魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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VSクリミナ王国

第四十三話 皇帝への謁見手順

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 ……城の前だ。なんだか騒がしい一団がいる。どこかで見たことあるような、……ああ、こいつらクリミナ王国のパレードをやってた連中か。

「カテイナ様、顔が怖いです」
「仕方ないだろ! そうだこいつら……ちょうどいい、泣かせてくる」
「か、カテイナ様! お待ちを! クラウディアさん! 一緒に止めて下さい!」

 後ろから俺にジブリルが抱き着く、クラウディアは俺を止める気がないようだ。まあ、わかる。自分の故郷を攻めてきた連中に慈悲を与えるのはもったいない。

「やあやあ、カテイナ教官殿。怖い顔をされてどうしました?」
「れ、レトス先生! 手伝ってください! カテイナ様が」

 声の方向に向き直る。こいつは俺に地図を写された奴だ。それより……先生、だと? ジブリルはこいつを知っているのか?

「ジブリル、こいつを知っているのか?」
「この人は私の先生だったんです!」
「……君は相変わらずだねぇ。武術で零点を取ったのは後にも先にも君だけだったよ」
「そんなことはどうでもいいんです!」
「どうでもよくはない。暴力を正しくコントロールすれば状況を改善できると口を酸っぱくして何度も言ったはずだけどねぇ。今の君の状況は君がほんの少しだけ力の使い方を覚えていればよかったと思うよ」
「嫌です!」

 レトスがその回答を聞いて頭を掻いている。そして俺と目が合う。レトスは肩をすくめた。

「仕方ない。これは本来なら秘密の情報なのだが」
「何だ?」
「君がここで暴れないことが条件だ。それにね、暴れると情報の元も子もなくなる」
「そういって俺に嘘をつくつもりか?」
「嘘かどうかは私が直接案内するから、その場で判断すればいいさ。……美味しい焼き鳥屋の場所を知ってるんだよね」
「や、焼き鳥屋!」
「君は肉が好きだって聞いたからね。どうかな? 塩焼きもタレも、レモンもあるよ。さらに言えば、部位もたくさんある。皮、もも、せせり、ネギまにつくね、味を知りたくないかい?」

 ごくりとのどが鳴る。こいつは正しくものを知っている。俺は楽しいことが大好きだ。そしてもっと優先度が高いものが出てくればそっちに飛びつく。
 クリミナを見る。そして、レトスを見る。

「よし、今日は私がおごろう!」

 とどめを刺された。その話に乗らないわけにはいかない。

「おいしくなかったら覚悟しろよ。その店に案内されてやる」
「ふふ、じゃあ満足できなかったら……唐揚げ屋にはしごしよう」
「れ、レトス先生! 食事は栄養と量のバランスを考えて……」
「やれやれ、君はいつでも正しいね。でも、正しさだけじゃまわらないこともある。悪人の思考も知っておいてほしいね」

 たとえこれが罠であろうと、俺はこいつについていく。そして焼き鳥屋では絶対にバツを出す。唐揚げ屋にはしごするためだ。ニンマリと笑う。

「じゃあ、案内のために夕方の四時に大使館に向かうよ」
「……! 今すぐじゃないのか?」
「残念ながら今は店の仕込みの時間だね。カテイナ教官殿、大人は話の運び方がうまいだろう? 君の暴れる行為を思いっきり遅延させたのだから」
「ああ、流石に大人は汚いな。今すぐだと思ったぞ」
「でも、君は私の話に乗ることにした」
「ふん、焼き鳥屋への要求レベルが上がるだけだぞ」
「結構、ではまた夕方に会いましょう」

 そう言って、レトスはすたすたと大通りを歩いて行った。まあ、いい。四時までに皇帝の大臣の補佐官につながるメイドか使用人に連絡ができればいいんだ。……気が重いな。

「もういい。行くぞジブリル」
「え、ええ。わかりました」

 気を取り直して、ジオール城の正門に行く。
 正門警備の人間はジブリルを良く知っているのですんなり通行許可が出た。

「おい、貴様! なんでそこの女を通して我々を通さない!」

 後ろで何か騒いでるのはクリミナ王国の使者のようだ。
 皇帝に謁見したいのだが面会謝絶で城の内部に入れない。そこを俺たちがすんなり通過したのを見て更に感情があおられている。

「我々は偉大なるノー・スコア大帝の意志を伝えに来たのだぞ! 謁見どころではない皇帝を呼べ! ひざまずいて出迎えを行うのだ!」

 わけのわからないことを言ってるなぁ。
 パキッと近くで音がしたのでそちらを見る。クラウディアのこめかみで青筋が躍っている。ブチ切れした母でよく見た光景だ。もう見ないようにしよう。流石の俺にも怖いモノはある。

「ジブリル、クラウディアを引っ張って来い」
「わかりました」

 さすがの俺でもあの顔が怖くて触れない。触れただけであの顔がこちらに意思を向ける。そう思うだけで卒倒しそうだ。

「おい待て、そこのガキッ!」

 無言で指先に魔力を集中する。攻撃ではないが不快なものを黙らせるぐらいならいいだろう。無礼な口をきいた奴に、“サイレンス”を直撃させる。これで俺が魔法を解かない限りこいつはしゃべれない。

「カテイナ様……」
「言うなジブリル。俺が許可すればしゃべれる」
「サイレンスって人間に効果あるんだ……知らなかった」
「――そもそもにおいて、絶大な魔力が必要だ――」

 いきなり声が聞こえて、クラウディアがポカンとしている。ジブリルは姿勢を正した。俺は呆れている。こいつも結局のところシュンカ以上の化け物だ。こいつに至ってはテレヴォイスの魔力すら感知できなかった。

「今の声、誰?」
「お前は皇帝の声を知らないのか?」
「、っ――、失礼いたしましたっ! 皇帝陛下!」
「――良い。カテイナ、貴殿の遊び場はないが、近衛の訓練場を貸そう、良いな?――」
「暴れていいならそれでいいぞ」
「――よきかな。クラウディア、彼を案内せよ――」

 そして音声がなくなった。
 クラウディアはなぜか興奮している。

「やった、皇帝陛下に名前を言ってもらえるなんて、うれしい!」
「俺は何度も呼ばれたけどうれしくはなかったな」
「そんな失礼なことは言わないの! さあ、早く近衛師団の訓練場に行こう! 前の城勤務の時に案内されて場所はわかるよ」
「良かったですね、カテイナ様」
「まあいい。じゃあ行くぞ」

 城の内部にすら入らずに折り返す。皇帝は話が分かる奴で助かる。
 折り返した先では先ほど騒いでいた男が机をたたいて筆談していた。まあ、原因がわからないなら積極的に解決してやるまでもない。俺は聖人ではないのだから。
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