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第7部 異世界帰りの魔王様はチートで無双したりしなかったり~サラリーマンの1から始める異世界ビジネスプラン~

STAGE.1ーFINAL おやすみ

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「皆さんお疲れさまでした、どうでした?」
「ま、水問題も解決したし。支援物資はライガルっちが用意するっていうし、食い物とかは大量に肉も収納袋と一緒に置いてきたから大丈夫じゃん」
畑に先に戻っていた綴達が出迎え、懐記達もテーブルに座りまったりとする。
「明日ゴーシュさんが解体したガンドくれるって」
「煮込みにでもするか」
「いんじゃない、固くて食えたもんじゃねーけど懐記なら美味くしてくれんじゃん」
「まあね」
「そうだ、いつも懐記君に食事任せてばかりなので今日は僕が作りますね。プールやお風呂でも楽しんで下さい」
「僕もお手伝いします!」
「俺もー」
「へえ、楽しみーならプールで酒でも飲も」
「いいねー」
綴、率、晴海、ナイル、千眼、ラウラスが食事チーム、懐記、千歳、大河、詠斗、チグリス、ジラ、ラジカがプールへと向かった。

「綴さん!何つくるの?」
「ずばりお月見つくね丼です、具沢山お味噌汁と炒め物でどうです?」
『さんせー』
残った晩御飯チームは早速準備に取り掛かる、肉ダンジョンの下層の肉を細かくミンチにして片栗粉と生姜チューブを入れて混ぜていく、その過程をナイルと率も行い大量に量産していく。
味噌汁は晴海が炒め物はラウラスが、飯は千眼が大量に炊いて、役割分担で作っていった。

「ん、プールで酒良し」
大河からビールを貰い干し肉を齧り、雑誌を見てオリガ達が作ったデッキチェアに座る懐記の隣で干し肉を齧りまくるチグリス。
「泳がないのかー?」
「んー気が向いたら」
「懐記…肉」
「ほら」
大河、千歳、ジラはクロール(大河がジラ達に泳ぎを教えた)で適当に競争している、ラジカはウォータースライダーでハル達と遊んでいる。
「お、楽しんでいるか」
ラドゥ、オリガ、タッセルもやってきてプールで泳ぎ始める、ラドゥはクロール、オリガは背泳ぎ、タッセルはプールに浸かっていた。
「カジノ楽しみにしてる!ダチ沢山誘っちまったけど」
「もちろん」
「ああ、何人でも。皆には世話になっているからな」
研修もまずまず、ゲーム性も千眼がメダルゲームを追加し、楽しめる要素も追加した。
「楽しみにしてます」
「俺もー」
会話しつつ泳いだり飲んだり競争しつつのんびり過ごし、夕飯時迄過ごした。

「ガンド捌くの後半分か、一休みするかー」
「んー」
龍皇国の下街『ゴーシュのなんでもや?』の裏手で晴海から貰った時間停止機能付きの収納袋から出したガンドを次々捌いて一休みする、血一滴も飛び散らせずナイフ一本で捌いては、不必要部分はすぐ燃やし水魔法で血を洗い流す。
「ほら、茶」
「ん」
適度な水魔法と火魔法で作ったお湯に風魔法で茶葉をお湯の中で混ぜ、木のコップに注いでティスに渡した。
気がつけば夜、外は暗いがドラゴンには関係ない。
「晴海から貰った茶、美味いな。ティータにも後で飲ませてやれよー」
「んー」
ティスは適当に地面に座りスマホを見ている、写真という機能が面白い、色々撮ってみる、街の歪で可笑しな建物、変哲のない穏やかな住民達、薄い幕が張られたような空、道や木をとにかく撮ってみた。
面白い、楽しめる、なんとなくあのチビ…に見せるよりかは、なんとなくライガルに見せてみたかったから試しにラインで撮った物を送ってみる。
すぐには返信は来ない、なんならこの眼で今何をしているか見ることも出来るが特に返信など求めていない。
「続きやるわ」
「うい、やるか。そうそう懐記がガンドの肉を美味しく食える料理考えてくれるって」
「…へぇ、そうなったらガンドこの国からいなくなりそ」
「…かも」

