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18話
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黒竜が暴れているとされる剣の処刑林の最寄りの町、スラニアに着いた2人は目を見開いた。
「おいおい…随分と暴れたな」
「これも遊びだっていうのか?…はた迷惑な竜だ」
目の前のスラニアは瓦礫の山と化していた。
元々は芸術的な木製の家屋が立ち並ぶ風情ある町だったのだが、その面影はどこにもない。
そして何より驚いたのは黒竜がスラニアの町の中心で、とぐろを巻いて寝そべっていた事だ。
「本当にアリスの情報通りとは…」
ここに来る途中アリスから詳しい情報を仕入れたのだが、黒竜はスラニアを住処にしたかの様に居座っているという訳の分からない事を言っていた。
しかしその情報は正しかった。確かに住処の様に居座っている。
「探す手間が省けたとはいえ…こんな所に黒竜が居るのは異様な光景だな」
「取り敢えず行くぞ」
レオンを先頭に黒竜に近づいていく。
辺りには誰も居ない、と言うよりいなくなったという方が正しい。黒竜によってここに居たであろう住人、そして討伐隊は全滅しているのだから。
その証拠に瓦礫の彼方此方に死体や血痕、武器等が散乱している。
悲惨ではあるが今はそれが有り難い。誰もいないという事は、本気の姿を見られる事は無く、足手纏いもいないのだから。
ドスン!ドスン!
「気付かれたか」
2人がある距離まで近づいた時、黒竜は突然立ち上がって睨みつけてくる。
「いや、元々気付いていて俺達が近づくのを待っていたんだろう」
「なんでだ?」
「戦えば自ずと分かる事だ」
自ずと分かるという事は、レオンはもう何かに気付いているらしい。
「行くぞ。先手必勝だ」
「作戦は?」
「戦闘が長引く程俺達が不利になる。短期決戦だ」
魔獣は元々の潜在能力が人間とは違う。禁忌の魔獣となればその潜在能力は更に跳ね上がる。奴を倒す為に魔法は必要不可欠だが、長引けば魔力が無くなる。そうなれば潜在能力の高い方がどんどん有利になっていく。
「短期決戦か。なら最初から…全力で行く!」
ロイスは黒竜に向かって走り出した。
「精霊共…力を全て寄越せ!」
すると契約紋が黒くなった。
これは嘗てセージ・ヒルデストを拷問した時の契約紋だ。
「黒炎は前の炎とは桁が違うぞ竜!」
手を翳すと、なんと黒い炎が発生して黒竜に襲い掛かる。その温度は普段の炎とは比べ物にならないほど高い。
ボボボボボゥ!
黒竜は翼を羽ばたかせて避けると、黒炎は地面に着弾し、燃えないはずの地面を燃やしていく。
次の攻撃に移ろうとした時、目の前に炎の塊が飛んで来た。
これは間違いなく黒竜の息吹だが、竜特有の前兆がない。黒竜も本気という事だろう。
だが何故かロイスは避けようとしない。それどころかその場で魔法を発動しようとする。
黒竜の息吹がロイスに当たるかと思われた瞬間…
ブゥン!
なんと息吹が突然方向を変えて、放った黒竜自身に向かっていった。
「行けロイス!」
今のはロイスの仕業だ。こんな事を出来るのは彼しかいない。
「当然!」
バリバリバリバリ!
今度は黒い雷の様な魔法がロイスの体を覆う。
ドゴォォォン!
謎の動きをした息吹が黒竜に命中すると、ロイスは腰に下げている二振りのククリ刀を抜いて走り出した。
その速度は凄まじく、黒い彗星の様に見える。
バリバリ!ドスッ!
黒い雷を身に纏ったまま黒竜に突っ込んだ。
「ちっ…この速度を避けるのか」
かなりの速さで突っ込んだつもりだったんだが…黒竜の右肩を少し削り取っただけか。
だがこれで良い。傷を負わせたという事実は覆らない。
「ロイス!避けろ!」
「ぐがっ!」
腹部に強烈な痛みを感じながら、ロイスは体をくの字に曲げて吹き飛ばされた。
そして、ドゴンという大きな音を立てながら瓦礫に背を打ち付けた。
「が…ぐぅ…なん…だ…今の」
前も同じような状況があった。その時は尻尾だと直ぐに分かったが、今は何故自分が吹き飛んだのか分からない。
「空気の塊だ!」
レオンが黒竜と戦いながら教えてくれた。
なるほど…空気の塊か。それなら見えないのも頷ける。だがこれはかなり厄介だ。
恐らく口から塊を出したのだろうがこれも前兆が無い。更に、空気の塊が来るのか、息吹が来るのかを予測する必要もある。
「ふぅ…ただの遊びか…確かにそうなんだろうな」
前回とは実力も戦い方も全然違う。別の個体だと言われても信じられるほどだ。
「舐めやがって…」
空気の塊を受けてから視界が歪む。思った以上にダメージが大きい。
まだ万全ではないがレオン1人に任せるわけにも行かず、ブンブンと頭を振って気持ちを切り替える。
「レオン!行くぞ!」
今度は、墨の様に黒い水球を5個作り出す。
その光景は異様で、ロイスの周りに黒い惑星が浮かんでいる様に見える。
「はっ!」
黒い水球を黒竜にまとめて投げるが、黒竜は器用に飛んで全てを避けた。
あんな巨体でよくここまで器用に飛べるものだ。だがそれは予想通りで、狙いは別にある。
「避けられても関係ない」
外れた筈の黒い水球が意思でもあるかのように再び黒竜に襲い掛かった。
「流石レオンだな」
ロイスが魔法を操作している様には見えない。だがロイスの生み出した黒い水球はどんどん黒竜を追い詰めていく。
バシャッ!
