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第010部 魔人達に捧げる禍つ謳

第5幕 第8話奴隷商人×STAGE.5ー8みんなで作ろ

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第8話奴隷商人
タナトスは奴隷市場を歩きながら周辺を見ている、その仕草に意味があるとテスナとソーンも周辺を見る、露店で檻に入れられた澱んだ空気、首輪に繋がれ茣蓙に座る奴隷、圧倒的に獣人達が占めている、正直テスナもソーンにはキツかった。
「この奴隷を下さい、市場の先の馬車に運んで下さい」
タナトスがランダムに獣人の奴隷達を選びチップを弾んで運ばせる、更に奥へ進めば気配がなく物陰から小柄な顔半分爛れた男が現れた。
「けひ、お客様。うちの奴隷も如何です?」
「見せて下さい」
「けひ、どうぞどうぞこちらこちら」
薄汚れた奴隷商人に誘われ、路地裏を案内されている間もタナトスは周囲を見ていた。
案内されたのは狭い広場に、粗末な小屋から赤子の鳴き声が微かに聞こえてくる。
「けひ、此方です」
「名前は?」
「けひ、しがない商人です。ワンズとでもお呼び下さい」
「では、ワンズさん貴方の店の奴隷全て買い取ります。赤子がいますね。獣人と混ざりものですか?」
「けひ、どうもどうも。赤子は駄目です」
中を見てもいないタナトスが奴隷商人…ワンズが即座に断る、奴隷商人としての矜持はあるよう爛れていない方の目で真っ直ぐタナトスを見つめた。
「親は死んでいるんですね」
「……ええ」
「いいでしょう、悪くない。貴方ごと買い取ります20億ログで如何です?奴隷、貴方の治療も行います」
「……いや、その私は…」
「治りますよ、問題ありません。20億で足りませんか?幾らでも良いです、彼らに教育も施します。彼らは龍皇国の孤児院で面倒を見ます。大人の奴隷にも職を与えますよ、如何です」
「けひ、ほ、本当ですか?」
「その代わり、新たに作る奴隷ギルドの私の片腕になって貰います」
「けひ……分かりました。金は…100万ログ程あれば…1つお願いがあります」
「はい」
「馴染みの薬屋と言いますか…医師のような事をしている馴染みがいます……つけられていますね…けひ、場所を移動しましょう」
「構いませんが、いいでしょう。貴方達見張っていて下さい」
ゴーレム達に念の為見張りを任せ、ワンズに案内されて移動した。

STAGE.5ー7 みんなで作ろ
「う、うまそ」
「味見していいぞー」
「いいのか?」
「自分で揚げたんだから」
崇幸の指示の元、盗賊団達が野菜を刻み肉を炒め、唐揚げとカツの下拵えをした物から順に揚げていく。
唐揚げを揚げた男が嬉しそうに唐揚げを味見し、はふはふと噛んで食べた。
「うめぇ!」
「油…贅沢ですね…」
「そこがいいんだぞ、ケチケチしないのが男の料理だ!」
スウイがダンジョン肉のカツを揚げながら、使う油の量に感嘆としていた。
「ゆき…ご飯まだ炊きます、お米下さい」
「お、ありがと、頼む」
「ゆき……ルーが欲しい」
「はい」
「俺、こんな沢山の肉見た事ねぇ」
崇幸が千華に米を渡し、千眼に数種類のルーを渡して炒めた野菜と肉を大鍋に移して煮込む作業を行う、足りないだろうとコンロを追加で作り大鍋を盗賊達と煮込む特に何も言わないがまさか魔王2名と料理しているだろうと夢にも思わないだろう…。

第8話奴隷商人
「この間の薬代はまだ払えねーぞ、明日ダンジョン潜って金作るからまっ…お前か?なんだ、上等な客連れて」
ワンズの店から少し歩いた先にあるオンボロな小屋、ワンズがノックもせず立て付けの悪い扉を開ければ此方を見もせず
男が伝え、振り向けば目の下の隈がひどい無精髭の男と目が合う。
「オーケス…話しがある」
「俺もお前にその顔の事で…ま、ここは狭いし外で…」
「先生!」
「あー客だ」
「金を取らないのは客と言えますか?」
「あーごもっとも」
「貴方達、監視の目を引いて下さい。テナスさん懐記…いえ詠斗と綴を呼んで下さい」
「分かりました」
オーケスという男が気だるげに腰を上げて呼ばれた声の方へ行き、ゴーレムもタナトスの指示に従い此方監視している目の方へ移動した。

