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17話
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「なるほどな。それで帰って来た訳か」
「あぁ…魔獣の域を超えてるように感じた」
自宅に着くと直ぐにレオンに料理を要求し、今回の顛末を料理のアテとして話す。
「よく生きてたな」
「なんだそりゃ?…黒い竜の事知ってるのか?」
「まだロイスには教えていなかったな。その竜、黒竜は……禁忌の魔獣だな」
珍しくレオンが真剣な表情で語る。
「禁忌の魔獣?」
聞いた事も無い単語だ。何か特別な意味があるんだろうが、なぜ今まで教えなかったのか…
「世界には…各地の未開拓地を平然と渡り歩く魔獣がいる」
「それが禁忌の魔獣なのか?」
「あぁ…決して戦ってはいけない魔獣、それが禁忌だ」
「大げさじゃないか?確かに強いとは思ったけど」
「そりゃ遊ばれていただけだ。本気ならロイスはここに居ない」
「俺が本気を出しても?」
「厳しいだろうな。禁忌とはそれ程の存在だ」
レオンがここまで言うとは…これは退いて正解だったという事か。
「黒竜以外にもいるんだよな?」
「まぁな。今回の黒竜の他に天虎、鳳凰、彗蛇。俺の知っている限りではこれだけいる」
「そんなに!…にしても詳しいな。アリスでも知らなかったのに」
「そりゃそうだろ。禁忌と名付けたのは俺だからな」
「レオンが!?」
それが本当ならアリスが知らないのも頷ける。知る為にはレオンから聞き出すしかない。
「古い文献には禁忌らしき魔獣の事が記されているが、総称も無ければ個体名もない。だから直接見た俺が名付けた」
「なるほど…なら何で俺に教えなかった?」
「もっと実力が付いてから教えるつもりだった。何せ禁忌の魔獣は、今のロイスでも踏み込めない未開拓地の奥に生息しているからな」
「つまりレオンはそんな奥まで行けるのか」
レオンが強い事は知っている。レオンに勝てる奴なんていないとも思っている。だが、それでもまだレオンの底は計り知れない。
レオン自体が禁忌ではないだろうか……あり得る。禁忌の魔獣レオン…何故かしっくりきた。
「奴らの移動するルートは決まっているはずだが…まだまだ謎が多いという事だろう」
今回黒竜が現れたのは完全なイレギュラーという訳だろう。そのイレギュラーに偶々出くわすとは運が良いのか悪いのか……まぁ禁忌の魔獣が居ると知れただけ良かったと捉えるべきだろう。
「取り敢えず……寝る」
レオンの話で謎が解け、少しすっきりしたロイスは直ぐに就寝した。思っていたより疲労が溜まっていた様で、直ぐに夢の世界へ落ちて行った。
それから数日後、ロイスはいつもの薄暗い部屋にいた。依頼の紙が無いか定期的に見るのも調達屋としての仕事の1つだ。
「依頼は…無しか」
部屋に紙は置いていなかったが別に珍しい事ではない。最近はずっと依頼続きだったが、本来調達屋の仕事はそう多くない。
「ん?…誰か来る」
ここに来る何者かの気配を感じたロイスはローブを深く被り直す。そして出来る限り気配を断つ。
すると一人の男が姿を現した。それも見知った男だ。
「ここが…調達屋に会える場所……なのか?…ボロボロじゃねぇか」
「悪かったな」
「おわっ!…誰だ!」
気配を断っていたロイスが喋った事で、男は心臓をドキッと鼓動させた。
「俺が調達屋だ。依頼か?」
声を低くしておいて良かった。普段から声は変えているが、地声で話していたら正体がばれていた。
何故なら、部屋に現れた男はガイウスだからだ。先日一緒に仕事をしたばかりなので声を覚えている可能性は高い。
「い、依頼だ。金さえ払えばどんな要望でも叶えてくれると聞いた」
よくここが分かったものだ。調達屋なる者がいるという噂は聞いたとしても、ここに辿り着ける情報を得るのは簡単ではないのに。
