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オリギナ魔法学校
第十六話 体術訓練 VSクラウディア
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「ちょっとここで待っててね。みんなと一緒に運動用の服に着替えてくるからさ」
「……クラウディア、次は何をするんだ?」
「体術訓練、要するに運動だよ。動くのは好きだったでしょ? まあみんなの動きを見ていればいいんじゃないかな?」
「つまんない。また、見ているだけか。この学校、何にも面白くないぞ」
「私は楽しいけどなぁ」
この回答にムスっとした表情で答える。
クラウディアは苦笑いしながら更衣室の中に入っていった。俺はため息をついて廊下の壁に寄り掛かる。そんな俺に声をかけてきた人物がいる。校長のシュンカだ。
「あらあら、こんなところで何をしているのですか?」
「ふてくされてるだけだ。なあ、シュンカ、学校ってつまらないんだな。もっと劇的に力がのびていく施設かと思った」
「ふふ、貴方がどう考えているかはわかりませんが、あこがれと現実は違うということですよ。でも現実はね、考えつきもしなかった事が起こるから面白いのですよ。まあ、その分、起こってほしくないこともありますがね」
「絶対に楽しいことがあると思ってた。楽しいことだけがあると思ってたぞ。素晴らしい技術を身につけ、力を蓄え、知識をまとって行けると思っていたぞ」
シュンカがにっこりと笑って頷いている。
「その通りですよ。この学校でみっちり三年を過ごす。その後はあなたの言う素晴らしい技術も力も知識も身につけられます。私が責任をもって叩き込みます」
「三年もかぁ……もっと早くても構わないんだぞ。例えば一か月でもいい」
「ふふっ、せっかちですね。一か月では教える方が追い付きません。それに学生生活が一か月では短すぎます。共に学友と歩んでいく時間は三年ですら短いものですよ」
「そういう物か?」と首をかしげる。早ければ早いほどいいものではないか? 美味しい料理だって冷めてしまったら不味くなる。時間をかける理由が俺にはわからないなぁ。
腕組みして悩んでいる間に更衣室の扉が開いてクラウディアたちが出てきた。みんなと一緒に運動場に向かう。
たどり着いた運動場は単純な広場だ。ドラゴンが五匹ぐらい入る広さだ。そして、外周は壁で覆われている。中から見てみればわかるが、攻撃魔法の練習のためだろう。周囲に攻撃が散らないようにしているんだろうな。
運動場では男子生徒と教師がクラウディアたちを待っていた。そして合流と同時に授業が始まる。俺は壁際でその様子を眺めることになる。
「よ~し、今日は魔道格技の訓練をするぞ。まずは不死鳥の構えから始める」
あ~、あれか。クラウディアの教科書にあった奴だ。腕を伸ばして片足立ち……、本当にあんなものに効果があるのだろうか?
大あくびをする。
生徒全体を見るが全員が息を合わせて同じ動きをしている。ダンスにしては見栄えがないし、戦いになっても役に立つような感じはしない。
「よし、次は実技に移る! 皆ペアを組むように」
教師の指示に従い生徒がペアを組んで魔道格技とやらが始まった。基本男同士、女同士で組んでいるのだが、クラウディアの相手がいない。クラウディアはいつも教師と組んでいるようなのだが、教師が俺を手招きしている。
「ま、見ているだけよりは暇がつぶせていいな」
俺はサッとクラウディアの前に立つ。
「クラウディア、魔道格技って俺は知らないから適当にやるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください先生! 流石に無理です!」
「安心しろ、おまえのことはわかっている。遊んでやるだけだ。手加減してやるから全力で来いよ」
クラウディアの猛抗議を教師は手で制している。俺は胸元のボタンを少し外してマントを取り去る。教師は好奇心の塊の視線で俺を見ている。
はは~ん、なるほど、次期魔界王の実力を見ておきたいってのはわかるぞ。だが、残念だったな。クラウディアでは俺の実力を十パーセントも引き出せないだろう。油断はしないつもりだがな。
「早くしろ、クラウディア。それともそれでいいなら俺の方から行くぞ」
「ちゃんと加減してよね!」
もう仕方がないとクラウディアが構えを取って、魔力を循環させる。え~っと、これは身体能力強化か……少し体を温めるために強化無しで遊んでやろう。
深呼吸と腕を回しながらクラウディアを待つ。……こいつ警戒してて来ないな。
意思を切り替えた。ならば俺から前に出る。
強化無しの身体能力でまっすぐに突っ込む。
待ってましたとばかりに躊躇もない蹴りを打ち込んできた。速いな……、直撃を受けて横に転がる。蹴ったクラウディアの方が驚いているが、わざと大きく転がっただけだ。
五回転ほどして距離を取る。
よりもっと姿勢を低くして今度はジグザグに進む。高速で左右の切り返し、クラウディアの後ろにまわる。後ろから肩を狙って叩く。
ほう! 手ごたえがなかった! そしてクラウディアは地面をすべるように吹っ飛んでいく。立ったまま、構えは崩れない。
ふふん、なるほど飛翔ではなく浮遊魔法か。地面には滑った跡が残っていない。それに少し足と地面の間に隙間が見える。わずかに浮いた状態で俺に押させたな。
万全の戦闘態勢を保ったまま、距離を開けられる。やはりクラウディアの技量は高い。技量の戦いでは俺に勝ち目はない。
ニヤリと笑う。なら勝ち目が出るまで、もっと力を入れていいってことだ。
思いっきり足を広げる。
さあ! ここから全力だ!
