魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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オリギナ魔法学校

第十九話 VS近衛師団

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 まだ軍隊は引き揚げていない。いきなりのゲート魔法でそこに居た一同にどよめきが広がる。

「シュンカ、ここの攻撃魔法の試射場を使わせてもらうぞ。新しい魔法を知ったからな」
「う~ん、それは待ってもらえませんか? まだこちらの話がつかないので」

 ずいっと俺の前に出てきたのは先ほどの軍隊の色違いの服を着ている奴だ。

「これが魔王の子供か、シュンカ校長、彼は我々が引き取ります。よろしいか」
「良くないぞ。勝手に決めるな」
「止めておきなさい。近衛師団でも彼は止められませんよ」
「今度はだまされんぞ」
 
 男は構わずに俺の前に出る。問答無用で腕をつかまれる。だから思いっきり抵抗した。
 
「ドレス・ロック!!!」

 この俺が魔法を撃てばかからない奴なんて―――いた! これは、恐らくシュンカが使った魔力風の受け流し技術! かけようとした魔法が当たらずにすり抜けたのがわかる。

「私は近衛師団、第一師団長! なめるなよ!」

 ものすごい力で腕を握られた。
 笑う。笑ってしまう。人間のくせにこいつには手加減がいらないのか!!
 魔力を内側に使って一気に体を強化する。
 全身のばねで相手の手を外す。

「~っつ! こ、こいつ」
「ふふ、ふはははははははははは。いいぞお前! クラウディアよりも、シュンカよりも強いな! 全力を使ってもいいんだよな!?」

 体を強化した状態で両手に魔力をみなぎらせる。今まで遊びですら出せなかった全力を出す。
 こいつは合格だ! この俺の全力を前にして足の震えがない。覚悟を決めた表情をしている!

「第一連隊! 師団長支援! 魔力集中!」

 こいつは何をするのか? 俺はそれに興味があった。一瞬の間があったが攻撃をせずに相手の出方を待つ。
 その場にいた連隊数百人の魔力を集中させて自分自身の強化をしている。数百人分……違うな。多分、凡人の数千人分だ。凡人と軍人では魔力の量が違う。才能と鍛錬の量が全く違う。加えて全員がオリギナ人だ。魔法へのこだわりが違う。

「大人しく捕まってもらうぞ!」
「捕まえられるものならな!」

 初めて人間で全力を出しても見劣りしない相手に会えた。
 学生レベルなどとは比べ物にならない。運動場の壁まで一直線に走る。それを遅れずについてくる。
 思いっきりジャンプする。それにもちゃんとついてくる。ぞくぞくする! 楽しい!
 手で溜めいていた魔力を解放して空気を瞬間凍結させる。空中で氷塊を蹴って相手を迎え撃つ。師団長は飛翔魔法を使おうとしていたらしい。空中での急激な反転に対応できない!
 お腹に全身で体当たりだ。鎧の上からでも思いっきり押す。そのまま地面にたたきつけた。

「がっふ!」
「ははははは、いいぞ。面白かった!」

 師団長を地面に伸ばして興奮して笑う。
 そうして気が付けば連隊が幾何学的な配置で俺を囲んでいる。いいな。本当にまだ遊んでいいのか。
 悪戯っぽく笑う。体があったかい。気合を入れて「かかって来い!!!」と叫ぶ。
 この叫びに反応しない。一糸乱れぬ統率、恐怖を強固な意志で押さえつけている。素晴らしい! この俺の相手はこうでなくては! うずうずするじゃないか!
 両手で高めた魔力を振り上げて――

「お母さんに言っちゃうぞ!!!」

 この言葉で思考が停止した。体が凍り付く。“人間を一方的に叩きのめした”こんな騒動が母にばれたら?  こ、殺される。少なくとも尻が死ぬ。百の大台を軽く突破してしまう。
 手に握っていた魔力が霧散する。
 俺は恐怖に染まった顔でその言葉を発した女に首を向ける。

「く、クラウディア、それだけはやめろ」
「カテイナちゃんがこれ以上暴れないなら、私からは言わない」

 唇をかむ。母は恐怖だ。“やらかしたら殴り飛ばしてでも連れ帰る”と言われていた。構えを解いてこちらの戦意がないことを表現する。

「お前の部屋に戻るぞ」
「……わかった」

 クラウディアを連れてゲート魔法で部屋に戻る。
 クラウディアは校長に深々と頭を下げて俺に続いた。

……

「殿方はどうしてこう好戦的なのか、私にはわかりませんね」
「……帝都の安全を……」
「最初に言ったようにこちらが手を出さない限りにおいて彼は安全ですよ」
「……子供の言ったことを……」
「信じていますよ。彼は暴れん坊ですが暴君ではありません。ルールは守ってくれますよ」

 師団長の言うことはわかる。帝都の安全は何よりも優先されるべきことだ。だが、それはカテイナ自身が保証している。そこをわざわざ疑って刺激する必要はない。

「とにかく、ご無事で何よりです。今日は引き揚げなさってください。あなたたちが無事であることが彼は安全であると言うなによりの保障ですから」
「……シュンカ校長……何かあった後では遅いですよ……」
「こちらが刺激しない限り、何かはありません」

 私にしては厳しい言い方をして近衛師団の引き上げを確認する。但し、副師団長を含めた十名が残っている。彼らはこれから学園の警備に入る。それは了承せざるを得なかった。
 流石に一般の警備員では歯が立つどころではないし警備員が危険すぎる。
 カテイナのことを考える。もし万が一、取り押さえる場合だ。
 師団長の“オーバーアクセル”は今までの戦術で正しいとされていた。戦術的には実績もあった。しかし、魔王級が相手では戦えない。我々人間は巨大な魔力で何ができるかがつかめていない。
 師団長は飛翔魔法を使い、カテイナは氷結魔法で天井を作った。空中戦を挑んだつもりで室内戦闘に引き込まれたのだ。何を使うかの一瞬の判断で先を行かれてしまう。ようするにカテイナの方が巨大な魔力を使い慣れているのだ。
 結果としてオリギナを代表する近衛の師団長ですら歯が立たない。であれば、この国で魔王と戦える者はいないだろう。
 ……この国は大魔道士を多数輩出してきた。だが、勇者と呼ばれるものはわずかに三人……、恐らく理論に秀でた国民性が原因で、とっさの判断による直感に頼る部分が弱いのだろう。
 それはそれで構わないか、我々は理論を構築していく。全てを極めながら……おっといけない。いつもの考え癖が出てしまった。
 明日はカテイナのどんな技を見せてもらおうかを考えながらシュンカは運動場を後にした。
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