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第9章 派生流派と天乱四柱
邪ノ痕跡
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「痕跡なんてあるのかな?」
各々分かれて捜索しているとソフィがボソリと呟いた。
「さぁな。だが災害級が突然現れるのは不自然だ。琴音の得た情報だと各大陸でも同じような現象が起きているらしい。となるとやはり人為的だと言わざるを得ない」
ジャンを仕留め損なった事を伝えた時、琴音から世界中で災害級が突然現れて猛威を振るうと忽然と姿を消しているという情報を聞いた。
「琴音さんから…やっぱりすごいねあの人は」
「そうだな。だからどんな些細な事でも見逃すわけにはいかない」
「そうだけど、痕跡ってどんなものなの?」
「俺の予想だと転移結晶が絡んでいるはずだ」
「転移結晶ってジャンって人が使った魔道具?」
「そうだ。通常転移は生命を転移させる事は出来ない。だが邪神教が使う転移結晶ならそれが可能だ」
「そっか。あの蛇はその魔道具でここに転移されたんだ」
「可能性は高いだろう。それに転移とは媒体によって重量の限度が必ずある。邪神魔蛇の巨体を転移させるには相当量の転移結晶が必要のはずだ」
「咲良はそれを探してるんだ」
「見つける事が出来れば邪神教が裏にいると証明出来る。敵の正体を知るのと知らないのとでは今後の活動にも影響してくるからな」
咲良が一通りソフィに説明した時、遠くの方で花火のような何かが空高く上がった。
「あれは?」
「合図だ。調査隊が何かを見つけたようだ。クロ!降りてこい!」
咲良は上空から痕跡を探していたクロを呼び寄せると急いで合図のあった地点に向かう。
「来たか。これを見てくれ」
現場に着くとそこには既にフィリスとガイモンがおり咲良達を手招きする。
「フィリスが見つけたのか」
「あぁ…この砕けた結晶を見つけてな。よく観察してみるとあちこちにこの結晶が散らばっていた」
フィリスの言う通り、現場にはあちこちに砕けた結晶が幾何学的に散乱していた。
「上から見たいな。飛べるか?」
どのように散乱しているのかを確認するには上空から見下ろすのが手っ取り早い。
「もちろんだ」
「儂は飛ぶのが得意だからな」
すると突然フィリスの背中から蝙蝠のような翼が生えたかと思うとバサバサと空高く羽ばたいた。更にガイモンは無重力空間にいるかの様にフワフワと上空に昇って行った。
「なんだありゃ…流石天乱四柱と言うべきなんだろうが、奇妙な魔法を使うもんだな」
自分が一番奇妙に思われている事は棚に上げて、咲良は率直な意見を述べる。
「ま、俺の手間が省けたから良いか。クロ、ソフィを頼む」
クロはその意図が分かったようでソフィに脚を掴ませるとフィリス達の元へと羽ばたくのを見届けると咲良も遅れまいと魔力で足場を作って後ろをついていく。
「面白い光景だな。特にソフィアが」
「嬢ちゃんだけ変な格好だからな」
上空に着くとフィリスとガイモンがソフィをからかう。何故なら2人共クロを認識しているとはいえ、銀匠の腕輪で姿を消しているクロに捕まっているソフィは側から見ると中々不恰好だ。
「そんな事より下を見てみろ」
咲良に促されて一同は下を見下ろす。
「なんだ?これは…魔法陣か?」
「儂にもそう見えるな」
「すごく大きな魔法陣だね」
「予想的中か…これは転移魔法陣だ」
咲良の予想通り、邪神魔蛇は邪神教の使用する転移結晶によってこの地に現れていた。
(なるほどな…魔紅晶で魔法陣を描いたのか。確かにこの方法なら邪神魔蛇の巨体でも転移は可能だろうが………こんな方法を思いつくとは邪神教にはやはり相当な技術者がいるな)
咲良ですら思いつかない方法を編み出したその技術者に興味が湧くと同時に恐怖も感じた。
「転移魔法陣?こんな形してたか?」
「こんな複雑な魔法陣じゃなかったと思うが」
フィリスとガイモンは転移魔法陣を見たことがある。珍しいとは言っても国やギルドの上層部ではよく使用されるのでギルドマスターであり調査部隊隊長である2人が見た事あるのは当然だ。
