魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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皇帝生誕九十年祭

第三十一話 カテイナVS盗賊

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 三日後、ようやくクラウディアが学校に戻ると言うので俺もくっついてオリギナの首都に帰ることにした。

「……なんでカテイナちゃん一緒なわけ? 走って帰れば?」
「俺は馬車が初めてだからな。乗ってみたかった。丸一日の距離だったな?」
「そう、途中で野宿して一泊二日だけど……ジブリルさんまでついてこなくても」
「私はカテイナ様の従者ですので」

 今馬車の中で三人が話している。外には馬車の御者の老人が一人。合計四人だ。
 窓の外では走るより遅い速度でガタガタと揺れながら景色が流れていく。
 窓を開けて空気を取り入れる。のどかな空気だが楽しい。たまにはこういうのもいいものだ。

「それにしても、流石オリギナ帝国です。治安がいいですね」
「う~ん、それでもたま~に、旅行者が襲われたりしますよ。不法入国者がいますからね。ほとんどクリミナ王国出身ですけど」
「そんなのがいたらぶっ飛ばせばいい」
「あいつら汚いのよ。武装してたらまず襲わないし、狙うのは老人とか女性とか子供だったりするから」
「まるで今のこの状況ですね」

 三人で笑った。
 直後に馬車が止まる。

「どうした?」
「ねぇ、爺、どうしたの? 何が――」

 窓から顔を出してクラウディアが慌てて顔を引っ込める。
 話した傍から盗賊が出たらしい。

「大人しく出てこい。ニアフロントのメスガキ。中に居るのは知ってんだよ」

 声が聞こえた方を俺も窓から顔を出して見た。
 正面には五人ぐらい? 但し周りに人影が見えたから全部で十数人はいるだろう。

「ひゅ~、こりゃいい。メスガキの弟か? 身代金もたんまりとれるぜ!」

 ……俺のことか? まさかクラウディアの弟と勘違いされた!? 何たる侮辱、何たる無知! 髪の色の違いぐらい気がつけよ!

「ボス! 中に金髪の女がいますぜ!」
「おいおいおい、大物が釣れたなぁ。なるほどニアフロントの愛人か!」

 今度はクラウディアのこめかみに青筋が浮いた。“父さんにこんな美人の愛人いないわい”と怖い音色で聞こえた。
 
「おい爺ぃ! 大人しくしてろよ。弓矢が狙ってんだよ。てめぇにゃ館に手紙持って行ってもらうからな。おい、ニアフロントのガキと女ども出てこい。馬車ごとひっくり返されたかねぇだろう?」

 ぶっ飛ばすことを今決めた。

「ジブリル、風の守りを馬車にかけられるか? 弓矢を弾き飛ばす奴。外の奴は全員俺がぶっ飛ばす」

 ジブリルが頷く。
「俺の言ったタイミングで発動しろ」と命令して扉を開けて出る。
 ジブリルも出てきて一同がどよめく。

「おい、こいつは――」
「天使か!? 初めて見たぞ」

 これは隙だ。待つほど俺はお人よしではない。ジブリルに「今だ!」と合図して俺はボスにとびかかる。
 上から下に太ももを打ち据える。体勢を崩したところに腹あての上からアッパーカットだ。ボスの体が空中に浮く。
 浮いたこいつの足をつかんで弓矢をつがえている奴にぶん投げる。
 足元の石を拾って他の弓兵に向けて投擲する。
 五人ほど倒したところで、残りの盗賊は逃げ出した。
 逃げる盗賊を追って、一人ひとり殴って大人しくさせるが、全員は無理だ。

「ちっ、なんだあいつら、言うだけ言って逃げやがった」
「カテイナちゃん、もういいから先に行こう。あんまり遅くなると、皇都までもっと時間がかかっちゃうから」

 クラウディアが俺に追いつく。それを傍目で見て、ため息だ。こいつらクラウディアより弱かったな。

「わかった。もう帰ろう」

 それで俺たちは皇都への道を進むことにした。倒した盗賊たちは完全に放置だ。魔物に食われようが、仲間に回収されようが知ったことではない。
 それから野宿をして次の日の昼にようやく皇都についた。
 皇都についたらジブリルには先に大使館に行って、俺の出迎えの準備をするそうだ。先に一人で飛んでいった。俺はクラウディアの馬車に乗ってのんびり大使館に向かう。
 馬車から見る街並みはなんだか変わってみえた。

「何か、通りに人が多くないか?」
「皇帝陛下の生誕九十周年だからね。誕生日に合わせてお祝いごとをするのに準備するんだよ」
「一か月は先って聞いたが?」
「お祭りの期間が誕生日の前後一週間だからね。準備に一か月はかかるよ」
「お、お祭り! お菓子とか、ご飯、串焼きとかも出るのか!」
「……食べ物ばっかりだね。花火とかパレードとか、劇とかいっぱいやるんだけど?」
「もちろんそれは見る! だがな、鑑賞にはお供の食べ物とか飲み物が必要だろう?」
「まあ、そうだけど。大体、君はお金あるの?」
「ジブリルにもらう!」
「あっ、そ」

 クラウディアはそっぽを向いている。が、そんなことはどうでもいい。人をよく見れば屋台の骨組みを組み立てている。
 ようし。食い漁るぞ。なんでも焼きに雲の水あめ、ミラクルジュース! 魔界でもカミエの祭りには美味しい物がたくさんあった。
 ここはステーキの国、もっとうまいものが大量にあるに違いない。

「おい、クラウディア! 案内できるか?」
「随分と気が早いね。でも、今年は無理かなぁ」
「なな、なんで?」
「誕生日祭の期間はうちの学校にも出し物があるんだよ。あ、そうだ。カテイナちゃんも出し物に駆り出されるんじゃない? 特別臨時講師補佐見習いだったよね?」
「だ、断固として断るぞ! たとえクビになっても構うものか!」

 お祭りと仕事ならお祭りを取る! 俺は楽しいことが最優先だ! 

「おいクラウディア! お前は学校をクビになっても構わない! 俺の案内をしろ!」
「流石は暴君、言うことが違うよね」
「返事は!?」
「却下。ジブリルさんに頼めば?」
「あ、あいつはダメだ。大使としての仕事がある」
「私にも出し物の義務があるんだけど?」
「いいだろ? 学校ぐらい、また入りなおせば」

 勉強なんてお前ならどうとでもなると言いかけて、クラウディアに睨まれた。ピシリと凍り付く。こいつの顔は母につくりが似ている。ちょっとでも母を連想すると手が震える。この前の一件でさらに症状が悪化した。

「、はっ、……はっ」
「どうしたの?」
「お、お前、二度とその顔をするな。胸が苦しくて手足がしびれたぞ」

 クラウディアが首をかしげているが、俺の弱点はこれ以上話せない。
 仕方ない手を変えよう。

「じゃあ、祭りの前に案内しろ。どこに何が出て、一番おいしい奴を」
「知らない」
「む~、じゃあ他に知ってるやつを紹介し――」
「だから、私の学校は出し物で駆り出されてるから無理だって」

 無駄な押し問答をしながらようやく学校につく。結局俺は一人で美味しい物を探すことに決めた。
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