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第09部 魔王たちの産声 歪

第019話 職業紹介所2

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「もう良い年だからな、冒険者以外の道筋を立てたい」
「分かりました…事前に記入して貰った書類には解体や革を鞣すのも得意だと」
「ああ、元々身体もでかく力もあるったからな。力作業は得意だ」
「では、《ガルディア》か《ホウラク》の肉の解体や加工はどうです?」
「解体をしていたのは大分昔だ、腕が覚えているかどうか…」
「挑戦してみませんか?」
「…させてくるのか?」
「もちろん、明日見学会を行うので朝此処に来て下さい。見てから決めて貰っても構いません」
「そうか…そうさせて貰う」
「はい、明日お待ちしています」
情報ギルドに設けた職業紹介所、綴とラジカと崇幸が本日は主体に動く、崇幸が相手希望や特技を聞き提案をしていく。

「私は冒険者でしたがパーティーの取り分で揉めてパーティーを追い出されてしまいました…ソロでやれる程実力は無いので…」
「そうでしたか、ソーンさん。事前に書いて貰った書類に元々はとある国の財政を管理する役職に就いていたと」
「はい、上の横領を指摘したら職を失い、冒険者…魔法が使えたのでそれを活かして始めた所、パーティーのリーダーの取り分が多く上前を掠めていた…それを指摘し…只、平等に働いた分を貰えれば良かったのですが…」
「なるほど、少しお待ち下さい。ケークスさん適正のある人財が来ましたよ。おまかせします、今商会の事務や経理を担当している職員を呼びました。そちらと話しをして下さい、丁度良かったです」
ラジカが話しを聞き、ソーンに《アウトランダーズ商会》の事務員ケークスを呼び話しを聞くよう頼む、数字に強い人財は歓迎だ。

「あ、あのぉ。冒険者じゃなくても仕事を…」
「はい、構いませんよ。どうぞこちらへ」
綴が一段落すると目の前に飛び込みの旅人の様な装いの青年がおずおずと受付に尋ねているので綴が笑みを浮かべ椅子に座るよう促す、名前はテスナというボロボロの装束に身を包み、痩せ細っていたので話しを手短にし食事をさせたいと綴は思った。
「テスナさんはどのような職業をご希望ですか?」
「なんでもいいです…と言いたい所ですが俺に出来る仕事があれば」
「そうですか、今迄どんな仕事されていたんですか?」
「えと旅しながら色々やりました、肉屋、食堂、畑の手伝い、狩り、解体、服作り、靴作り、お茶売り、パン作り、魚屋、家造り、木こり、護衛、荷物運び、戦場での炊き出し、穴掘り、採掘、加工、写本、鍵造り、娼館の雑用、舞台の設営、人形作り、ゴーレム作り、薬屋の補助、演奏家…後はー」
「色々しているんですね、明日朝職業見学会があるんです。良ければ参加しませんか?きっと気に入る仕事があると思います。宿や食事は僕達の商会が提供しますから是非」
「は、はい!よろしくお願いします」
綴の誘いにテスナの表情が明るくなり、他の職員に案内され別室で説明を受ける為に移動する、ラジカと崇幸は詠斗と懐記と交代し、ラジカは体調を崩し眠る千歳の元へ、崇幸はホテルの広間で千眼と依頼された物の製作に取り組む為に移動した。

それは誰かの過去の遠き日の思い出を、千歳は夢を通して見ていた…。
「邪神…人の成れ果ての果て…終着地…討つ他あるまい…」
「魔王よ…覚悟はもう決めている…」
2人の青年、傷だらけで血で汚れそれでも瞳は輝きを見失わす、真っ直ぐに魔王と呼ばれる存在を見ていた。
「その覚悟…良いだろう。王と英雄の命を持って封印を…邪神…を滅する事は不可能…それに最も近い形に持ち込む」
よく聞き慣れた馴染みの声、千歳は今千眼魔王の視点で過去を見ているようだった。
「彼らにも同情はするが、私は王だ…国の盾であり剣だ…いやだったか…」
「私もこの国の剣の一振として逝こう」
覚悟はとうに決まっている、燃える赤い空は民の命…国は滅んだ、残ったのは国王と英雄だけ、そして彼らもまた逝こうとしていた。
「手を貸してくれ感謝する…」
「ありがとう」
「……私は私の目的を果たすだけだ…お前達の結末に興味はない」
冷えた千眼魔王の声、皆の前では出さない冷徹さを含んでいた。
「それでも邪神を食い止めるれるのであれば…」
「頼む…」
止めてくれ千眼さん、他に他に…彼らを犠牲にしなくても済む方法はあるだろう…?
千歳は千眼の内で告げる…、叫ぶ、願う…届かない終わってしまった過去なのだどうにもならない。
そして…千歳は目が覚めてしまう、伸ばした手の先にはベッドに腰掛け此方を見つめるラジカ、千歳は身体を起こしラジカを強く抱きしめた。
「千歳?」
「どうして…なぜ…」
「千歳」
ラジカが千歳の背に手を回して抱き締め返した、暫くそうしてラジカは千歳の鼓動を感じていた…。

一方此方は職業紹介所の綴、詠斗、懐記、次の職探しの冒険者を呼ぼうとしていると、風早が躊躇いがちに…。
『マスター綴、詠斗様、懐記様…今から魔人3名と番外個体魔王が1体職探しに来ます……………通しても良いでしょうか?』
『は?』
3名の声が揃う、互いに顔を見合せとりあえずグローリーを呼ぼうかという結論に至った…。
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