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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

第019話 歓迎会

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時間は遡る、龍皇国夕方…わいわいとトラング達の家の前ではバーベキューの準備がされていた。
大河から連絡をうけたカトゥーシュカ達と、ベルン達ゴーシュ達、グローリー達が妖精の歓迎会を行おうと集まり皆で食材を持ち寄りちょっとしたお祭り状態だった。
「もうじき来るそうだ、ナビヤ…新しい家族だよろしく頼む」
「ナビヤちゃんの弟ですよ」
「仲良く仲良し」
「あーい」
「もう1人や2人増えても変わらなーいな」
テンテストの腕に抱かれるナビヤは鉱物を加工し細工を施した首飾りを下げ、また揃いの首飾りを手に持ち待っている、最近カルの所にいす魔人の幼児が始めて鉱物ダンジョンで倒した魔物からのドロップ品でカルが加工し子供達に配った物をナビヤがスマートフォンでカルに連絡し似た細工の物を用意して貰った。
「そろそろ来るってー」
「飲みもの用意しよー」
トラングがスマートフォンで大河からのメッセージを確認すジゼが飲み物とコップを並べていく、最近は食材集めや調味料作りに、大人向け卵ダンジョンにナイルのナイルの手伝いをしているツェーヴェとオーブ達も野菜の準備やスープの用意をしている。
「にくにく~追加持ってきたぞ」
「こっちは魚の追加をお持ちしました」
肉ダンジョンに住み着いているドラゴン達やフユーゲル達、ラドゥやハル、きゅう達も訪れご近所のドラゴンや住んでいる他の種族達も集まりそうして大河達が転移で《空船》から訪れた。

『ようこそー』
すっかり夜になり光魔法や火魔法で周囲は明るく、そして皆も歓迎してくれた。
大河達も人数に驚いたがカトゥーシュカに妖精を託して頭を撫でてやる、妖精は大河を見つめている。
「沢山、楽しい事がこれから起こる」
「今日から私たちが君の家族だ、選んでくれてありがとう」
「あーい、ナビぃーどぞー」
テンテストの腕に抱かれたナビヤがニコニコと妖精に首飾りを差し出し妖精は首を傾げる、トラングがそれを受け取り首に掛けてやる。
「こいつはナビヤ、お前に贈り物だよ」
「あいー」
『…………』
「こういう場合はありがとうと思っておけばいいぞ」
ラピスがそういえばコクリと頷く、ライガルやニジェルガも訪れ挨拶や自己紹介しつつ歓迎会が始まった。

「あ、またヒヨコちゃん達けんかしている、ダメだよーほらこれ食べて」
「この白黒ヒヨコ達はなんか怒っているな、グリにも」
「………ごめんね」
グローリー達の卓でエクトとセレネ達に焼いた肉を食べさせ、イビヤ達はメシュレラが果物やミルク粥を食べさせていた。
「弟、そのヒヨコ達は転移や空間系から生まれているな。魔力を入れ過ぎている、少し魔力を抑えて発動するといい」
「はい、お兄ちゃん」
「……」
「ほら、タナトス。肉と飯な」
「……」
その遣り取りを無言で眺めているタナトスにウォルゾガがが焼けた肉とご飯を目の前に置き、「いただきます」と食べ始めた。
白黒の斑ヒヨコ達はグローリーに何か抗議をしているようだ、グローリーはそれを無言で眺め宥めながら野菜と果物と焼いた肉を置いてくれたカーテスの所へ集まった。

「モギのミルクどうぞベルンです」
「おいしいよーカタンだよ」
ベルン達も挨拶しモギのミルクを渡すとコクコクと美味しそうにミルクを飲む、率達がチーズフォンを用意し場が盛り上がり酒や飲み物が進む。
ドラゴン達が自分が作った料理を持ち寄り、カーテスの元ご近所の希少種の友人たちも訪れ、コォンやチキ達もゴーレム達に世話されヒヨコとおりがみと子供達に囲まれうんざりしつつ肉と野菜と酒を楽しむ。

「少し遅くなった」
「ああ、此方へ」
ラージュも遅くなったが魔人の幼児を連れて訪れる、ニジュルガが席に案内し飲み物を渡した。
「カンパイ」
「カンパイ」
魔人の幼児はライルと孤児院の子供達が預かり皆で食事を楽しんでいる様子をラージュが眺めて顔を綻ばせ、その様子を眺めている、そんな様子をニジェルガもまた静かに眺めている…そうして大変賑やかで明るい歓迎会はゆっくりと過ぎて行った…。

「おやすみなさい…」
『おやすみー』
歓迎会が終わりお風呂を済ませて寝る準備を行い布団に潜り込む、全員並んで寝るのが日常だ。
明日店があるエツィア達は率と共にチャスの家で寝て早目に起きて工場にも行くというので今夜は別行動だ、皆寝つきが良く部屋が暗くなれば動物達も入り皆すぐに寝息を立てていく。
暫くしてグローリーが眼を開けそのまま転移で外へと向かう、3階の執務室で仕事をするというのを言い訳にしているタナトスがその気配を感じ嘆息して立ち上がった。