「俺が居る時に来るとは運が良いな。けど一つ間違いがある」
「間違い?」
「どんな要望でも叶えるというのは違う。俺の仕事は調達だ」
「あ、あぁ…分かった」
「で、依頼内容は?」
「黒い竜を倒して欲しい。つまり心臓だ」
「黒い竜?」
ここは敢えて知らないふりをした。
剣の処刑林を開拓している事は国中で噂になっているが、黒竜が現れたことまでは伝わっていないので知っていては不自然だ。
しかし黒竜の依頼とは……厄介だ。
「剣の処刑林を開拓中に黒い竜が現れたんだ。その竜に俺ともう一人を除いた仲間がやられた」
「復讐か」
「違う!確かにその気持ちはあるが…黒い竜がトーレリアス領内に侵入した。このままではこの国は亡びる」
おっと…流石に驚いた。
ロイスの知らぬ間に黒竜は未開拓地から出てしまった様だ。
だがその割にカイレンの町が慌てた様子は見られない。普通あれほどの脅威が現れれば、今頃逃げ惑う人々で溢れている頃だ。
考えられる理由はただ一つ。国の上層部が情報を流れない様に操作しているからだろう。
もし国中に広がれば、黒竜が領内に入ったのは開拓をした所為だと非難を浴びるのは目に見えている。それが更なる被害を生む事になると何故気付けないのだろうか。
「討伐隊が組まれたが呆気なく全滅した。もう頼れるのはあんたしかいない!噂通りの実力なら黒い竜に勝てるんじゃないのか!?」
「………少しここで待て」
レオンに禁忌の魔獣について聞いたばかりなので返事に迷っていると、ここに近づくもう一つの気配を感じた。この気配は最も信頼している男、レオンの気配だ。
ロイスはガイウスを部屋に待たせ、外に出る。
「珍しいな。レオンがここに来るなんて」
「さっきアリスに会ってな。気になる事を聞いた」
「気になる事?」
「もしかして、黒竜の討伐依頼が来ていないか?」
「丁度来ている。どうするか迷っていた所だ。レオンの言う通りなら俺じゃ勝てないし」
「やっぱりそうか。その依頼…受けろ」
「は?」
決して戦ってはいけないと言った本人が何を言っているんだろか。レオンの事だから何か裏があるんだろうが…意図が分からない。
「俺も出る。2人なら勝てるだろう」
「いやいや…いきなりどうした。何か目的があるのか?」
「今のロイスの実力を測る良い機会だと思ってな。お前にとっても今後に繋がる良い経験になるはずだ」
確かに禁忌の魔獣と戦えば経験値は計り知れない。だがロイスがこんな事を言うのは初めてだ。
「いずれロイスには未開拓地の奥地まで行ってもらうつもりだからな。その為の修行だと思え」
「まぁ…レオンが言うなら構わないけど」
「因みに報酬は国からも出るぞ」
「国から?正規な訳ないよな?」
「もちろん。上層部の奴らを脅して出させるのさ」
レオンの言い草だと、倒した後に上層部を脅す様に聞こえる。出し渋る可能性は高いがレオンの事だ、しっかりと報酬を貰ってくる事だろう。
「分かった。受けよう」
部屋へと戻り、ガイウスに依頼を受けると伝える。
「本当か!感謝する!」
「報酬は前金は1000万。達成すれば追加で1500万ゼルの合計2500万ゼルだ」
「2500万ゼル!?」
2500万ゼルは一生を遊んで暮らせる金額。ガイウスが驚くのも無理はないが、禁忌の魔獣を倒すのだから寧ろ安い方だ。
それに開拓者は稼げる職業だ。現場の責任者になれるガイウスならそれくらい持っていても不思議じゃない。
「わ…分かった。支払おう」
「前金の1000万ゼルは今持っているか?」
「今は手持ちがない。直ぐに持ってくる」
暫く待っているとようやくガイウスが戻ってきた。その手にはずっしりとした袋が握られている。
「前金の1000万ゼルだ」
手渡された袋の重さからして1000万ゼルはあるだろう。
「よし、契約成立だ。俺はすぐに出発する。無事倒せる事を祈っとけ」
