子恋しさに勝手に抜け出した所だろ…」
畑で大河は読書、詠斗、ナイル、千眼、ジラはジャム作りをしチグリスは味見係としてまったり過ごしていると空に陰が差しナイデルと老人とカタンに良く似た青年が降りて来た。
「おかえりなさい、父様。お久し振りです先生…後は…」
「カタンはどこだ!」
「あ、パパー」
「おお、カタンー!我が息子よー!元気かー」
「げんきー」
ベルンとモギ達に連れられカタンがやって来る、カラクがすぐ様カタンに駆け寄り抱き締めて抱えた。
「おお、暫く見ないうちに少し背が伸びたか!そして君がカタンの面倒を見てくれているベルンか!ナイデル殿から話しは聞いている!」
「は、はじめましてベルンです」
「私はカラクだ!よろしく」
「ふぉふぉ、久し振りの再会。良い良い」
「貴方が教師をしてくれる方ですか?」
「ふぉふぉ、ナイデルに頼まれてのー引き受けるかは別として異界人に興味があって連れて来てもろうた。ワシはモッカと言う。龍皇国の樹の精霊じゃよ」
『精霊?』
詠斗達が驚く正にファンタジー、仙人のような浮世離れの風体に納得がいく。
「現龍皇の教育係をしていた方で長様や父様や私達もお世話になりました」
「ふぉふぉ、ナイルにチグリスよ久し振りかのぉ」
「はい、先生もお元気そうで」
「元気なじいさんだな…」
「ふぉふぉ、そこの魔王殿は始めましてかの?」
「…ああ」
「立ち話もあれなんでこっちへどうぞー。今綴さん達呼んだんで話しとかも…」
「先生何か飲みますか?」
「ふぉふぉ、酒かの茶かの?」
「どちらもある…」
「酒をのむかのぉ」
モッカの席を用意し、蜂蜜酒にビールやその他の酒を出し好きな物を飲んで貰う、ナイルがツマミにドーナツとクッキーを出す、どうやら甘党のようでチョコや飴も出してみる。
「ワシは肉、魚はたべんのぉ。甘い物と酒が好きだのー。異界の甘いものと酒は美味美味」
「話を引き受けてくれてくれるなら、いつでも出しますよ」
「ふぉふぉ、迷うのー」
大河やニヤリと笑いモッカも髭を揺らして笑う、丁度綴と率と晴海も戻り席に着いた。
「ふぉふぉ、これは珍しい《星の御子》がおるぞ」
モッカの細い目が開き綴を見据え、綴は首を傾げる。
「ほしのみこ?」

「なるほど…更科 綴は《星の御子》」
「あの我々の知らない魔法…合点がいったな」
「困りましたね…我々では《星の民》に連絡を取る術がない…」
「後程スマホで伝えるなのです」
「ふむ…彼の魔法でなら…或いは可能かもしれない」
「彼の親を思い慕う気持ちがここまで来させたのかもしれませんね…」
「地球…不可…無理…」
「世界を越えた迷子という存在…」
「我々神の想像を越えているんでしょうね、彼らは…」
「《星の民》…の元へ帰りたいと思えば我々も協力を惜しまず…」
「感謝と誠意を持って…」
「この《アタラクシア》を救ってくれた者に…手を差し出しましょう」
「そして次の召喚の儀式もまた…」
《神の庭》にて綴の正体を確認した神々もまた動き出す、彼らに感謝と誠意を…それは嘘偽りなく…。
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