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皇帝生誕九十年祭
第三十二話 クリミナ王国のパレード
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それから早くも二週間、俺はクラウディアの部屋に泊まったり、大使館で寝たりして過ごした。
今日は大使館でジブリルの付き添いだ。
「カテイナ、二週間後の日曜日をあけておけ」
思わず口答えするところだった。その日はオリギナ皇帝の誕生祭の当日だ。丸一日をパレードと花火と出店につぎ込む予定だった。
しかし、これには逆らえない。母の目が細く引き絞られている。早く返事をしないと母がキレる。
「な、なんで?」
ついうっかり、母と行きたくない本音が出てしまった。
母の口元が嗜虐で弧を描く、ヤバイぞ! すぐ言い直さなければ!
「な、何をするのかなって思っただけだぞ! ほ、本当だぞ!」
口の笑みを戻さずに母が語るには、皇帝に挨拶に行くと言う物だった。
「一応、おまえは私の後継者だからな。それにその日は各国の代表団が来る。丁度いいからな。お前をそいつらに見せておこうと思ってな」
そ、そんなことのために、俺の出店めぐりが、パレードがフイになったのか……
「先に言っておくが、ジオール城の中でへたな真似をするなよ。私が殺すぞ」
がっかりしている俺にさらにくぎを刺す。丸一日、母と密着……拷問すぎる。
「そういえばジブリル、お前は贈呈品に何を出す? 一応確認しておく」
「あ、私のは大したものではありません。自前で恐縮ですが、自分の羽で羽箒を作っています」
「……そうか、……天使の羽箒か……チッ、……そんなもん簡単に上回れんぞ」
鬼母の小言はジブリルにも届いている。そして当然ながらジブリルは戸惑っている。
「えっ、……で、では他の物に」
「いや、いい。お前はお前の贈りたいものを贈ればいい」
鬼母はスッと立ち上がって「私は竜の角にする」と宣言すると、ゲート魔法で即座に立ち去ってしまった。
「……カテイナ様は何を贈られますか?」
「俺か? 何も考えていなかったぞ。パレードを眺めて屋台を回り、祭りを楽しむつもりだった」
「そうすると何かご用意された方が良いかと思います」
「そういわれてもな。俺、この国の皇帝を知らないぞ。何が好みだ?」
「そうですね……、では、一緒にお菓子を作って持っていきましょう。日持ちしやすいクッキー等いかがでしょうか?」
「ん~、おまえがそういうならそれでいいか」
誕生祭の前日にお菓子を作る約束をして、町に繰り出す。少し歩いただけでも熱気が変わっているのがわかる。
「いいにおいだ。今日はどこに行こうかなぁ」
俺の手にはジブリルからもらった銀貨が一枚握られている。出店を出す店の味を確かめるのだ。
ふらふらと大通りを歩く。
途中で大仰な行列とすれ違う。他の国からの誕生祭への貢ぎ物のようだ。楽器隊が先頭を切り、貢ぎ物の護衛兵が続き馬車に惹かれて貢ぎ物が通る。
これ見よがしの黄金色、すこし毒々しく感じるのは気のせいか?
「我がクリミナ大帝国からの贈り物である!!!」
へぇ~、似たような国があるんだな。クリミナ大帝国、ちょっと前に聞いたことがあるクリミナ王国とは親戚の国なのか?
「ノー・スコア大帝とオン・スコア皇太子からの贈り物である!!!」
? オン・スコアって聞いたことがあるぞ? あいつはクリミナ王国の王子じゃなかったか?
疑問に思ってそこらで話しているオリギナ人の小言を拾ってみる。
「大帝国ですって」、「見栄を張りたいんでしょうよ」、「本当は諸国連合公認の王国のくせにね」
……なんだ、インチキか。周りのオリギナ人が避けている雰囲気なのがわかった。あんまりオリギナとは仲が良くない国だな。
更に小言が耳に入る。
「何を送ってきたのかしら?」、「大したものじゃないでしょうよ」、「皇帝陛下が受け取って困る物じゃないか心配だわ」
ふ~ん、大したものじゃない? 皇帝が受け取って困る物? ……なんだろうな。
大したものでなければ俺がもらってもいいかな?
ニヤリと笑ってパレードの後をつける。
ジオール城の正門までパレードが続き、これ見よがしに音楽隊や贈呈品の護衛隊が並んだ。正門が開かれれば贈呈品とそれを囲う一隊だけがジオール城に入っていく。
正門につながる城壁を見る。
高い。そして広い。敷地だけならカミエの魔王城よりでかいな。城壁の上にはちらちらと兵士が見える。
もっとよく観察しよう。
目に魔力を集中する。ふふん、クラウディアの本にあった。知覚強化と言うやつだ。
へぇ~思ったよりも兵士がいるなぁ。……ていうか増えてないか? それにやたらこっちを見ているような。
「やあ、君は魔法学院のカテイナ教官だね?」
ドキリとする。後ろを取られた!