「もう少し……」
「もう少しで何があるんですか?」
「タナトス…」
グローリーは森の奥の方で待ち合わせしていたゴーレム達に待っていて貰い、転移魔法の練習を行なっていた。
「このヒヨコ達おかしいとは思っていましたよ、よくメシュレラ目を誤魔化せ…いや見逃してくれているのか…」
「うん…お兄ちゃん…分かってる」
転移魔法で生まれる白黒ヒヨコはやけにグローリーに攻撃的だ、反対しているのだ使うなとイザラ達が《アタラクシア号》で旅立った日から毎晩練習しているせいか膨大な白黒ヒヨコ達が生まれ、見るに見かねた現在建国中の《ゴーレム国》のゴーレム達が引き取ってくれている。
「今現在の貴方には超長距離転移は出来ないと踏んでいるんです」
「でも…やる」
頑なな意思のグローリーに木に凭れ呆れるタナトス、おろおろするゴーレムに止めろと抗議するヒヨコ達…に最初に諦めたのはタナトスだった。
「教えてやる、転移と長距離転移、超長距離転移は似て非なる魔法だ。外神がやって除けているのその3つの魔法を魔法具かどうかは知らないがあの銃を使って補助して行っている。お前の考え方は間違っていない、そのヒヨコ達が魔法具として超長距離転移を可能にするのかもしれないが…そのヒヨコ達は反対している」
「うん…」
「はあ、そこで魔法具を造る…」
「まほうぐどうやって?」
「それならば材料は私が提供しましょう」
「ちっ。呼んだ覚えはない」
「ええ、でもこんばんは」
「…こんばんわ」
暗がりから気配も音も無く嗤う蒐集家が訪れタナトスが舌打ちし、グローリーが挨拶を返す。
「大河はどうした?」
「寝ていますよ?」
「お前のベッドでか?」
「さあ、そんなつまらない事気になりますか?」
「は、まさか」
蒐集家の薄ら笑いをタナトスが鼻で笑い返す、蒐集家が収納空間からテーブルと材料を並べていく。
「造りますか?」
「うん」
「止めろ造るなら私が材料も造り方も教える、こいつに関わるな。神も悪魔も取引には代償が付き纏うと教えられている。グローリーこの目の前にいる何かはお前が信じるに値するのか?」
「グローリーさんタナトスさん今回はグローリーさんに依頼をしたいんです、それの対価が魔法具です」
「何をやらせるつもりだ」
警戒心を露わにするタナトス、グローリーは息子達に会いたい一心だ、今回の空の旅も孤児院の子供達に逢いたいと思うグローリーの我が儘から始まった事だ、晴海と空が無事なのに戻れないのも、千歳達が苦心しながら旅を進めているのも全てはグローリーから始まっている、自分が外神のように超長距離転移が出来るようになれば自由に子供達に逢いに行ける。
「おい、履き違えるな。お前の子供達もお前の周囲にいる者達も会いたいから旅に出ている、旅に問題は付き物だ。お前のせいではない」
「おや、随分肩入れしていますね。情が湧きましたか?」
「黙れ、神」

グローリーの思考を呼んだタナトスが否定する、蒐集家が面白そうに言えば即座にタナトスから厳しい声が飛ぶ。
「待ってタナトス、俺…タナトスも蒐集家さんも好きだよ。困っているなら話しを聞く…」
「お前…」
「それ嬉しいですね、千歳んや大河さんが話しているのを聞きましてね。私の依頼はこれから崇幸さん達が向かう事になるジラさんの因縁の地《ノゼバ国》において死者が蘇るのかどうかです」
「《ノゼバ》…あの場所は………」
「死者は蘇らない…」
「ええ、そうですよ。蘇りません、それが本当かどうか確かめたいのですどうですか?」
タナトスが《ノゼバ国》という単語に考え込む、グローリーが首を振るが蒐集家は嗤い…チリン…グローリーが引き受けるのか待つ。
「まさか、お前が言っているのは《英雄王・黎風》ナギ…様の事か?」
「はい、彼が蘇っているのか……いえ違いますね、彼が今も生きているのか見て来て下さい。それだけでいいです、貴方の眼ならば分るでしょう」
「うん」
「……本当にそれだけか?」
「ええ、私は長距離転移出来ますし」
「……グローリー私もその件気になる、受けてくれ。死んでいる事を確認してきてくれ」
「…分かった」
「では交渉成立ですね、今日はもう遅過ぎる。明日またこの時間に此処で」
「うん…」
「帰るぞ、君達も戻れ」
タナトスがゴーレムに帰るように指示を出し、ゴーレム達がぺこりと頭を下げて帰っていく、身体に絵が描かれている、タナトスが描いたゴーレム達だ。
蒐集家は蘇っているかの依頼、タナトスは本当に死んでいるかの確認…グローリーは聞きたい事があるがそれは止めて静かな森を抜けて家に戻った…。
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