部屋を後にし、レオンと共に直ぐに出発した。
目標は勿論、禁忌の魔獣 黒竜だ。だが不安は無い。横に最も頼りになる男が居るのだから。
「あぁ…魔獣の域を超えてるように感じた」
自宅に着くと直ぐにレオンに料理を要求し、今回の顛末を料理のアテとして話す。
「よく生きてたな」
「なんだそりゃ?…黒い竜の事知ってるのか?」
「まだロイスには教えていなかったな。その竜、黒竜は……禁忌の魔獣だな」
珍しくレオンが真剣な表情で語る。
「禁忌の魔獣?」
聞いた事も無い単語だ。何か特別な意味があるんだろうが、なぜ今まで教えなかったのか…
「世界には…各地の未開拓地を平然と渡り歩く魔獣がいる」
「それが禁忌の魔獣なのか?」
「あぁ…決して戦ってはいけない魔獣、それが禁忌だ」
「大げさじゃないか?確かに強いとは思ったけど」
「そりゃ遊ばれていただけだ。本気ならロイスはここに居ない」
「俺が本気を出しても?」
「厳しいだろうな。禁忌とはそれ程の存在だ」
レオンがここまで言うとは…これは退いて正解だったという事か。
「黒竜以外にもいるんだよな?」
「まぁな。今回の黒竜の他に天虎、鳳凰、彗蛇。俺の知っている限りではこれだけいる」
「そんなに!…にしても詳しいな。アリスでも知らなかったのに」
「そりゃそうだろ。禁忌と名付けたのは俺だからな」
「レオンが!?」
それが本当ならアリスが知らないのも頷ける。知る為にはレオンから聞き出すしかない。
「古い文献には禁忌らしき魔獣の事が記されているが、総称も無ければ個体名もない。だから直接見た俺が名付けた」
「なるほど…なら何で俺に教えなかった?」
「もっと実力が付いてから教えるつもりだった。何せ禁忌の魔獣は、今のロイスでも踏み込めない未開拓地の奥に生息しているからな」
「つまりレオンはそんな奥まで行けるのか」
レオンが強い事は知っている。レオンに勝てる奴なんていないとも思っている。だが、それでもまだレオンの底は計り知れない。
レオン自体が禁忌ではないだろうか……あり得る。禁忌の魔獣レオン…何故かしっくりきた。
「奴らの移動するルートは決まっているはずだが…まだまだ謎が多いという事だろう」
今回黒竜が現れたのは完全なイレギュラーという訳だろう。そのイレギュラーに偶々出くわすとは運が良いのか悪いのか……まぁ禁忌の魔獣が居ると知れただけ良かったと捉えるべきだろう。
「取り敢えず……寝る」
レオンの話で謎が解け、少しすっきりしたロイスは直ぐに就寝した。思っていたより疲労が溜まっていた様で、直ぐに夢の世界へ落ちて行った。
それから数日後、ロイスはいつもの薄暗い部屋にいた。依頼の紙が無いか定期的に見るのも調達屋としての仕事の1つだ。
「依頼は…無しか」
部屋に紙は置いていなかったが別に珍しい事ではない。最近はずっと依頼続きだったが、本来調達屋の仕事はそう多くない。
「ん?…誰か来る」
ここに来る何者かの気配を感じたロイスはローブを深く被り直す。そして出来る限り気配を断つ。
すると一人の男が姿を現した。それも見知った男だ。
「ここが…調達屋に会える場所……なのか?…ボロボロじゃねぇか」
「悪かったな」
「おわっ!…誰だ!」
気配を断っていたロイスが喋った事で、男は心臓をドキッと鼓動させた。
「俺が調達屋だ。依頼か?」
声を低くしておいて良かった。普段から声は変えているが、地声で話していたら正体がばれていた。
何故なら、部屋に現れた男はガイウスだからだ。先日一緒に仕事をしたばかりなので声を覚えている可能性は高い。
「い、依頼だ。金さえ払えばどんな要望でも叶えてくれると聞いた」
よくここが分かったものだ。調達屋なる者がいるという噂は聞いたとしても、ここに辿り着ける情報を得るのは簡単ではないのに。
「俺が居る時に来るとは運が良いな。けど一つ間違いがある」
「間違い?」
「どんな要望でも叶えるというのは違う。俺の仕事は調達だ」