「ただいま」
「おかえり、ティス」
ガンドを全部捌いたら以外に遅くなった、家…木と石でなんか斜めに傾いた家、ドラゴンは住む家など特に気にしない。
「ご飯食べよう」
「先に食べてても良かったけど、ジジイからお茶貰った。美味かった」
「なら、お茶も用意するから。水浴びしておいで」
「ん」
家の裏手で水魔法で適当に服を着たまま水浴びし、風魔法で乾かす、平民のドラゴンの水浴びはその程度だ、家に戻れば食事が粗末なテーブルに並ぶ。
「いただきます」
「ん」
肉の塊を焼いた物と固くて大きいだけのパン、野草のサラダが大体の主な食事。
ゴリ、ガリと歯の力で噛み砕く、美味い…訳ではない。
「食べた」
「ごちそうさまでした」
皿を片付け自室に向かう、固い石の敷布を敷いただけのベッドに寝転んでスマホを確認すると、期待してなかったライガルからのメッセージが入る、写真1枚1枚の感想と最後に居城の執務室の窓から見える景色が送られた。
「忙しいんじゃねーのか」
ティスが笑う、伴侶だがお互いを今まで知ろうとしなかった…いや始まりが最悪過ぎたのだ、そのせいでお互いがお互いに…特にティスがライガルから目を背けていた。
「……俺達はこの距離でちょうど良い」
最後にメッセージを送って目を閉じる、明後日…いやまた明日にはまた会うのだそれで良い。

ライガルが執務室でスマホを見る、夜も遅く部下達を下げ今は独り静かな時間を過ごしていた。
ティスから送られた写真を眺め、最後のメッセージ『おやすみ』におやすみなさいと返した。
明後日…いやまた明日にはまた会える、今迄は1年に1度茶を飲む時間のみ、今のこのメッセージを遣り取りしている方が距離は近く感じられた。
「私は最初に貴方を見た時からずっと…」
言い掛け机に頬杖を付き、少し目を閉じた。
どちらかかが果てるまで変わらぬ関係とこの龍皇国、ドラゴン達の見解が今日始めて変わろうとしていた…。
それはこの関係に疑問を持った、あの小さな少年のお陰だった…。

STAGE.1 end…?





500年前ー

「ニジェルガさまー」
「ライガルさまー」
皇都の視察の命を受けニジェルガとライガルは、数名の護衛騎士と共に歩いて見て周っていた。
あちらこにらから聞こえる声に手を振り応える、兄…ニジェルガがにこりと微笑めば悲鳴のような歓声が広がっていく。
兄のように愛想良く…せめて笑顔1つ位浮かべれば良いのかもしれないが、ライガルは感情の起伏が乏しい、ニジェルガはそのままのお前で良いといつも言ってくれる。
だから、名を呼ばれれば手を振る、道に人が増え進む足も鈍くなる。
「あ、芋」
次はそちらの道に曲がろうかと足を向ければ芋が転がってくる、ニジェルガが民の相手をしているのでライガルが進み芋を拾う、向こうから芋を追いかけて来たのは紺色の髪と瞳の少年…の姿をしたドラゴンだがライガルよりは年が上だろう可愛らしい顔立ちのドラゴンが芋を追いかけてライガルに駆け寄った。
「どうぞ」
「え、ああ…どうも」
芋を受け取り頭を下げる、ライガルが彼を瞳に映したその時久しぶりにライガルの瞳に棲む共生眼の共生種…蜂の様な姿の何かがライガルの瞳を一瞬通り過ぎた。
「ライガル?行くぞ」
「はい」
何故かあのドラゴンの後ろ姿から目が離せない、ニジェルガに呼ばれ振り向き歩き出す、何故だろうかまた逢いたいとライガルは思った…。
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