「いや、もう懐記の店大繁盛でさー」
「目的分かってます?」
「はい…」
風魔法で監視を撹乱させている間に詠斗を呼び、オーケスの元へ運び困れた獣人をオーケスが外で視ている、赤い顔…どうやら熱があるようだ、ガリガリに痩せ細った子供と運んで来た獣人の男も薄汚れていた。
「あの、金はいらないからこの薬草とか使って、俺知識ないから手伝えないけど薬もあるよ。俺は詠斗」
「これ、上等な混ざりもんなしのやつか。使わせて貰う、俺はオーケスだ」
「うん」
「詠斗、彼の病を治せる程の薬はありますか?」
「えーとこの辺?」
「完全にとは言えないが良いでしょう」 
「すみません、遅くなりました。ドローホール中々退治出来なくて…」
「目的分かってます?」
「はい……」
「綴さん、薬ある?上等なの」
「この間使ってしまったのでこの辺りですね、トラングさんが持ってます。今薬草ダンジョンにチグリス君達が入っているのですぐに手に入りますよ」
遅れた綴にもタナトスが嫌味を飛ばしつつ2人の持ってる万能薬を受け取り、ワンズに渡して飲むように伝えた。
「けひ……」
「そのうち顔も咳も良くなります」
「こっちも熱が引いたな、良い薬だ。薬草ダンジョンなんかこの国…いや周囲にないだろう」
「こちらも、訳ありです。ワンズさん彼も連れて行けばいいんですね」
「あ、あのまだけひ、治して欲しい奴隷がいるんです、金は払うのでももう少し薬を」
「貴方、それでその顔を放置したからそこまでひどくなったんでしょう、それは貴方に渡した物です他に使うの許さない」
「ど、どうか…ここにはそんな者ばかりで…」
「どこにいるの?ケガ!?病気!?」 
「僕が持っている薬全て出します、どこですか?今日中に薬を追加で持って来ます」
狼狽えタナトスから受け取った薬の瓶を握り締めるワンズに、詠斗と綴が優しく言っているのをタナトスが冷えた目で眺め杖で地面を叩く。
「いい加減にしろ、お前達は目的があってここにいるんだろう。私はお前達が奴隷ギルドを作れ奴隷を買えというからここにいる。ああ、魔人のガキ共を助ける気がないから他の奴隷を助けているのか?偽善者ども」
「おい!」
「待って下さい詠斗君、貴方に不愉快な思いをさせた事は謝ります。ですが、こうして困っている人達がいて僕達が出来る事が有るならば手を伸ばしたいんです」
詠斗がタナトスの挑発に乗ろうとし綴がそれを止める、深々と謝罪した。
「は、そんな事を言ってばかりだから見つからないのだろう?私はもう番外の足取りを掴んだ」
「本当ですか……タダで教えては貰えなさそうですね」
「ああ、お前達が下らない事に気を取られてばかりいるからな。そうだな、私をここから逃がせ。そうすれば番外の居場所と魔人のガキ共の居場所を教えてやる」
「そんな事出来るか!」
「詠斗君、時間はありません」
綴、詠斗とタナトスの睨み合いに終止符を打ったのは、スマホを持ったタナトスが修復したゴーレムだった。
『おーい、タナトス聞こえているか?エクトとセレネがおしゃべりしたいって』
『あーう!』
『うん』 
『タナトスちゃん、オムライスはまた作るから頑張ってね。明日帰ってくるならすき焼きにするよー』
『み、みなさん頑張って下さい!』
ゴーレムがスマホの通話ボタンをスライドさせれば、馴染みのウォルゾガ達の声が聞こえる。
『グリがお前迄駆り出して申し訳ないって言っていたが、頭の良いお前ならグリ達の力になれるだろう。帰り待っているからな、気を付けろよ』
『うー!』
『うん!』
手短に要件を伝え直ぐに通話が切れる、ゴーレム達が心配げにタナトスを見上げていた。
「…で、どうします?居場所と引き換えに私を逃がしてくれますか?」
「…わか……」
「待ってくれ、あんたらが探している奴らの場所なら心辺りあるぞ」
「本当?」
「ああ、だが…」
「場所を変えましょう」
「ち」
タナトスは顔色1つ変えずに何事もなかったかのように話しの続きをし、綴が承諾しようとした所でオーケスが間に入りちらと周囲に目を配らせ綴が頷きタナトスが舌打ちをした。
「先生!すまん、見てくれ!」
「あ、ああ」
「…テスナさんソーンさんは1度奴隷の皆さんを連れて街を出て《島船》に戻って下さい、奴隷の皆さんを預けたらまた馬車で街に入って下さい。そして薬をありったけ貰って来て下さい。戻ったらラインをお願いします、転移札を使って下さい。タナトスさんにはここに残って貰います。ゴーレムの皆、ヒヨコ達、彼らをお願いします」
「分かりました!」
「すぐ戻って来ます!」
綴がテスナとソーンに転移札を渡し、ゴーレムとヒヨコ達を連れて急いで馬車へと駆けて行く、詠斗はオーケスの指示に従い手伝いを始め、タナトスは不機嫌そうに壊れかけの壁を眺めていた。

『迎えが来たのは有り難いが、眼がある、これ以上チナス殿からは離れられないとくりゃ仕切り直しだ。あの兄さんは気づいたが中々複雑そうだぁー』
壁の穴の中でネズミが動き、仕方ないと引き返した…。
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