あなたは異世界に行ったら何をしますAnotherSid~器用なおっさんは異世界に行っても器用なおっさんです〜

深楽朱夜

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あなたは異世界に行ったら何をしますAnotherSid~器用なおっさんは異世界に行っても器用なおっさんです〜

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「どうしようか…」
職業安定所…ハローワークから出た中年男性はとぼとぼ歩く、人の流れ皆同じような眼をしていた。
このまま鬱々とした気分を少しでも晴らそうと唯一の趣味の図書館に向かおう、何時までもこんな気分を抱えていても良くないな…。

図書館に向かい好きな時代小説のエリアに向かう、好きなのは戦国時代や江戸幕末の小説が好きだとだけど目が辛い老眼だ、眼鏡がないと細かい物と字が辛くなっている…この眼で今までの生きがいの仕事を続けにくくなって退職して…ハローワーク通い…いやダメだまた気分が沈んでしまう。
気を取り直して棚から気になった小説を1冊取り、落語のCDをカウンターで借りて視聴質で聞きながら本を読む、唯一の趣味スマートフォンで事足りる事を図書館で行う、そうして少しだけ現実から目を背ける。
宮本 幾眞(みやもと いくま)もう53歳だ家庭もパートナーもいない、両親はとうに亡い、退職金だって雇用保険にだって何時までも頼るわけにはいかないと思いつつ、落語を愉しみ老眼鏡を掛けて読書を楽しんだ…。

「あの小説面白かったな、次はあの著者の他の作品を読もうか」
夕方、閉館時間で図書館を出た乗って来た自転車と共にスーパーで今夜の晩ごはんにもやしと豆苗とシーチキンのピリ辛にんにく炒め、油揚げに豆腐を入れて焼いて、味噌汁は値引きされたネギ、重いが米5キロを買い込みアパートへ向かう、見た目は細いが胃下垂で良く食べる幾眞は節約料理が得意だった。
「はあ、自転車で来て良かった」
車は会社の物を使っていたので足は自転車のみ、漕いでいれば少し先の道に穴が開いて…。
「あ…」
気付いた時にはもう遅い自転車毎穴に吸い込まれていく、その時幾眞は家の冷蔵庫の卵の賞味期限が気になった…。

魔都《禾楼(カーロウ)》雑多な多種民族の坩堝、謎多き暗刻街は朝から夜、夜明けの無い街だった。
自分と他人の街、最低限の法の元、人は雑に暮らしていた。
「へへ、賭けは勝ったぜー貰いー」
「あークソ」
「しね!鴎(おう)」
「あーちくしょ、今日の稼ぎパァだぜ!」
「幾らでも言え言え、負け犬ども!」
煙くゆる薄暗い店の中、テーブルで騒ぎ立てる4名の男達、その中で一際若い鴎と呼ばれた青年がどうやら賭けに勝ったらしい卓に投げ入れられた札を集め給仕に渡し換金し出された巾着を仕舞い店を出た、後ろの罵詈雑言を聞き流し鴎は家兼店に戻る手前の屋台で肉まんでも買うかと鼻歌混じりに歩いた。

鴎は機嫌が大層良かった、最悪な相棒とは昨日は揉めずに仕事を終えチップも貰い、先程の賭けは大勝ち、そして今日は休みだ家に戻り少し寝たらお気に入りのホラー映画を一気に観る、寂れた映画館で一挙5本立てを観て過ごす、完璧な1日だだかららしくもない1楼にもならない人助けなんて物をしてしまった。

「ここドコかな?映画のロケに間違えて入ったのかな…」
そう呟く男の声、歳は…まあ中年、髪は灰色だ眼鏡を掛けた地味なおっさんだが、なんだか見慣れぬ乗り物と籠には葱とか…とにかく雑多な人種の魔都でも浮いている、周囲もその男に視線を向けるがすぐに興味を失う、金がありそうならカモやスリの餌、見目が良ければ人拐いて所だがこの魔都は綺麗な生き物が集まる、凡以下の中年など見向きもされない、鴎は好奇心と機嫌の良さに任せ声を掛けた。
「おっさん、何してんの?」

「え?あ、すみません、ここはどこです?」
「は?自分のいる場所も分かんないのかよ、記憶喪失か、ヤリ過ぎかそれともボケてんのかよ」
ここに来ておよそ1時間、見て見ぬ振り、声を掛けて此処は何処なのか聞くと頭がおかしいのかと足早に立ち去られ途方に暮れていた所に声を掛けてくれたのが…とんでもない美青年だった。
「すみません、記憶喪失のようで…」
色白な肌に右眼は金、左眼は蒼、朱い髪は腰まであり蒼い紐で纏め前髪の半分はと同じ蒼色で青年に良く合う。
今青年に言われた中で1番まともな記憶喪失を選択してみる、いや、その方が話しは通りやすいだろう。
「最近粗悪な薬が出回ってるしなー移民も多いし」
「そうなんですか、え?あ、建物が増えた…」
「そりゃ増えるだろ、生きてんだから」
「え?」
「マジ記憶喪失かよ、助けてくれるやつなんかいないぜおっさん」
「そんな…」
青年と話していれば視線の先で建物がズズ…と動き増える、驚けは生きているか動くし増えると言われ…途方に暮れる、日本から別な世界に来てしまったと言う事なのか…どうしたら良いんだろ…。
「しゃーねーな、俺は今機嫌がいい。おっさん裏表どっちだ?」
「え、あ、お、表で」
困り果てている姿を見て少しの悪戯心とらしくもない親切心で懐から出した1楼硬貨を弾く、咄嗟に表て言い青年は手の甲に硬貨を置き手を乗せ開いてニヤリと笑った。
「表だ、おっさん。俺が面倒見てやるといっても寝床を貸してやるだけな、俺は鴎。行こうぜ」
「え、あ、ありがとうございます!私は宮本 幾眞と申します、お願いします!鴎さん」
「はっ、こっちだ」
笑うと鴎の口から鋭い牙が覗く、幾眞は藁にも縋る思いで自転車を押して鴎の後に付いて行く。
これが魔都《禾楼》を大きく変える邂逅、たった1人のおっさんの手によって革命が起きるその幕開けだった。

それではまたお会いしましょう、頑張ります 
             宮本 幾眞でした…。
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