「あ、あぁ…分かった」
「で、依頼内容は?」
「黒い竜を倒して欲しい。つまり心臓だ」
「黒い竜?」
ここは敢えて知らないふりをした。
剣の処刑林を開拓している事は国中で噂になっているが、黒竜が現れたことまでは伝わっていないので知っていては不自然だ。
しかし黒竜の依頼とは……厄介だ。
「剣の処刑林を開拓中に黒い竜が現れたんだ。その竜に俺ともう一人を除いた仲間がやられた」
「復讐か」
「違う!確かにその気持ちはあるが…黒い竜がトーレリアス領内に侵入した。このままではこの国は亡びる」
おっと…流石に驚いた。
ロイスの知らぬ間に黒竜は未開拓地から出てしまった様だ。
だがその割にカイレンの町が慌てた様子は見られない。普通あれほどの脅威が現れれば、今頃逃げ惑う人々で溢れている頃だ。
考えられる理由はただ一つ。国の上層部が情報を流れない様に操作しているからだろう。
もし国中に広がれば、黒竜が領内に入ったのは開拓をした所為だと非難を浴びるのは目に見えている。それが更なる被害を生む事になると何故気付けないのだろうか。
「討伐隊が組まれたが呆気なく全滅した。もう頼れるのはあんたしかいない!噂通りの実力なら黒い竜に勝てるんじゃないのか!?」
「………少しここで待て」
レオンに禁忌の魔獣について聞いたばかりなので返事に迷っていると、ここに近づくもう一つの気配を感じた。この気配は最も信頼している男、レオンの気配だ。
ロイスはガイウスを部屋に待たせ、外に出る。
「珍しいな。レオンがここに来るなんて」
「さっきアリスに会ってな。気になる事を聞いた」
「気になる事?」
「もしかして、黒竜の討伐依頼が来ていないか?」
「丁度来ている。どうするか迷っていた所だ。レオンの言う通りなら俺じゃ勝てないし」
「やっぱりそうか。その依頼…受けろ」
「は?」
決して戦ってはいけないと言った本人が何を言っているんだろか。レオンの事だから何か裏があるんだろうが…意図が分からない。
「俺も出る。2人なら勝てるだろう」
「いやいや…いきなりどうした。何か目的があるのか?」
「今のロイスの実力を測る良い機会だと思ってな。お前にとっても今後に繋がる良い経験になるはずだ」
確かに禁忌の魔獣と戦えば経験値は計り知れない。だがロイスがこんな事を言うのは初めてだ。
「いずれロイスには未開拓地の奥地まで行ってもらうつもりだからな。その為の修行だと思え」
「まぁ…レオンが言うなら構わないけど」
「因みに報酬は国からも出るぞ」
「国から?正規な訳ないよな?」
「もちろん。上層部の奴らを脅して出させるのさ」
レオンの言い草だと、倒した後に上層部を脅す様に聞こえる。出し渋る可能性は高いがレオンの事だ、しっかりと報酬を貰ってくる事だろう。
「分かった。受けよう」
部屋へと戻り、ガイウスに依頼を受けると伝える。
「本当か!感謝する!」
「報酬は前金は1000万。達成すれば追加で1500万ゼルの合計2500万ゼルだ」
「2500万ゼル!?」
2500万ゼルは一生を遊んで暮らせる金額。ガイウスが驚くのも無理はないが、禁忌の魔獣を倒すのだから寧ろ安い方だ。
それに開拓者は稼げる職業だ。現場の責任者になれるガイウスならそれくらい持っていても不思議じゃない。
「わ…分かった。支払おう」
「前金の1000万ゼルは今持っているか?」
「今は手持ちがない。直ぐに持ってくる」
暫く待っているとようやくガイウスが戻ってきた。その手にはずっしりとした袋が握られている。
「前金の1000万ゼルだ」
手渡された袋の重さからして1000万ゼルはあるだろう。
「よし、契約成立だ。俺はすぐに出発する。無事倒せる事を祈っとけ」
部屋を後にし、レオンと共に直ぐに出発した。
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