魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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VSクリミナ王国

第四十一話 撤退戦

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 さっきのクラウディアの家も酷かったがここはもっとひどい、一般人だらけだ。
 窓の外は見ないでおこう。どうせもっとひどいだけだ。
 片っ端から講堂の荷物を一階の出入り口に集めて敵の侵入を防いでいる。
 クラウディアと言えばお父さんの名前を叫びながら走り回っている。
 ふむ、なんだか疲れたなぁ。ふぁ~あ、あくびが出た。
 そういえば、怪我をしてからまともに休んでなかった。
 床に座る、背を壁に預ける。少しだけ目をつむる。

「お父さん、この子がカテイナちゃんで……寝てる!? この状況で!?」
「コフッ、流石にゲート魔法を、ゲフ、使いすぎたんじゃないのか?」
「この大事な時に! 起きろカテイナ!」

 パチッと目を開ける。聞こえてはいるが眠い。片手で魔法を使う。回復魔法と補助魔法だ。ゲート魔法は眠くて意識集中していられない。

「後はお前達で何とかしろ。俺は眠い」
「えっ!? ちょっと!? カテイナちゃん!」
「体が回復している!? それとこれは補助か?」
「そうだ、二時間ぐらいは保つから自分たちで何とかしろ。もう寝る」

 体を揺さぶられるが、眠気の方が強い。

「こ、こいつ本当に寝やがった。この最前線で!? 信じられない!」
「ふむ……もう仕方ない。彼はこのままだ。それよりディア、彼の補助が残っている間に血路をひらくぞ」
「そんな、こいつをたたき起こした方が」
「速いのも知っている。楽なのもわかる。だが、我々は彼におんぶにだっこで恥ずかしい、それにオリギナ帝国の一員たる我らが魔界の世話になりきることもできない。我々が楽でもその責は皇帝陛下にまで及ぶ。大魔王シヲウルがカテイナ君の活躍を盾にとって交渉してくる可能性があるんだ。そのとき、我が帝国の最前線に立つのは?」
「……皇帝陛下」
「だろう? 我々は我々の出来ることを精一杯する。ディア、気落ちする必要はない。お前が来てくれただけで私は勇気百倍だよ。
 それにしても、彼はすごい。このフロア、下手したら建屋の全員に回復と補助をしたのか? これなら家まで戻れる可能性がある」
「お父さん、家には近衛師団が到着しているからそこまでいかなくても守ってもらえるよ」
「うむ、時間が惜しい。
 皆の者、奮い立て! 近衛師団が近くまで来たぞ!
 皆で血路を開く! 投げられるものを右手に! 長柄の物を左手に持て! 五分後に一階、玄関前に集合のこと! 遅れたものは捨ておくぞ!
 ディア、今のことを全階に通達してくれ、私はできるだけの手をうつ」

 二人して忙しいことだなぁ。もういいや。あとは知らない。俺の意識は完全に落ちて行った。

……

「すさまじい土煙がこちらに向かってきます!」
「新手か!?」
「いえ、……あれはオリギナ帝国旗? オリギナ軍? あ、違います。ニアフロントの娘が先頭で帰ってきました!」
「もしかして、敵軍に追われている!? 第一師団、救援に出ろ! 第二師団、城門を開けて受け入れ準備! 第三、第四は周囲の警戒を怠るな! 第五は補給路の確保を急がんか!」

 あれが到着したら一気に拠点の人数が増える。補給が追い付かない上に護衛にも人数が必要だ。下手すれば補給の問題で前線が崩壊する。だが受け入れないわけにはいかないし、近衛師団には皇帝直轄部隊のプライドがある。
 
「第二師団より伝達! 正門開きません! カテイナの魔力で閉じられています!」
「あの馬鹿野郎……、仕方ない! 第三師団、正門前にて人垣で難民を囲え! 第二師団はそのまま第三と合流! 難民を抱えて城壁を飛び越えろ! 五人一組で事に当たれ!」

 難民の先頭ではクラウディアがやけくその表情で旗を振り回して前進している。背中にはカテイナが縛り付けられている。
 しんがりはクラウディアの父だ。遅れるものを追い立てて、縋りつく敵兵を蹴散らしている。
 それにしてもすごい状況だ。もはや牛の大群が押し寄せてくるような土煙、クラウディアがオリギナの旗を振っていなかったら敵と勘違いして迎撃していた。
 それにしても速い。港町とこのニアフロントの家までは上り坂で距離も結構あるのだが見る間に人が大きくなっている。
 このままだと突撃の勢いそのままに正門と衝突して死者が出る。
 近衛師団が機転を利かせてばらばらと人の群れに入り減速させなければ、せっかく逃げてきたのに大惨事が起きてきただろう。
 停止した避難民を手早く拠点に収容する。
 収容が終われば、補給の問題が顔をもたげる。

「思ったより人数が少ないですね」
「土煙から推定して、二千人はいたように思ったが……」
「カテイナ殿に全員補助をかけていただきました。総勢百三十二名です。たったこれだけしか助けられなかった。港町は四方から総攻撃を受けたので、あとはどれだけ海や山に逃げられたか……」
「いや、ニアフロント殿はよくやっておられた。おかげでこの砦はおちることなく、近衛師団で活用できる。助かりますよ。あとはお任せください。三日いただければ、きれいさっぱりクリミナ兵を消滅させて御覧に入れます」
「どうか、民の仇討ちをお願いします」

 この侵攻はタイミングが良すぎる。恐らく皇帝陛下を爆殺するのと同時に計画されていたものに違いない。内政の混乱を起こし、外側から揺さぶる。
 もしも皇帝陛下が亡くなっておられたら、近衛師団は間違いなくこの速度でニアフロント領まで到達できなかった。
 最終的に立て直すにしても相当の時間がかかったはずだ。ニアフロント領は最悪壊滅、下手すれば皇都まで進攻を許しただろう。

「後はクリミナの出方次第か……」

 第一師団長の頭はこの戦いをどう治めるかを考え始めた。
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