魔力を使わない全力を発揮する。クラウディアが思いっきり後ろに下がる。それをあざ笑うかのようにクラウディアの背後を取る。
良し! クラウディアは必死に俺を目で追いかけている。見えているなら問題ない! 問題ないからさっきよりも強くたたく。
しかし手ごたえがおかしい。地上数ミリを浮遊しているからではない。骨がないみたいに体が柔らかい!
魔法のラバーボディで体の柔らかさを変えている! ゴムのように俺のパンチ力を全部吸収されてしまった! クラウディアの全身が遅れて一回転する。
俺のパンチにクラウディアの全力を上乗せされる!
ぞっとする。俺が負けるかもしれない!
大気がはじけるような魔力の発動! クラウディアの蹴りを見切るために神経の反応速度を上げる。蹴りを刹那の時間で避けるために筋力を引き上げる。
とっさに反転して元の距離を開ける。
クラウディアをにらめば、勢い余って三回転して転倒していた。
唇を噛む、さっき負けるかもしれないと焦って魔力を使ってしまった。力は見せないつもりだったのに……他の生徒を見れば目をむいている。俺の魔力で驚いているんだ。俺は魔力を使わずに驚かせるつもりだったのに……くそっ。
「クラウディア、なんだよそれ! 俺、そんな技知らないぞ!」
「……カテイナちゃんこそ……加減するって言ってたくせに……あ~、魔力風で……頭痛い……」
「お前まさか、あの程度でダメなのか!? 遊びにもなんないぞ!」
クラウディアを見れば鼻血が出ている。これで俺の戦意は完全に喪失した。
「おい、教師、もういい。話にならない。俺の負けでいいからやめるぞ」
クラウディアに近づいて回復魔法を浴びせて魔力風の影響を取り去る。舌打ちしながら一番最初の壁際に下がった。そしてようやくそこに居た全員の視線が俺に集中していることに気が付く。
鼻を鳴らす。そんなことは俺の魔力量を考えれば当然のことだ。魔族の王の子供、次期魔界王なのだから。人間とは違うのだ。
「……クラウディア、次は何をするんだ?」
「体術訓練、要するに運動だよ。動くのは好きだったでしょ? まあみんなの動きを見ていればいいんじゃないかな?」
「つまんない。また、見ているだけか。この学校、何にも面白くないぞ」
「私は楽しいけどなぁ」
この回答にムスっとした表情で答える。
クラウディアは苦笑いしながら更衣室の中に入っていった。俺はため息をついて廊下の壁に寄り掛かる。そんな俺に声をかけてきた人物がいる。校長のシュンカだ。
「あらあら、こんなところで何をしているのですか?」
「ふてくされてるだけだ。なあ、シュンカ、学校ってつまらないんだな。もっと劇的に力がのびていく施設かと思った」
「ふふ、貴方がどう考えているかはわかりませんが、あこがれと現実は違うということですよ。でも現実はね、考えつきもしなかった事が起こるから面白いのですよ。まあ、その分、起こってほしくないこともありますがね」
「絶対に楽しいことがあると思ってた。楽しいことだけがあると思ってたぞ。素晴らしい技術を身につけ、力を蓄え、知識をまとって行けると思っていたぞ」
シュンカがにっこりと笑って頷いている。
「その通りですよ。この学校でみっちり三年を過ごす。その後はあなたの言う素晴らしい技術も力も知識も身につけられます。私が責任をもって叩き込みます」
「三年もかぁ……もっと早くても構わないんだぞ。例えば一か月でもいい」
「ふふっ、せっかちですね。一か月では教える方が追い付きません。それに学生生活が一か月では短すぎます。共に学友と歩んでいく時間は三年ですら短いものですよ」
「そういう物か?」と首をかしげる。早ければ早いほどいいものではないか? 美味しい料理だって冷めてしまったら不味くなる。時間をかける理由が俺にはわからないなぁ。
腕組みして悩んでいる間に更衣室の扉が開いてクラウディアたちが出てきた。みんなと一緒に運動場に向かう。
たどり着いた運動場は単純な広場だ。ドラゴンが五匹ぐらい入る広さだ。そして、外周は壁で覆われている。中から見てみればわかるが、攻撃魔法の練習のためだろう。周囲に攻撃が散らないようにしているんだろうな。
運動場では男子生徒と教師がクラウディアたちを待っていた。そして合流と同時に授業が始まる。俺は壁際でその様子を眺めることになる。
「よ~し、今日は魔道格技の訓練をするぞ。まずは不死鳥の構えから始める」
あ~、あれか。クラウディアの教科書にあった奴だ。腕を伸ばして片足立ち……、本当にあんなものに効果があるのだろうか?