「これは生命を転移させる特別な魔法陣だ。通常と異なる形をしているのはその為だ」
「生命を!?そんなバカな!」
「それは実現不可能なはずだぞ!」
「2人が驚くのも無理はない。説明してやるから取り敢えず下に降りるぞ」
いつまでも上空で会話する必要はないので一同はゆっくりと下降する。
全員が地面に降り立つと咲良は説明を始める。
「足元の魔法陣を形成している結晶を使えば生命を転移させることが出来る」
「この結晶はなんだ?」
フィリスが魔紅晶の欠片を手に取り眺めながら問いかける。
「魔紅晶という人口鉱石だ。その結晶に転移魔法陣を刻めば生命を転移させる魔道具になる。邪神摩邪の巨体を転移させる為にはこれだけの量が必要だったのだろう」
「そんな鉱石があるのか!?」
「儂は聞いたこともないぞ!」
2人は驚きながらも魔紅晶に興味を寄せる様な表情を浮かべる。
「移動手段に使えると考えているのなら止めておけ。魔紅晶は人間の心臓で出来ているからな。それでもまだ使いたいか?」
「バカな…心臓だと…」
「そんな…」
「咲良…何故そんなことを知っている」
ガイモンとソフィは驚愕の表情を浮かべるが、フィリスだけは訝しげに尋ねる。
「そんな顔をするな。俺は鍛治師として知識にあるだけで作った事も使った事もない」
「そういえば咲良は鍛治師だったな」
フィリスは咲良が高性能な武具を作る鍛治師であるとマリアから聞いていた事を思い出した。
「ほぅ…坊主は冒険者をしながら鍛治師の仕事もしているのか」
「それは違う。俺の本職は鍛治師だ。冒険者になったのは只の成り行きだ」
「逆ってわけか。成り行きで特級になられちゃ他の冒険者の立つ瀬が無いな」
ガイモンはゲラゲラと笑いながらも内心は鍛治師に階級を抜かれた事に焦りを感じていた。やはり本職が冒険者のガイモンからすればあまり喜ばしいことではないのだろう。
「さて、原因も分かった事だし一先ず本部に戻ろう」
フィリスの一言で咲良達と他の冒険者達はその場を後にした。もちろん魔紅晶は全て冒険者達が回収済みだ。既に使用済みとはいえ残したままにすれば良からぬ考えを持つ者に渡る可能性もあるからだ。
各々分かれて捜索しているとソフィがボソリと呟いた。
「さぁな。だが災害級が突然現れるのは不自然だ。琴音の得た情報だと各大陸でも同じような現象が起きているらしい。となるとやはり人為的だと言わざるを得ない」
ジャンを仕留め損なった事を伝えた時、琴音から世界中で災害級が突然現れて猛威を振るうと忽然と姿を消しているという情報を聞いた。
「琴音さんから…やっぱりすごいねあの人は」
「そうだな。だからどんな些細な事でも見逃すわけにはいかない」
「そうだけど、痕跡ってどんなものなの?」
「俺の予想だと転移結晶が絡んでいるはずだ」
「転移結晶ってジャンって人が使った魔道具?」
「そうだ。通常転移は生命を転移させる事は出来ない。だが邪神教が使う転移結晶ならそれが可能だ」
「そっか。あの蛇はその魔道具でここに転移されたんだ」
「可能性は高いだろう。それに転移とは媒体によって重量の限度が必ずある。邪神魔蛇の巨体を転移させるには相当量の転移結晶が必要のはずだ」
「咲良はそれを探してるんだ」
「見つける事が出来れば邪神教が裏にいると証明出来る。敵の正体を知るのと知らないのとでは今後の活動にも影響してくるからな」
咲良が一通りソフィに説明した時、遠くの方で花火のような何かが空高く上がった。
「あれは?」
「合図だ。調査隊が何かを見つけたようだ。クロ!降りてこい!」
咲良は上空から痕跡を探していたクロを呼び寄せると急いで合図のあった地点に向かう。
「来たか。これを見てくれ」
現場に着くとそこには既にフィリスとガイモンがおり咲良達を手招きする。
「フィリスが見つけたのか」
「あぁ…この砕けた結晶を見つけてな。よく観察してみるとあちこちにこの結晶が散らばっていた」
フィリスの言う通り、現場にはあちこちに砕けた結晶が幾何学的に散乱していた。
