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第09部 魔王たちの産声 歪

第018話 干物作り

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「おはよーす、父さんとトゥナーとクーランタークの皆さんと魚釣りまくったす」
「懐記さんよければ僕に美味しい魚料理を教えてくれませんか?」
「おけおけ…干物にでもする?ま、その前に朝飯ね」
本日は《アウトランダーズ商会》商業エリア以外全て休みを取り、各自休みを満喫する事にした。
スーパー銭湯もお風呂とレストランも休業、ホテルの宿泊客達も外で食べるなり調達するなり、もしくは《ガルディア》の炊き出し部(何時の間にか出来ていた)が出張でスーパー銭湯前でスープと串焼きを販売しているのでそれを利用する旨を伝えている。
今朝《島船》では懐記の指導の朝食や食事の試作をしている、主にソースの試作やスープや海の上なので魚料理等など試作が多くきゅうとふーが骨や鱗目当てでよく出没していた。
「海の上で寝るのもいいだろう?コォン?おはよう」
『どこでもいいのね~』
船に泊まったゴーシュとコォンも起き出し、チグリスとイシュターとジラに魚料理目当てに、トラングとカトゥーシュカ…それに。
「うう、飲み過ぎましたよ…酷いです支配人、しかも海ですよ!うみーうぷ」
「あ~そういう事いう?」
「2人とも席に着け、食事を持って来る」
昨日の昼に職業紹介所でラジカがカジノを紹介したテンテストが顔色が元々良くないのを更に悪くし、カトゥーシュカがトラングとテンテストの椅子を引いて朝食を取りに行く。
昨夜、早速碌な説明もされず制服を着させれ客とゲームしろと楽しませろというので…まあ、元から手先も良くすぐに順応し適度に客を楽しませ仕事終わりに従業員達と新入りの歓迎会という事で大いに酒盛りを…気が付けば支配人のトラングと、副支配人のカトゥーシュカとテンテストのみになり…いまこうしてここにいる…と。
「ほら、魚のスープと酔い冷ましだ。懐記殿から貰ったから飲むといい」
「うう…ありがとうございます」
「でも、酒強くて気入ったわ~よし俺達と同じ家な~」
「え!?」
「そうかよろしく頼む、ちなみに私とトラングは龍皇国で監視下の暮している」
「そそ、仕事と酒しか楽しみないのー」
「そんな事はない、ダンジョンで身体を動かすのも楽しい」
「ええー」
ホロホロと魚の身が崩れるほど軟らかく煮込んだ透き通るスープ、柔らかく煮込んだ肉とミルクの煮込みをスプーンで食べならが、そういえばいつも陰気臭いつまらない気が効かないなどと言われパーティを追い出されて来た、別に冒険者がしたい訳でも名を売りたい訳でもない…金を稼げれば…けれど。
「ええー」
「よし、布団と毛布と懐記殿に頼んで部屋を増やして貰おう」
「いんじゃなーい」
「え、い、いや」
「なぁに?」
「う…いえー」
「ではよろしく頼む」
「よろー」
「はい…」
なんでこんな事に?地味で陰気なテンテスト…彼の波乱な人生の幕開けは、今船の上で始まったばかりなのである…。

「じゃ、始めるわ。みりん干しと一夜干しで魚はまあなんでもいいわ」
《島船》の食堂に端から端までの長いテーブルを出し、興味のある住民達も集まり清潔な空間とボールに水を張り、消毒したまな板と包丁とエプロンを参加者は身に付け懐記の指示に従い開いていく、魚の鱗や骨や内臓は魔物や動物達が嬉しそうに平らげていった。
「あんた戦士か…冒険者か…剣聖かなんかだった…あ!!?げ!」
「あー気づいちゃいました?遅いですよ、ジラ君」
「げー懐記こんなヤバいやつ連れてくんなよ!あんたそんな感じだったの?」
「教えたのはニアっちー何知り合い?」
「はい、ほら先に魚を捌きましょー」
目の前で巧みに包丁を使い魚を捌くトゥナーにジラが尋ね、正体に気付いたがトゥナーから先に手元をと言われ、ジラが速度を上げて捌いていった。
「けっこう出来たわ、まず塩水に酒ね。おばあちゃんの作り方だからこの辺りはアレンジオッケ、開いた方を下にして60分位漬ける。みりん干しは全体に塩を振って10分後にさっと水洗いして、水気をふき取ってここに並べて、醤油とみりんと酒加えてと、そんで数回裏表返して2時間漬けてその後干せば終わり」
「食べるのが楽しみですねー」
「俺はあんたが気になるぞー死んだって聞いたが?」
「ご覧の通りです」
「茶でもしながら話せば?」
ジラがトゥナーに詰め寄り、ラウラス達はまたまだ作ると魚ダンジョンに向かい、懐記が湯呑みと緑茶の準備とせんべいと羊羹を出してくれた。

「トゥナーっちて有名人なんだ?」
「まあ、戦場じゃ俺が傭兵王になるずっと前から有名だったからな」
「そんな事は無いですよ、このおせんべいとようかん?おいしいですねー」
トゥナーが前髪で隠した目線をジラに向けせんべいと羊羹を食べて笑みを溢す、ジラは頬杖をついて白けた顔をしていた。
「このマンドランドとお化け野菜達が通りで嫌う訳だ」
「う、う…私も仲良くなりたいんですよ?」
「同じ強さなら、ジラっちのが綺麗でいいってー面食いだわ」
「う、どうせ地味ですよーそりゃジラ君の容姿を持ち出されたら…派手ですしー」
テーブルには漬けた魚の出来上がりを待つ、懐記、ジラ、トゥナーの3人でお菓子に手を伸ばし、懐記が濃い目の緑茶を淹れてくれずずと啜った。
「化け物の強さをあいつらが理解してるだけだろ?で、目がおかしくなったんだって?万能薬あるけど?」
「これは呪いですから、まあこの目のお陰で《テンランド》は僕を諦めて僕は戦場から降りましたから…呪いもまた祝福だと感じました」
「ふうん、《テンランド》ねぇ」
「はい、強者を欲する国に目を付けられてしまい。断ったら力づくと権力で国に召集されそうになり戦場から降りられなかったんですが目をおかしくした事で興味を失ったみたいで戦場を退けました…だから呪いで祝福です」
「ふうん、これからはうちの社員食堂のシェフだしー」
「うわー懐記マジかよー本当こいつすげーんだけど…」
「僕は構いません、満足してます。ジラ君食べに来て下さいね」
「うぇー」
ジラが嫌そうにしている、こういうジラは珍しいと懐記は思いつつ誰にでも聞かれたくない言いたくない事はある、懐記は緑茶を飲んでジラとトゥナーの会話に耳を傾け夜は何にしようかと物思いに耽った。
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