大あくびをする。
生徒全体を見るが全員が息を合わせて同じ動きをしている。ダンスにしては見栄えがないし、戦いになっても役に立つような感じはしない。
「よし、次は実技に移る! 皆ペアを組むように」
教師の指示に従い生徒がペアを組んで魔道格技とやらが始まった。基本男同士、女同士で組んでいるのだが、クラウディアの相手がいない。クラウディアはいつも教師と組んでいるようなのだが、教師が俺を手招きしている。
「ま、見ているだけよりは暇がつぶせていいな」
俺はサッとクラウディアの前に立つ。
「クラウディア、魔道格技って俺は知らないから適当にやるぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください先生! 流石に無理です!」
「安心しろ、おまえのことはわかっている。遊んでやるだけだ。手加減してやるから全力で来いよ」
クラウディアの猛抗議を教師は手で制している。俺は胸元のボタンを少し外してマントを取り去る。教師は好奇心の塊の視線で俺を見ている。
はは~ん、なるほど、次期魔界王の実力を見ておきたいってのはわかるぞ。だが、残念だったな。クラウディアでは俺の実力を十パーセントも引き出せないだろう。油断はしないつもりだがな。
「早くしろ、クラウディア。それともそれでいいなら俺の方から行くぞ」
「ちゃんと加減してよね!」
もう仕方がないとクラウディアが構えを取って、魔力を循環させる。え~っと、これは身体能力強化か……少し体を温めるために強化無しで遊んでやろう。
深呼吸と腕を回しながらクラウディアを待つ。……こいつ警戒してて来ないな。
意思を切り替えた。ならば俺から前に出る。
強化無しの身体能力でまっすぐに突っ込む。
待ってましたとばかりに躊躇もない蹴りを打ち込んできた。速いな……、直撃を受けて横に転がる。蹴ったクラウディアの方が驚いているが、わざと大きく転がっただけだ。
五回転ほどして距離を取る。
よりもっと姿勢を低くして今度はジグザグに進む。高速で左右の切り返し、クラウディアの後ろにまわる。後ろから肩を狙って叩く。
ほう! 手ごたえがなかった! そしてクラウディアは地面をすべるように吹っ飛んでいく。立ったまま、構えは崩れない。
ふふん、なるほど飛翔ではなく浮遊魔法か。地面には滑った跡が残っていない。それに少し足と地面の間に隙間が見える。わずかに浮いた状態で俺に押させたな。
万全の戦闘態勢を保ったまま、距離を開けられる。やはりクラウディアの技量は高い。技量の戦いでは俺に勝ち目はない。
ニヤリと笑う。なら勝ち目が出るまで、もっと力を入れていいってことだ。
思いっきり足を広げる。
さあ! ここから全力だ!
魔力を使わない全力を発揮する。クラウディアが思いっきり後ろに下がる。それをあざ笑うかのようにクラウディアの背後を取る。
良し! クラウディアは必死に俺を目で追いかけている。見えているなら問題ない! 問題ないからさっきよりも強くたたく。
しかし手ごたえがおかしい。地上数ミリを浮遊しているからではない。骨がないみたいに体が柔らかい!
魔法のラバーボディで体の柔らかさを変えている! ゴムのように俺のパンチ力を全部吸収されてしまった! クラウディアの全身が遅れて一回転する。
俺のパンチにクラウディアの全力を上乗せされる!
ぞっとする。俺が負けるかもしれない!
大気がはじけるような魔力の発動! クラウディアの蹴りを見切るために神経の反応速度を上げる。蹴りを刹那の時間で避けるために筋力を引き上げる。
とっさに反転して元の距離を開ける。
クラウディアをにらめば、勢い余って三回転して転倒していた。
唇を噛む、さっき負けるかもしれないと焦って魔力を使ってしまった。力は見せないつもりだったのに……他の生徒を見れば目をむいている。俺の魔力で驚いているんだ。俺は魔力を使わずに驚かせるつもりだったのに……くそっ。
「クラウディア、なんだよそれ! 俺、そんな技知らないぞ!」
「……カテイナちゃんこそ……加減するって言ってたくせに……あ~、魔力風で……頭痛い……」
「お前まさか、あの程度でダメなのか!? 遊びにもなんないぞ!」
クラウディアを見れば鼻血が出ている。これで俺の戦意は完全に喪失した。
「おい、教師、もういい。話にならない。俺の負けでいいからやめるぞ」
クラウディアに近づいて回復魔法を浴びせて魔力風の影響を取り去る。舌打ちしながら一番最初の壁際に下がった。そしてようやくそこに居た全員の視線が俺に集中していることに気が付く。
鼻を鳴らす。そんなことは俺の魔力量を考えれば当然のことだ。魔族の王の子供、次期魔界王なのだから。人間とは違うのだ。
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