一つの水球が黒竜の右翼に命中した。
「ロイス!もっとだ!」
「任せろ!」
レオンの要求通り、更に黒い水球を5個作り出して放つ。
するとその水球も意思があるかのように縦横無尽に動きながら黒竜を追い詰めていく。
空には9個の黒い惑星が踊っているように飛び回る。
「9個同時操作か…今の俺では無理だな」
今黒い水球を操っているのはレオンだ。つまり、ロイスが生み出した魔法の支配権はレオンにあるという事だ。
バシャッ!
更に1つの水球が右足に命中した。
「精々逃げ回れ。その水は離れないぞ」
黒い水は一度付着すると離れない性質を持つ。付着すれば、おもりの様に黒竜の動きを妨害するだろう。
「にしても粘るな。なら…」
水球を全て当てるには一瞬動きを封じればいい。
動きを封じる魔法となれば……あれしか思い浮かばない。
「これを使うのは久しぶりだ」
両手を前に出す。すると光り輝く小さな球体が手の間に作り上げられた。
これはただの光の球体。だが時には役に立つ。
「行け!」
黒竜の前方めがけて投げ付けた。
完璧…良い位置だ。
ピカッ!
光の球体は黒竜の目の前で光を放つ。
少し眩しすぎたか…まぁ弱すぎるよりは良いだろう。
光は辺り一面に広がり、魔法を放った本人ですら思わず目を瞑りかけた。
バババババババババッ!
光によって一時的に視力を失った黒竜に全ての水球が直撃した。
この光の中で全部命中させるとは流石はレオン。何の合図もしていなかったが、しっかりと対応してくれた。
ドンッ!
全ての水球が体に付着し、飛べなくなった黒竜は地面に落ちた。
「さぁ…第二幕の始まりだ」
ロイスはニヤリと笑みを浮かべた。
「おいおい…随分と暴れたな」
「これも遊びだっていうのか?…はた迷惑な竜だ」
目の前のスラニアは瓦礫の山と化していた。
元々は芸術的な木製の家屋が立ち並ぶ風情ある町だったのだが、その面影はどこにもない。
そして何より驚いたのは黒竜がスラニアの町の中心で、とぐろを巻いて寝そべっていた事だ。
「本当にアリスの情報通りとは…」
ここに来る途中アリスから詳しい情報を仕入れたのだが、黒竜はスラニアを住処にしたかの様に居座っているという訳の分からない事を言っていた。
しかしその情報は正しかった。確かに住処の様に居座っている。
「探す手間が省けたとはいえ…こんな所に黒竜が居るのは異様な光景だな」
「取り敢えず行くぞ」
レオンを先頭に黒竜に近づいていく。
辺りには誰も居ない、と言うよりいなくなったという方が正しい。黒竜によってここに居たであろう住人、そして討伐隊は全滅しているのだから。
その証拠に瓦礫の彼方此方に死体や血痕、武器等が散乱している。
悲惨ではあるが今はそれが有り難い。誰もいないという事は、本気の姿を見られる事は無く、足手纏いもいないのだから。
ドスン!ドスン!
「気付かれたか」
2人がある距離まで近づいた時、黒竜は突然立ち上がって睨みつけてくる。
「いや、元々気付いていて俺達が近づくのを待っていたんだろう」
「なんでだ?」
「戦えば自ずと分かる事だ」
自ずと分かるという事は、レオンはもう何かに気付いているらしい。
「行くぞ。先手必勝だ」
「作戦は?」
「戦闘が長引く程俺達が不利になる。短期決戦だ」
魔獣は元々の潜在能力が人間とは違う。禁忌の魔獣となればその潜在能力は更に跳ね上がる。奴を倒す為に魔法は必要不可欠だが、長引けば魔力が無くなる。そうなれば潜在能力の高い方がどんどん有利になっていく。
「短期決戦か。なら最初から…全力で行く!」
ロイスは黒竜に向かって走り出した。
「精霊共…力を全て寄越せ!」
すると契約紋が黒くなった。
これは嘗てセージ・ヒルデストを拷問した時の契約紋だ。
「黒炎は前の炎とは桁が違うぞ竜!」
手を翳すと、なんと黒い炎が発生して黒竜に襲い掛かる。その温度は普段の炎とは比べ物にならないほど高い。
ボボボボボゥ!