思わず身構えて振り向く。
今日は大使館でジブリルの付き添いだ。
「カテイナ、二週間後の日曜日をあけておけ」
思わず口答えするところだった。その日はオリギナ皇帝の誕生祭の当日だ。丸一日をパレードと花火と出店につぎ込む予定だった。
しかし、これには逆らえない。母の目が細く引き絞られている。早く返事をしないと母がキレる。
「な、なんで?」
ついうっかり、母と行きたくない本音が出てしまった。
母の口元が嗜虐で弧を描く、ヤバイぞ! すぐ言い直さなければ!
「な、何をするのかなって思っただけだぞ! ほ、本当だぞ!」
口の笑みを戻さずに母が語るには、皇帝に挨拶に行くと言う物だった。
「一応、おまえは私の後継者だからな。それにその日は各国の代表団が来る。丁度いいからな。お前をそいつらに見せておこうと思ってな」
そ、そんなことのために、俺の出店めぐりが、パレードがフイになったのか……
「先に言っておくが、ジオール城の中でへたな真似をするなよ。私が殺すぞ」
がっかりしている俺にさらにくぎを刺す。丸一日、母と密着……拷問すぎる。
「そういえばジブリル、お前は贈呈品に何を出す? 一応確認しておく」
「あ、私のは大したものではありません。自前で恐縮ですが、自分の羽で羽箒を作っています」
「……そうか、……天使の羽箒か……チッ、……そんなもん簡単に上回れんぞ」
鬼母の小言はジブリルにも届いている。そして当然ながらジブリルは戸惑っている。
「えっ、……で、では他の物に」
「いや、いい。お前はお前の贈りたいものを贈ればいい」
鬼母はスッと立ち上がって「私は竜の角にする」と宣言すると、ゲート魔法で即座に立ち去ってしまった。
「……カテイナ様は何を贈られますか?」
「俺か? 何も考えていなかったぞ。パレードを眺めて屋台を回り、祭りを楽しむつもりだった」
「そうすると何かご用意された方が良いかと思います」
「そういわれてもな。俺、この国の皇帝を知らないぞ。何が好みだ?」
「そうですね……、では、一緒にお菓子を作って持っていきましょう。日持ちしやすいクッキー等いかがでしょうか?」
「ん~、おまえがそういうならそれでいいか」
誕生祭の前日にお菓子を作る約束をして、町に繰り出す。少し歩いただけでも熱気が変わっているのがわかる。
「いいにおいだ。今日はどこに行こうかなぁ」
俺の手にはジブリルからもらった銀貨が一枚握られている。出店を出す店の味を確かめるのだ。
ふらふらと大通りを歩く。
途中で大仰な行列とすれ違う。他の国からの誕生祭への貢ぎ物のようだ。楽器隊が先頭を切り、貢ぎ物の護衛兵が続き馬車に惹かれて貢ぎ物が通る。
これ見よがしの黄金色、すこし毒々しく感じるのは気のせいか?
「我がクリミナ大帝国からの贈り物である!!!」
へぇ~、似たような国があるんだな。クリミナ大帝国、ちょっと前に聞いたことがあるクリミナ王国とは親戚の国なのか?
「ノー・スコア大帝とオン・スコア皇太子からの贈り物である!!!」
? オン・スコアって聞いたことがあるぞ? あいつはクリミナ王国の王子じゃなかったか?
疑問に思ってそこらで話しているオリギナ人の小言を拾ってみる。
「大帝国ですって」、「見栄を張りたいんでしょうよ」、「本当は諸国連合公認の王国のくせにね」
……なんだ、インチキか。周りのオリギナ人が避けている雰囲気なのがわかった。あんまりオリギナとは仲が良くない国だな。
更に小言が耳に入る。
「何を送ってきたのかしら?」、「大したものじゃないでしょうよ」、「皇帝陛下が受け取って困る物じゃないか心配だわ」
ふ~ん、大したものじゃない? 皇帝が受け取って困る物? ……なんだろうな。
大したものでなければ俺がもらってもいいかな?
ニヤリと笑ってパレードの後をつける。
ジオール城の正門までパレードが続き、これ見よがしに音楽隊や贈呈品の護衛隊が並んだ。正門が開かれれば贈呈品とそれを囲う一隊だけがジオール城に入っていく。
正門につながる城壁を見る。
高い。そして広い。敷地だけならカミエの魔王城よりでかいな。城壁の上にはちらちらと兵士が見える。
もっとよく観察しよう。
目に魔力を集中する。ふふん、クラウディアの本にあった。知覚強化と言うやつだ。
へぇ~思ったよりも兵士がいるなぁ。……ていうか増えてないか? それにやたらこっちを見ているような。
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