「上から見たいな。飛べるか?」
どのように散乱しているのかを確認するには上空から見下ろすのが手っ取り早い。
「もちろんだ」
「儂は飛ぶのが得意だからな」
すると突然フィリスの背中から蝙蝠のような翼が生えたかと思うとバサバサと空高く羽ばたいた。更にガイモンは無重力空間にいるかの様にフワフワと上空に昇って行った。
「なんだありゃ…流石天乱四柱と言うべきなんだろうが、奇妙な魔法を使うもんだな」
自分が一番奇妙に思われている事は棚に上げて、咲良は率直な意見を述べる。
「ま、俺の手間が省けたから良いか。クロ、ソフィを頼む」
クロはその意図が分かったようでソフィに脚を掴ませるとフィリス達の元へと羽ばたくのを見届けると咲良も遅れまいと魔力で足場を作って後ろをついていく。
「面白い光景だな。特にソフィアが」
「嬢ちゃんだけ変な格好だからな」
上空に着くとフィリスとガイモンがソフィをからかう。何故なら2人共クロを認識しているとはいえ、銀匠の腕輪で姿を消しているクロに捕まっているソフィは側から見ると中々不恰好だ。
「そんな事より下を見てみろ」
咲良に促されて一同は下を見下ろす。
「なんだ?これは…魔法陣か?」
「儂にもそう見えるな」
「すごく大きな魔法陣だね」
「予想的中か…これは転移魔法陣だ」
咲良の予想通り、邪神魔蛇は邪神教の使用する転移結晶によってこの地に現れていた。
(なるほどな…魔紅晶で魔法陣を描いたのか。確かにこの方法なら邪神魔蛇の巨体でも転移は可能だろうが………こんな方法を思いつくとは邪神教にはやはり相当な技術者がいるな)
咲良ですら思いつかない方法を編み出したその技術者に興味が湧くと同時に恐怖も感じた。
「転移魔法陣?こんな形してたか?」
「こんな複雑な魔法陣じゃなかったと思うが」
フィリスとガイモンは転移魔法陣を見たことがある。珍しいとは言っても国やギルドの上層部ではよく使用されるのでギルドマスターであり調査部隊隊長である2人が見た事あるのは当然だ。
「これは生命を転移させる特別な魔法陣だ。通常と異なる形をしているのはその為だ」
「生命を!?そんなバカな!」
「それは実現不可能なはずだぞ!」
「2人が驚くのも無理はない。説明してやるから取り敢えず下に降りるぞ」
いつまでも上空で会話する必要はないので一同はゆっくりと下降する。
全員が地面に降り立つと咲良は説明を始める。
「足元の魔法陣を形成している結晶を使えば生命を転移させることが出来る」
「この結晶はなんだ?」
フィリスが魔紅晶の欠片を手に取り眺めながら問いかける。
「魔紅晶という人口鉱石だ。その結晶に転移魔法陣を刻めば生命を転移させる魔道具になる。邪神摩邪の巨体を転移させる為にはこれだけの量が必要だったのだろう」
「そんな鉱石があるのか!?」
「儂は聞いたこともないぞ!」
2人は驚きながらも魔紅晶に興味を寄せる様な表情を浮かべる。
「移動手段に使えると考えているのなら止めておけ。魔紅晶は人間の心臓で出来ているからな。それでもまだ使いたいか?」
「バカな…心臓だと…」
「そんな…」
「咲良…何故そんなことを知っている」
ガイモンとソフィは驚愕の表情を浮かべるが、フィリスだけは訝しげに尋ねる。
「そんな顔をするな。俺は鍛治師として知識にあるだけで作った事も使った事もない」
「そういえば咲良は鍛治師だったな」
フィリスは咲良が高性能な武具を作る鍛治師であるとマリアから聞いていた事を思い出した。
「ほぅ…坊主は冒険者をしながら鍛治師の仕事もしているのか」
「それは違う。俺の本職は鍛治師だ。冒険者になったのは只の成り行きだ」
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ガイモンはゲラゲラと笑いながらも内心は鍛治師に階級を抜かれた事に焦りを感じていた。やはり本職が冒険者のガイモンからすればあまり喜ばしいことではないのだろう。
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