黒竜は翼を羽ばたかせて避けると、黒炎は地面に着弾し、燃えないはずの地面を燃やしていく。
次の攻撃に移ろうとした時、目の前に炎の塊が飛んで来た。
これは間違いなく黒竜の息吹だが、竜特有の前兆がない。黒竜も本気という事だろう。
だが何故かロイスは避けようとしない。それどころかその場で魔法を発動しようとする。
黒竜の息吹がロイスに当たるかと思われた瞬間…
ブゥン!
なんと息吹が突然方向を変えて、放った黒竜自身に向かっていった。
「行けロイス!」
今のはロイスの仕業だ。こんな事を出来るのは彼しかいない。
「当然!」
バリバリバリバリ!
今度は黒い雷の様な魔法がロイスの体を覆う。
ドゴォォォン!
謎の動きをした息吹が黒竜に命中すると、ロイスは腰に下げている二振りのククリ刀を抜いて走り出した。
その速度は凄まじく、黒い彗星の様に見える。
バリバリ!ドスッ!
黒い雷を身に纏ったまま黒竜に突っ込んだ。
「ちっ…この速度を避けるのか」
かなりの速さで突っ込んだつもりだったんだが…黒竜の右肩を少し削り取っただけか。
だがこれで良い。傷を負わせたという事実は覆らない。
「ロイス!避けろ!」
「ぐがっ!」
腹部に強烈な痛みを感じながら、ロイスは体をくの字に曲げて吹き飛ばされた。
そして、ドゴンという大きな音を立てながら瓦礫に背を打ち付けた。
「が…ぐぅ…なん…だ…今の」
前も同じような状況があった。その時は尻尾だと直ぐに分かったが、今は何故自分が吹き飛んだのか分からない。
「空気の塊だ!」
レオンが黒竜と戦いながら教えてくれた。
なるほど…空気の塊か。それなら見えないのも頷ける。だがこれはかなり厄介だ。
恐らく口から塊を出したのだろうがこれも前兆が無い。更に、空気の塊が来るのか、息吹が来るのかを予測する必要もある。
「ふぅ…ただの遊びか…確かにそうなんだろうな」
前回とは実力も戦い方も全然違う。別の個体だと言われても信じられるほどだ。
「舐めやがって…」
空気の塊を受けてから視界が歪む。思った以上にダメージが大きい。
まだ万全ではないがレオン1人に任せるわけにも行かず、ブンブンと頭を振って気持ちを切り替える。
「レオン!行くぞ!」
今度は、墨の様に黒い水球を5個作り出す。
その光景は異様で、ロイスの周りに黒い惑星が浮かんでいる様に見える。
「はっ!」
黒い水球を黒竜にまとめて投げるが、黒竜は器用に飛んで全てを避けた。
あんな巨体でよくここまで器用に飛べるものだ。だがそれは予想通りで、狙いは別にある。
「避けられても関係ない」
外れた筈の黒い水球が意思でもあるかのように再び黒竜に襲い掛かった。
「流石レオンだな」
ロイスが魔法を操作している様には見えない。だがロイスの生み出した黒い水球はどんどん黒竜を追い詰めていく。
バシャッ!
一つの水球が黒竜の右翼に命中した。
「ロイス!もっとだ!」
「任せろ!」
レオンの要求通り、更に黒い水球を5個作り出して放つ。
するとその水球も意思があるかのように縦横無尽に動きながら黒竜を追い詰めていく。
空には9個の黒い惑星が踊っているように飛び回る。
「9個同時操作か…今の俺では無理だな」
今黒い水球を操っているのはレオンだ。つまり、ロイスが生み出した魔法の支配権はレオンにあるという事だ。
バシャッ!
更に1つの水球が右足に命中した。
「精々逃げ回れ。その水は離れないぞ」
黒い水は一度付着すると離れない性質を持つ。付着すれば、おもりの様に黒竜の動きを妨害するだろう。
「にしても粘るな。なら…」
水球を全て当てるには一瞬動きを封じればいい。
動きを封じる魔法となれば……あれしか思い浮かばない。
「これを使うのは久しぶりだ」
両手を前に出す。すると光り輝く小さな球体が手の間に作り上げられた。
これはただの光の球体。だが時には役に立つ。
「行け!」
黒竜の前方めがけて投げ付けた。
完璧…良い位置だ。
ピカッ!
光の球体は黒竜の目の前で光を放つ。
少し眩しすぎたか…まぁ弱すぎるよりは良いだろう。
光は辺り一面に広がり、魔法を放った本人ですら思わず目を瞑りかけた。
バババババババババッ!
光によって一時的に視力を失った黒竜に全ての水球が直撃した。
この光の中で全部命中させるとは流石はレオン。何の合図もしていなかったが、しっかりと対応してくれた。
ドンッ!
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